見出し画像

自分にも表現ができるんだと思ったときのお話です。

無論、誰でも表現活動はしています。何も画家や音楽家等の芸術家だけでなく、全ての人は、表現をして生きているというのが私の考えです。

唯、昔から国語が好きで、いつからか書くことに興味があったのです。けれど、日記をつけたり人の文章で気に入ったものを写す程度でした。その私に、書くのは楽しい、好きだと気付く機会をくださったのは、またしても前回の記事で登場した唐津の陶芸家、西岡先生。

それは、勤務先画廊での展覧会案内状文章の執筆でした。年に6回ほど企画展を開催しており、西岡良弘先生が2013年11月末から14回目となる展覧会をしてくださることになっていました。

この案内状文章は毎回店主が書いていたのですが、先生がある時私に、『次の案内状文章、書いてください』と仰ってくださったのです。ですが、公に向けた文章なんて書いたことありません。先生も勿論私がどんな案内状文章を書くのか知らない。にもかかわらず、大役をくださったのです。

その事に胸が高鳴り、即座に『是非書かせてください!』と答えていました。
店主も応援してくださいました。嬉しかったのは、唐津への取材旅行に行かせて頂いたことです。工房と窯は、掃除が隅々まで行き届いた静謐な空間でした。

そこで必死になって取材をし、メモを貯めて帰京し、家で書き始めると…書けない!書けない❗全く書けない‼️
創っておられる作品への感動はあるものの、何をどう伝えれば良いのか分からない。けれど、なんとか成し遂げたい。読んだお客さんが展覧会に足を運びたくなるような文章を、何より西岡先生に喜んでもらえるものを書きたい!

そして、五日間ほど格闘した末に出来た文章がこちらです↓

「唯、いいものを創りたい一心です」

唐津の西岡氏の工房を訪ねた際に最も印象に残った言葉である。

成形しにくい唐津の陶土と妙味ある多様な釉薬を掌中すべく探求するその姿。

芸術という孤独を歩む強い意志。

作品が生まれる陰の世界を垣間見た気がした。

新たな良弘唐津の魅力を御高覧頂きたく御案内申し上げます。



この案内状を読んだ先生から御電話を頂戴し、とても喜んでくださいました。

以来、毎年西岡先生の展覧会案内状文章を書かせて戴いております。今年の三月開催の個展で七本目です。毎回生みの苦しみを味わいながら書いておりますが、壁を越えて納得いくものが書けたときの喜びは、何物にも代えがたいと実感します。

文章を書くことは、創作だと思います。書も絵も工作も苦手だった私にとって、『自分にも表現が出来るんだ』ということは、何よりの発見であり、歓びだったのでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?