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ロゴフィリア座談会レポート➁ 【制作エピソード・Q&A回答集】

前回の座談会レポート➀【本書の特長・単語トリビア解説】では、本書掲載のトリビアの紹介や、ニュースの抜粋を用いた単語トリビア生解説の様子をお届けしました!

今回の記事では、「どんな感じで企画を進めていったのか?」という制作エピソード、そして、多数頂いた質問への回答をまとめました!

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制作エピソード

実はほぼ「初めまして」な、先生と編集者

【永戸(以下、永)】:企画が本格的に始動したのが、2021年の4月でした。2022年の4月末に発売でしたので、実質1年間で、記事集め、執筆、校正を経て完成させることができましたね!

【北村先生(以下、北)】:そうですね。でも実は今日、3人が対面で集まって話すというのは初めてなんですよね。基本全てオンラインで、直接は会わずに企画を進めました。

【八島先生(以下、八)】:ナレーションの音声収録で僕は永戸さんと会いましたが、それもほぼ企画の終盤のほうでしたよね。なので、ずっとZoomでの打ち合わせ、メール、共有フォルダのやりとりで、企画を進めていった感じでしたね。打ち合わせでは話が脱線することもありましたが、無事完成してよかったです(笑)


企画が始まったきっかけは?

【永】:北村先生のツイートがきっかけでした。自分はちょうど英検1級を目指していたのですが、単語がネックで......単語帳も、よくあるリスト型の英単語、訳語、例文の形だとなかなか覚えられなかったんです。

そんな時、「でた単英検1級(@detatan1q」さんのツイートに、北村先生が用法などを引用リツイートしているのを見かけたんです。

もしこんな単語帳があったら最強……!と思い、猛アプローチさせていただきました。

北村先生(@Kazuma_Kitamura)の当時のツイート

【北】:このようなツイートをしたり、拙著でも単語の重要性について強調していたので、単語帳の執筆に興味はありました。
でも、企画のお話を伺っていくと、色々ボリュームが多すぎて、びっくりしました(笑)これを一人でやるとなると時間もかかりそうなので、かつてから英語のことでよくやり取りをしている八島先生に「一緒にやりませんか」と連絡したんです。

【八】:まずは永戸さんと、先輩編集者の森田修さんも含めて4人で打ち合わせしました。
僕も、初めて企画の内容を聞いたときは、一発ギャグかと思いました(笑)「私が英検1級に合格するための最強の単語帳をつくってください」みたいな感じで。

【北】:「私が考えた私のための英検1級合格帳」みたいな(笑)

【八】:とにかくリクエストが盛り沢山で —— 英単語と訳だけだと覚えられないので、文脈で覚えられるように、英文は100パッセージ分くらいほしい。見出し語は1000単語くらいで、全てに解説をつけてほしい。例文は長すぎると覚えられないので、コンパクトに作ってほしい —— これは大変だ、と……でも、確かに、この要求を全て実現させたら「すごい単語帳」になると思いました。

【北】:なので、そのわがままな要求全てに応えた結果、この本が出来あがりました(笑)

【永】:私の願いを全て叶えた単語帳を作ってくださり、とても満足しています。そして、編集作業で忙しくほとんど対策できていなかったにもかかわらず、英検1級にも無事受かることができました。ありがとうございます!

【八】:おめでとうございます!え、じゃあ、この本は役目を終えたってこと……?(笑)

【永】:(笑)でも、自分と同じような悩みを抱えている人は、他にも沢山いるのではないかと思っていました。洋書やニュースを英語で楽しみたいけど、知らない単語ばかりで挫折してしまうとか......なかなか上級の壁を超えられずに悩んでいる方は多くいるんじゃないか、と。なので、ニーズはある!と信じていました。


トピックが面白いと話題の英文記事 —— 実際どうやって選んだ?

