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メモ読) 気候カジノ_第Ⅴ部_気候変動の政治学

第Ⅴ部_気候変動の政治学

第24章 気候科学とそれに対する批判

科学的コンセンサスの意味

科学的コンセンサスとは、その時代のある特定分野における、確かな情報と見識を持った科学者コミュニティの総意
気候変動予測の基礎にあるプロセスは立証された科学であり、機構はかつてないほど急激に変化している。そして、地球は温暖化している

地球温暖化に対する懐疑論

「地球は温暖化していない」
気温は上昇傾向にある。ここ10年間の気温がその前の数十年を上まっている。
「気候モデルが温暖化の深刻さを誇張している」
人為的な要因が含まれた場合に限り、気候モデルによる予測は過去数十年間にわたって記録された気温の推移と一致する
自然要因のみを用いた予測は2010年までに現在の温度上昇の1℃下回っている
「事実、二酸化炭素は汚染物質ではない」
二酸化炭素は経済活動の有害な副作用であることから、間違いなく汚染物質である
「温暖化は利益をもたらし得る」
経済分析の初歩的ミス。費用便益や経営の経済学によると、「便益費用比率」は投資や政策を選択する基準としては不適切。意思決定の基準として適切なのは純便益(費用と便益の差)である

経済分析の要約が間違っている
対策の延期は経済的に高くつくだけでなく、ようやく行動を起こすとなった時に、その移行を遥かに高コストにしてしまう

得られない確信

科学的コンセンサスが間違いである可能性はゼロではない
科学の歴史は、誤った科学的コンセンサスを容認して明らかな矛盾点に目をつぶり、従来の学説にしがみつこうとする可能性に気をつけなければならない
懐疑論への正しい対処法は、彼らの主張をじっくりと検証し、それらが本当に標準的な理論を覆すものかどうか見極めること
宇宙飛行の自然科学ても、経済学のような社会科学でも、科学がいかに公明に進められるかということの再認識
「基礎科学、世界中の多くの気候モデル、仮説や根拠の検証を行う非常に競争の激しい科学界、そして裏づけとなる証拠の積み重ねから判断すると、地球温暖化論が正しい可能性は非常に高い。我々は95%の確信しか持てないかもしれない。だが、それが100%になるまで待つことはできない。なぜなら、経験科学の世界では絶対的な確信に達することは絶対にないからだ。それに100%の確証を得てからこの問題を食い止めようとしても、その時はもう手遅れなのである」

第25章 気候変動をめぐる世論

科学と気候変動に対する人々の意識

気候科学に対するアメリカ国民の理解と受容性は1990年代後半から2000年代半ばにかけて、著しく上昇。しかし、2006年に急降下
2011年前半から繰り返されている10の調査によると「地球は温暖化している」あるいは「地球温暖化に懸念を抱いている」と答えた人の割合は増加している
その背景にある全般的な科学リテラシーについては、ほとんど変化が見られない

誤解を理解する

世論形成に関する研究
・大半の人は公共問題に関して非常に限られたり士気しか持っていない
・人々はある問題にに対して自分の意見を形成する際、自らが信奉する集団のエリートたちの見解を聞き、採用する傾向がある

アメリカにおいて、気候変動は政治リーダーたちが世論を牽引してきた
この40年間で二党が意見を異にするにつれて、世論はやや時間をおいてそれに従った
気候変動に関する世論は、主に政治イデオロギーを反映するものとなった

経済的勢力と政治的勢力が一体となって主流の科学を阻害する時、この隔たりはさらに拡大し大きな亀裂となる。地球温暖化のケースは、自然現象を解明しようという試みが人間の非合理性によって妨害される、さまざまな歴史的事例の一つ

第26章 気候変動政策にとっての障害

地球温暖化対策の取り組みがススmないのは、「政治」「経済」「近視眼的思考」「ナショナリズム」といった要素の相互作用で、身動きが取れなくなっているから

ナショナリストのジレンマ

経済的ナショナリズムから生じる
排出削減費用が国家の負担であるのに対し、気候変動を抑制することで生じる便益は世界中に広く拡散されるため、政府はジレンマに直面する
「ナショナリストのジレンマ」それぞれの国が、他国の政策を所与のものとして、自国の利益を最大化させる戦略を選択する場合、結果として生じる削減量は、それぞれの国が世界全体の利益に配慮した時よりもずっと少なくなる

世代を超えたトレードオフ

排出削減から生じる収益が持つ時差によって、ナショナリストのジレンマは増幅される
世界全体で考えた時、コペンハーゲン合意の基礎となっているものをはじめとした協力協定は、長期的には非常に大きな利益をもたらす
しかし、これは収益が生じるまでにかなりの時間を要する
ほとんどの国は投資の果実を収穫するのに少なくとも半世紀は待たなければならない

政治的動機

世の中には野心的な地球温暖化政策によって、得をする人もいれば損をする人もいる
長い目で見れば、強力な地球温暖化政策はアメリカのような国で暮らす国民の大部分に利益をもたらす
しかし、金融業や製薬業のように、炭素税の還流による恩恵をわずかであれ被ると思われる業界は、規制改革と戦うことに精一杯で、強力な気候変動対策を支持することができない
それゆえに、影響力の大きな産業を代表するごく少数の人々と、そうした産業の息のかかった財力豊かなロビー団体が、今の世代もこれから生まれてくる世代も含む大多数の人々の、より大きくて長期的な利益に資する政策を阻止してしまう

経済的自己利益

「疑念の商人」
主流の科学を否定し、世の中を混乱に陥れ、政治的な対応を妨害すべく、事実や理論を攻撃し、歪め、作り上げてしまう
最もよく立証されている疑念の創出事例は、タバコ産業によって実施された、喫煙が癌を引き起こすという医療的根拠に対抗するためのキャンペーン

障害を乗り越える

一貫した科学的説明と、懐疑派からの攻撃に対する反論に代わるものはない
根拠は年を経るごとにますます揺るぎないものになっていく
政治の風向きはやがて変わる

最終的な評決

  • 地球が温暖化している

  • 強力な対策が講じられない限り、地球は過去50万年以上も経験したことのない大規模な気温上昇に直面する

  • 気候変動は人間社会にとっては高くつく、多くの非人為的な地球システムにとっては危機的な結果をもたらす

  • リスクバランスが、二酸化炭素やその他の温室効果ガスの排出を抑制し、最後は阻止すべく、早急に行動しなければならないという事象を示している

経済成長から温室効果ガスの排出、気候の変化、そして影響と政策に至るまでの全ての段階は、不確実性を伴っているため、これらの基礎調査結果は但し書きを付けられ、絶えず見直されなければならない
だが、基礎調査結果はこれまで、時間、反論、そして、多くの自然科学者や社会科学者による度重なる評価いうテストに合格してきた
反対派の人々には、それに単純に無視し、捏造と呼び、行動を起こすのは半世紀先で良いと主張する根拠はない

人類は地球を危機に陥れている
しかし、今やっていることを元に戻すことはできる
しかも、我々が地球温暖化の現実的な脅威を受け入れ、二酸化炭素の排出にペナルティを課す経済的仕組みを導入し、低炭素化技術開発に力を入れれば、それは比較的低いコストで実現できる
こうした取り組みを進めることによって、我々はこのかけがえのない星を守り、未来に残すことができるのである

終わり


読んで少しでもあなたの世界を豊かにできたならそれだけで幸せです❤