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ロゴフィリア座談会レポート➀ 【本書の特長・単語トリビア解説】

5月27日(金)に、『知識と文脈で深める 上級英単語 ロゴフィリア』の刊行を記念して、「ロゴフィリア座談会」をオンラインで開催しました。

著者の北村一真先生、八島純先生をお招きし、編集者の永戸みず穂と3人で、本書の魅力や制作裏話についてざっくばらんに語りました。その後、先生方に最新のニュースを用いた単語トリビア解説をしていただきました。

金曜日の夜にもかかわらず、約200名の方にお申込みをいただきました。
ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました!

今回は、座談会に参加できなかった方のために、出来る限り詳細に、当日の様子をお伝えします!参加された方も、もしよければ振り返ってみてください。

長くなってしまうので、
レポート➀【本書の特長・単語トリビア解説】
レポート➁【制作エピソード・Q&A】 の2本立てでお送りしたいと思います。

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本書の構成

まず英文(200words程度)があり、次ページ以降で英文に出てきた重要単語を学習していく形になっています。英文には、簡単なクイズがついています。

最後に、クイズの解答と英文の訳があります。

本書では、まずは英文を読み、そこに出てきた分からない単語を学習していくという、実際に生の英文記事や作品を読むときに近い流れを意識しているため、あえて対訳のレイアウトにはしていません。

単語の部分を見ていくと、単語とその訳語、例文があるところまではよく見かける形ですが、全ての見出し語(950語)にトリビア解説がついている点が、本書の最大の特徴です。

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本書掲載のトリビア解説 一部披露!

記憶や理解を深めたり、正しい使い方を身につけたりするためのトリビア解説は、その種類も豊富です。具体的に本書に掲載されているトリビアをいくつか紹介したいと思います。

1. contagious(P. 156)

contagious:contact(接触)と同じ語源で、主に接触によって伝染する病気に対して使われる
infectious:接触感染だけでなく、水や空気などを通した感染にも使われる

このトリビアのポイント
☆語源の知識を活用すると、単語の意味、類義語との使い分けに関する理解が深まる!


2. ardent(P. 119)

ardent、類義語のferventは共に「熱心な」「熱烈な」という意味ですが、下記のようにそれぞれ結びつきやすい名詞があります。

ardent:supporter「支持者」、admirer「崇拝者」、fan「ファン」など
fervent:belief「信念」、hope「希望」、prayer「祈り」など

実際に、Netspeakhttps://netspeak.org/)というサイトを使って、「ホントに解説があっているのか!?」という検証もしてみました!(笑)

【八島先生(以下、八)】:Netspeakにはさまざまな機能がありますが、一つに、コロケーション(単語と単語の相性)とその相性の度合いを調べたり、比較できることが挙げられます。

下記のように、比較したい単語をブラケットに入れます。

〈検証➀〉ardentとferventのsupporterとの相性

➡ ardent(86%) のほうが、fervent(14%)よりsupporterとの相性がいいことがうかがえます。

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〈検証➁〉ardentとferventのprayerとの相性

➡ fervent(92%)のほうが、ardent(7.7%)よりprayerとの相性がいいことがうかがえます。

……ということで、トリビア解説の内容が合っていることが、無事証明されました!(笑)

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〈おまけ〉類義語のavid

【八】:(トリビアには書かれていませんが)ちなみに同じように「熱心な」と訳されるavidは、「(趣味や関心に対して)熱心な」という意味なので、collector「収集家」やreader「読書家,読者」などの名詞とよく一緒に使われます。これも検証してみましょう。

➡ collectorを入れると、avidとの組み合わせが92%と圧倒的です 。             

このトリビアのポイント
コロケーション(よくある単語の結びつき)を知ることで、自然な組み合わせが分かる
☆単に訳語を知るだけでは分からない、発信時にも役立つ知識が身につく!


3. wary(P. 74)

辞書ではwarierが比較級の形式として記載されていることが多いが、実際の使用では、more waryという形で使われることが多い。

【永戸(以下、永)】:本書には合計で26個、WORD ACTIVITYという項目があるのですが、トリビア解説を読んでインプットした情報を応用して、自分でも調べたり考えたりしてみよう!というアクティビティです。

今回は、Google Books Ngram Viewerhttps://books.google.com/ngrams)を使って、friendlyの比較級として、friendlierとmore friendlyはどちらがよく使われているのか、ということを見ていきます。

【北村先生(以下、北)】:Google Books Ngram Viewerでは、どちらの単語や表現がよく使われているのかに加え、その変遷を経年変化で見ることができますね。

比較したい語句を、「friendlier, more friendly」のようにカンマで区切ってタイプします。

friendlierとmore friendlyの比較

➡ waryの比較級は、more waryの方がwarierより実際にはよく使われるとありました。それに対して、friendlyの比較級を調べると、昔はmore friendlyの方が使われていたが、今はfriendlierの方が使用例が多いということが分かりました!

このトリビアのポイント
☆ある単語や表現が実際にどのくらい使われているのかを知ることができる。さらに、他の単語についても、疑問に思った時に自分で調べることができるようになる。

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単語トリビア解説 実践編 

ここからは、最近のニュースの抜粋を用いて、単語トリビアの生解説をして頂きました!