【永】:最初の数ヶ月はひたすら英文記事を探すという期間でしたが、これが結構大変な作業でしたね...…

【北】:条件がなかなか厳しくて、まず、英文が1本200words程度で、話の切れ目もちょうどよく抜粋できないといけない、そしてその中に、適当なレベルの単語がバランスよく入っていないといけないですからね……

【八】:かつ、話も面白くないといけない、という超厳しいハードルの中で、本当にこだわって選びましたよね。

執筆は8月から始めましたが、最新の記事は2021年7月に書かれたものなので、本当に執筆開始ギリギリまで探していました。一方で、10章は100年以上前の古典的な作品が入っていたりと、本当に色んな話が楽しめる内容だと思います。

【北】:英文やトリビアを楽しんで読んでいると「もう勉強ではなく読書になってしまう!」という声も聞かれました。実際、そのような使い方も出来ると思います。それであっても単語は身についていくと思うので。


『上級英単語 ロゴフィリア』—— 波乱のタイトル決め

【北】:タイトルは色々ありましたね。候補は合計で何十個もあったと思います。例えば、最初「言葉を食べる」みたいな感じで『VERBIBORE』という案もありました。単語としてはレベルも高いし、語源の説明にも使える感じなんですが、なんだか、バ行が多すぎて響きが...…(笑)

【八】:私は、この本は速読のための本ではないので、じっくり読み、単語の個性を知ってもらいたいという意図で、『遅読(ちどく)英単語』というのを提案したんですが、0.2秒でボツにされました(笑)

【永】:私は『ロゴフィリア』を見たときから「これだ!」と思っていました。社内では賛否両論あって、発売前に中々タイトルを公表できない(=カバーデザインの制作に入れない(汗))というトラブルもありましたが......無事決まって良かったです。『ロゴフィリア』は響きも良いし、みなさんに愛称で呼んで頂けるのが嬉しいです。


ナレーション音声の魅力を少し

【八】:僕は、音声チェックで女性ナレーターの方の収録に立ち会いました。話しているときは普通なのですが、収録が始まると、声の雰囲気が一気に変わってびっくりしました。

【北】:結構Twitterでも、ナレーション音声が良いということで話題になっていましたよね。

【永】:ナレーターは女性、男性の2名いらっしゃるんですが、男性ナレーターも有名な方で、実は東京メトロの英語アナウンスをされている方なんです。

【北】:この音声を聞いたら、どこかで聞いたことある声だ!となるかもしれませんね。ぜひ、本書をお持ちの方は、音声も一緒に活用してみてください。

※ 女性ナレーターはRumiko Varnesさん、男性ナレーターはJosh Kellerさんです。

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Q&A回答集

沢山の方から質問を頂き、ありがとうございました。時間の都合上、全てにはお答えできませんでしたが、リクエストの多かった質問を中心にご回答頂きました!

◎ 中上級者が語源等を調べる際におすすめの書籍や辞書があればご紹介いただきたいです。

【北】:『ロゴフィリア』の執筆にあたっては、紙の辞書だけではなく、辞書系のインターネットサイトも参考にしていますが、それらは全て、巻末に参考文献として掲載しています。

【八】:日本語の文献も、英語の文献も、どちらも載せているので、ぜひ参考にしてみてください!


◎ 英語を学ぶ高校生に本書を薦めるとしたら、どのような声かけをすると良いでしょうか。

【北】:高校生の標準的なレベルを考えた場合、安易に薦めるべき本ではないかもしれません。例外として、最近かなり語彙が難しくなっている一部の超難関大を受験する方(特に東京の私大)で、基本的な受験単語帳は全てマスターしたという方であれば、チャレンジしてみても良いかもしれません。もし、学校の教員や塾の先生で相談出来る方がいる場合は、「自分はこの単語帳いけますか?」と確認した上で、取り組むのが良いと思います。


◎ これまでにお読みになった英語の本で、面白いものを紹介してください。

北村先生:
Kazuo Ishiguro, The Remains of the Day(『日の名残り』) 
カズオ・イシグロの小説は、普段からよく読んでいます。文法的に少し難しい部分はありますが、新聞記事などと比べてものすごく語彙が難しいということはないので、おすすめの小説です。

八島先生:
Catherine A. Sanderson,  The Positive Shift

北村先生が小説を紹介すると聞いたので、あえて小説ではなく、最近読んだポピュラーサイエンスの本を紹介します。英検準1級程度の語彙力があれば、大学受験生や、初めて洋書にチャレンジしたいという方でも取り組めると思います。面白い心理学の実験なども踏まえながら、「ポジティブでいるとどのようなメリットがあるか?」を教えてくれる本です。


◎ 著者のお二人が勉強された参考書は何ですか?

