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短編小説集

19
短編小説、増幅中。
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#ぬいぐるみ

ぐちゃぐちゃねことちゅちゅ

ぐちゃぐちゃねことちゅちゅ

 ぐちゃぐちゃねこの唯一の自慢であったピンクのおはなは薄汚れてきてしまった。
「ああもうぐちゃぐちゃだあ。」
ぐちゃねこは顔を両手で潰してぶつぶつ言っている。ぼさぼさの毛並みがもっと酷いことになる。
 それでもぐちゃぐちゃねこはこの小さな部屋で一番の地位を獲得していた。何故かはわからないけれども。
 ある九月の日に、新しい仲間がやってきた。ぐちゃねこにとっては慣れたことだった。まったくこの人は

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ぐちゃぐちゃねこのはなし

ぐちゃぐちゃねこのはなし

 ふわふわだった筈のからだの灰色と白の毛は、なんだかもさもさとしてしまっていた。薄いピンク色のおはなだけがきれいで僕の自慢だ。
 僕は猫のぬいぐるみ。変な顔と、変なからだとしっぽをしている。さんかく耳は非対称で猫らしくないし、目は小さすぎて埋もれてしまって表情がわからない。まるいおなかは触り心地がいいんじゃないかと思うけれど、しっぽはぐるりんと一回転しているし。
 でもこんな僕だって、あのお店では

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