見出し画像

『めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬまに 雲がくれにし 夜半の月かな』紫式部

《意味》
せっかく久しぶりに逢えたのに、それがあなたかどうか見分けもつかないうちに慌ただしく帰ってしまった。まるで雲の間にさっと隠れてしまった夜中の月のように。

小倉百人一首の中で珍しい、女友達に送られた歌です。
紫式部は、言わずと知れた古典文学のベストセラー「源氏物語」の作者です。紫式部という名は、その源氏物語の中の登場人物「紫の上」から取ったと言われており、その本名や生没年など、わかっていないことの方が多くあります。
一説には藤原道長の愛人の一人だったとも言われており、それなりに恋は楽しんでいたのかもしれませんが、「紫式部日記」の内容から察するに、内向的で物静かな性格だったようです。

今回の一首「めぐり逢ひて」。これはぱっと読んだところ恋人に対する歌のように思えてしまいますが、最初にお話ししたように、女友達に送られた一首です。
紫式部は幼い時に姉を亡くしていますが、同じように妹を亡くした少女と出会い、仲良くなります。手紙の中で「お姉さん」「妹」と呼び合い、とても親しくなりますが、互いの父の転勤に伴い離れ離れになってしまいます。
その時に友人に向けて詠まれたのが次の歌。

ここから先は

1,103字
毎週水曜日に更新。AuDee「あすなのいろはおと」をより深く楽しんでいただける情報をお届けします。番組に届いたお便りの返信も音声にて配信!ぜひ一緒に楽しんでください。

AuDeeにて放送中の百人一首と音楽を掛け合わせる番組「いろはおと」で取り上げた歌の解説と手書き原稿の公開をしています。 また、番組でいた…

この記事が参加している募集

#古典がすき

4,049件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?