(※あくまで先生方が学生時代に使用されていた参考書の紹介です。また、現在絶版になっている書籍もございます)

・多田正行 著 『思考訓練の場としての英文解釈(1)~(3)』 
 ※先生が学生時代に使っていたのは(1)と(2)
・丹羽裕子 著『入試英文 精読の極意 読み込むための10の軸(AXIS)』
・綿貫陽 著『大学入試 英語長文読解問題の解き方』
・野原三郎 著『訳注英米作家選ー英語の訳し方講義』

【北】:正直、英文解釈マニア向けで、必ずしもオススメというわけではありませんのでご注意ください。

【八】:英文は極めて難しく、解説も決して「わかりやすい」本ではありません。特殊な教材なので肌に合わないという人も多いと思いますが、一部の人からは長年愛されている本ですね。


◎ 読書などで得た知識をどのようにして発話に結びつけたらよいでしょうか?英検1級の二次試験に連敗中です。学習のアドバイスをいただけたらうれしいです。

【北】:まさに最近、『ロゴフィリア』を編集している間に英検1級に受かった永戸さんから、何かアドバイスはありますか?

【永】:英語力や流暢性も重要ですが、やはり、背景知識を増やすことと、それについて自分の意見を持つことが大事だと思います。私は独り言でスピーチの練習をしましたが、上手く話せないときは、無理にアウトプットするのではなく、まずネット検索やYoutube動画を見たりして、ある程度インプットしてから再チャレンジすると、ましなスピーチになりました(笑)

受かるためだけに教材を暗記するよりかは、ミスがあっても自分の言葉で話してみたほうが、自分のためになると思います!

【八】:そうですね。もしかすると、インプットした英語が、そのままアウトプットにつながらない……と悩んでいらっしゃるのかもしれませんが、受容語彙と発信語彙には差があって当然のことなのです。例えば、日本語であっても、新聞を読んで、新聞のように話すかといわれたらそんなことはないですよね。対策本の模範解答や英字新聞で読んだ表現が、そのまま出てこないのは自然なことです。

簡単な言葉で良いので、インプットした後に自分なりの言葉でサマライズしてみて、それをストックしていくことです。そうするとよりスムーズに話せるようになっていくのではないかと思います。

また、『ロゴフィリア』で、特に9章に載せたような論説タイプの英文は、賛成・反対タイプのエッセイなので面接や英作文の勉強にも役立つ内容ではないかと思います。


◎ 北村先生、八島先生共に相当な英語オタクかと思いますが、そのオタクぶりが芽生え始めたのはいつ頃からでしょうか。

【北】:僕たちはそこまでオタクではないですよ(笑)でも、英語は好きだったので、大学時代は一緒に勉強会をやっていました。
当時でも、皆が書き込めるブログのようなサイトがあったので、お互いに超難しい英文を投稿し合って、訳させるみたいなことはやっていましたね。それで簡単に訳されてしまうと、へこむみたいな(笑)

【八】:最初、「すごい英文読解ができる奴がいるらしい」と噂で聞いて.......北村先生のことだったんですけど。

「洋書とか読んでるらしいね。どういうのが好きなの?」って言ったら、ジャンルとか作家ではなく「難しい英文が好き」って答えが返ってきて。それならお互いに難しい英文パッセージを持ち寄って英文解釈勉強会をやりましょう、となりました。まあ、どうせそんなに大して難しくない英文を持ってくるのだろうと思っていたら、とんでもなく難しいものを持ってきたのでチビりました(笑)

【北】:お互いにうわべでは「まあまあ良い英文探してきたね」と強がりながら、心の中では「うわ、これムズッ!」と叫びながらやっていましたね。
そういった感じで、学生時代はジョン・ロックとか、J・Sミルとかの難しい英文をネットで出し合ったり、勉強会をやったりしていました。

【永】:そうやって切磋琢磨されてきたお二人ですが、いまこうやって共著で本が完成したと思うと、本当に感動的ですね……!