〈ニュース➀〉meningitis, post mortem

A century-old Greenland shark found washed up on a Cornish beach died of meningitis, a post mortem has found

(The Telegraph, April 9, 2022)

【北】:この見出しの英文では、meningitispost mortemあたりが難しい単語かなと思うのですが、実はこれってある程度は推測ができる単語なんです。

meningitisは「髄膜炎」という意味なのですが、最後にある-itisというのは「炎症」を表す接尾辞なので、これまでにhepatitis「肝炎」などを見たことがあれば、「~炎」という何かの病気なのではないか、と推測できるわけです。

post mortempostは、postpone「~を延期する」や「~のポスト(地位)を狙っている」のように「後」という意味、mortemは「死」という意味なので、合わせると「死後」ですが、後に「検死」として使われるようになりました。

【永】:このmortemのmortは、immortalのmortと同じですか?

【北】:immortalは否定なので「不死の」ですが、そうです(笑)mortal「死ぬ運命にある」とか、あとは少し難しい単語ですが、mortuary「遺体安置所」とかのmortもそうですね。

【永】:autopsyとかも、「検死」という意味でよく犯罪ドラマとかに出てきますが、これも同じ意味ですか?

【北】:autopsyはギリシャ語に、post mortemはラテン語に語源があります。英語は色々な語源の単語があるので、意味的には似ていても、少し使い勝手が違うときがありますね。

では、2つ目のニュースに行ってみましょう!

〈ニュース➁〉cephalopods, vampyropods, decabrachians

(…) Soft-bodied cephalopods are divided into vampyropods and decabrachians. (…) 

 (CNN, March 8, 2022)

【永】:これは記事の英文の抜粋ですが、難しい単語が沢山並んでいますね…...

【北】:そうですね。パッと見ると、cephalopods、vampyropods、decabrachiansと難しい単語が3つありますが、英語の母語話者であれば、何となくこういう意味だと推測がつくものだと思ったので、選んでみました。

cephalopodsは、「脳炎」を表すencephalitis(ニュース➀で、-itisは「~炎」という接尾辞と学習しました)と関連する語で、cephalo-は「頭」という意味です。-podは、tripod「三脚」や、tetrapod「テトラポッド」にも出てきますが、ここでは「足を持っている動物・生物」として使われています。なので、chephalopodsは「頭と足をもつ動物」ということで、日本語では「頭足類」、つまりここでは、イカとかタコのような動物を指しています。

vampyropods、decabrachiansは僕も初見の単語でしたが、2つ目のdecabrachiansに関しては、『ロゴフィリア』でもembrace(P. 337)のbraceは腕から来ていることを解説していました。そして、decaはdecadeの「10」と考えると、腕のようなものが10本くらいついているという意味なのかな、と推測ができました。

とすると、decabrachiansはおそらくイカのような生物のことで、逆にvampyropodsはタコのような生物なのではないかと予想でき、この英文は「軟体の頭足類は、このタコのような生物とイカのような生物の2つに分類される」ということを言っているのではないか、と単語を知らずとも大体の意味が想像できました。

【永】:難しいですが、こういう風に知っている知識を当てはめていくと解読できるんだなと分かりました!

【北】:私たちも、漢字とかではおそらく普段やっていることだと思うんです。たとえば、「看過する」という単語は、中高生だと知らない方もいるかもしれませんが、看護の「看」に「過ぎる」という組み合わせだから、「見過ごす」という意味だと分かったりします。母語話者や上級者には、このように知識を応用させたり、推測したりして覚えていっている方もいると思います。そのためのヒントも、この『ロゴフィリア』には載せています。

【八】:では、ここまでの北村先生の解説を踏まえて、ちょっと応用してみましょうか。
以下はどんな意味の単語になるでしょうか?

・arthritisの意味は?

(ヒント:arthr(o)-は「関節」)

⇒-itis「~炎」なので、atrhr(o)-と組み合わせて「関節炎」となります。
(※ここでは後ろに母音が続くので、oは省かれます。)

・arthropodの意味は?

⇒arthr(o)-は「関節」、-podは「足(の生き物)」から、「節足動物」となります。

【北】:1つ目の記事で出てきた、meningitis「髄膜炎」は難しいですが、arthritis「関節炎」なんかは、日常でもよく聞く単語ですよね。あと、bronchitis「気管支炎」とかも割と馴染みのある単語だと思います。

【八】:ついでに、『ロゴフィリア』のP. 83でも少し触れてますが、この-itisは俗語で「~狂」という意味でも使われたりするんですよ。例えば、mentionitisは「気になる人の名前を、関係のない文脈でも口に出してしまう症状」を表す俗語ですね。『Bridget Jones: The Edge of Reason』にも登場します。

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おわりに

以上、北村先生と八島先生に有益な単語トリビア生解説をしていただきました。とても濃い時間でした。
先生方の講義、面白すぎてずっと聞いていたかったです……!!

ロゴフィリア座談会レポート、2本目は制作エピソード・Q&A回答集】です。
制作の裏側や、先生方の英語ライフが覗けちゃいます。ぜひこちらも続けてご覧ください!                

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