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ぐちゃぐちゃねことちゅちゅ

 ぐちゃぐちゃねこの唯一の自慢であったピンクのおはなは薄汚れてきてしまった。
「ああもうぐちゃぐちゃだあ。」
 ぐちゃねこは顔を両手で潰してぶつぶつ言っている。ぼさぼさの毛並みがもっと酷いことになる。
 それでもぐちゃぐちゃねこはこの小さな部屋で一番の地位を獲得していた。何故かはわからないけれども。
 ある九月の日に、新しい仲間がやってきた。ぐちゃねこにとっては慣れたことだった。まったくこの人は幾らぬいぐるみを増やす気なんだろう。
 けれど、包装紙から出てきたそいつを見てぐちゃねこは座り込んだ。
「ね、ねずみだあ…」
 つやつやの毛をした真っ黒なねずみ。しっぽはぐちゃの身長ほど長い。
「もう終わりだあ!」
 ぐちゃねこは両手をあげて嘆いた。
 ねずみ。それはぐちゃねこが一番怖れる生き物だった。
 ふゆちゃんは抱っこできるぬいぐるみにしか興味がない筈だよ。ちっちゃなねずみなんか屹度要らないよ。
 ぐちゃねこは考える。
 屹度きっとこれからも僕が一等のお気に入りで、何処にでも連れて行かれて…ねずみなんかほったらかしさ。
 それから一か月が経った。ぐちゃぐちゃねこの毛並みはさらにぼさぼさして、もう口のかたちが見えなくなってしまった。
 そしてねずみとは?
 ねずみのちゅちゅは、ぐちゃねこの地位を脅かしはしなかったけれど冷静沈着な性格でぐちゃねこの大騒ぎを見守っている。
「もうダメだあ!」
「頭がぐちゃぐちゃだよ!」
 そんなとき、ちゅちゅのきらきらした目を見て、ぐちゃねこはドキッとするのだった。
 うう、僕もふゆちゃんも、大騒ぎする程のことがあっただろうか。
 ちゅちゅがやってきて、このおうちのドタバタはちょっとだけ落ち着き、でもやっぱりぐちゃぐちゃねこの心はしょっちゅうぐちゃぐちゃなのだった。
 仲良くしてね、ぐちゃねことちゅちゅ。

おたすけくださひな。