◎ 続編や第二弾の構想はあるのでしょうか?

【永】:これは多くの方にいただいた質問です。
トピックを変えて2冊目が欲しい、中級編・超上級編などレベル違いのシリーズや、句動詞編を作ってほしい、といったリクエストがありました。

【北】:続編のリクエストをいただけるのはありがたいのですが、これ作るの結構大変で、なかなか覚悟がいりますね(笑)

【八】:ただでさえ大変なのですが、今度は、既に選定済みの単語とは被らないようにしないといけないので、また更にハードルがあがりますね……(汗)

【北】:レベルを易しめにしたものに関しては、既に名著が存在しているんですよね。『ロゴフィリア』は、丁度良いレベルを突いているというか。受験参考書では簡単だけど、さらに上となると突然マニアックになったりする、ということはあったと思うので……その意味では、このレベル感は絶妙な所だと思います。

【八】:ニュアンスや類義語の比較も、基本単語については既に良い本が沢山ありますね。この本は、もっと上のレベルで、単語の個性を深く知りましょうというところが、大きな特徴ですよね。

【北・八】:
じゃあ、印税が2倍……いや、3倍になったら考えましょうか!(笑)

【北】:ちなみに、拙著英語の読み方の巻末にある60の英文には、かぶっているものもありますが、似たレベルの語句やコロケーションを掲載しています。

また、10章の文学作品のような英文をもっと読みたい方は、英文解体新書』『英文解体新書2をチェックしてみてください!


おわりに

最後に先生から一言メッセージをお願いします!

北村先生:
英語学習には、なかなか終わりはないと思いますが、コツコツ続けていればきっと何かいいことがあるはずです。頑張ってください!

八島先生:
『ロゴフィリア』は一応、英検準1級~1級レベルとなっていますが、資格対策に特化した本ではないので、目標を達成した後も、引き続き愛用してくれたら嬉しいです!

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以上、ロゴフィリア座談会の様子をお届けしました。

先生はとてもユーモアあふれる方々なので、制作過程を振り返ったり、面白い単語講義を聞いているうちに、あっという間に1時間以上たってしまい、とても充実した時間でした。

『ロゴフィリア』の魅力や、単語を深く知ることの面白さ、そして制作に込めた先生方、編集者の想いが伝わっていたら嬉しいです!

弊社ではまたこのようなイベントを企画していく予定ですので、お楽しみに!
最後までご覧頂き、ありがとうございました!

座談会レポート1本目、【本書の特長・単語トリビア解説】をまだ読まれていない方は、こちらも是非チェックをお願いします!

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登壇者プロフィール

北村一真先生
杏林大学外国語学部准教授。慶應義塾大学大学院後期博士課程単位取得満期退学。学部生、大学院生時代に関西の大学受験塾、隆盛ゼミナールで難関大対策の英語講座を担当。著書に『英文解体新書』『英文解体新書2』(以上、研究社)、『英語の読み方』(中公新書)など。『NHKラジオ 中学生の基礎英語 レベル2』2022年4月号より「基礎からきちんと英文読解」を連載中。

八島 純先生
専修大学国際コミュニケーション学部准教授。カリフォルニア大学ロサンゼルス校大学院言語学研究科博士課程修了(Ph.D. in Linguistics)。著書に『Antilogophoricity and Binding Theory』(開拓社)、『Jigsaw』(共著、センゲージラーニング)『Jigsaw INTRO』(共著、センゲージラーニング)など。平成30年度新村出研究奨励賞受賞。

永戸みず穂(司会)
英語教材編集者。慶應義塾大学文学部人文社会学科卒業。『知識と文脈で深める 上級英単語 ロゴフィリア』や『増補改訂版 はじめてのTOEIC®L&Rテスト 全パート総合対策』などの編集担当。

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【合わせて読みたい】

こちらの記事でも、本文の一部を公開していますので、さらに『ロゴフィリア』について知りたいという方はぜひご覧ください。

すでにご購入くださった方からの、素敵なレビュー記事や動画をまとめていますので、参考になさってください。

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