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年間ベストアルバム2021 1-50位編

いえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええいというわけで年間ベストアルバムの季節が今年もやってきました。

2020年を我慢すれば21年はいいことあるよと言われた割には...って感じの年になった2021年ですが、筆者自身はやれ就活だったり卒論だったりでわりかしバタバタしてて見事noteの更新が滞るという事態に陥った一年でしたね。そんな筆者の都合なんて知らずに素晴らしい音楽がたくさん出てきたわけで、"癒しと暴力"の狭間で"歌"へと回帰していったような一年だったかなぁというのが僕なりの21年のシーンの特徴かなと思います。

数ある素晴らしいアルバムたちの中から個人的に良かったと思ったやつを、ベスト50ということでランキング形式で発表していこうと思います。ちなみに今回の年間ベストどういった感じで選んだのって思う方もいると思うんで、今回の選考をするにあたって指標にした3つの評価基準を紹介します。

1つ目、良い

2つ目、凄い

3つ目、かっこいい

以上です。では早速ランキングをはっぴょうするぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


50位 Rostam 「Changephobia」

最初に登場するのは元Vanpire Weekendのロスタムバトマングリのセカンドアルバムから。HAIMやClairoなどの近年のインディーシーンにおける重要人物たちを裏で支えるその手腕は今作でも遺憾なく発揮されており、圧倒的な引出しの多さを感じさせる豊潤なサウンドデザインはいかにも職人気質という感じがして聴いてて耳が楽しくなる一枚だ。またThe Clashの「Train in Vain」(原曲はボーカルをフロントマンのジョーストラマーではなくミックジョーンズが取っており、VW時代はフロントマンのエズラに次ぐポジションだったロスタムが歌うのはとても感慨深い。)などのカバー曲が入った拡張盤、A.G.Cookなどが参加したリミックス盤などその後のリリース形態も含めて楽しめたアルバム。


49位 Julien Baker 「Little Oblivions」

今年も大盛況だったUSインディーシーンにおける女性SSWの大躍進ですが、Julien Bakerの新譜はその中でもかなり骨太な屈強さを感じさせる一枚でしたね。地元メンフィスで全ての楽器を自らの手で演奏した本作だが、自分自身で演奏したことでプレイヤーとしての自分の中の感情の高ぶりを上手く表現できたように思え、それがUSインディーロック特有の泥臭さと相まって楽曲に力強い印象を与えたように思える。決して生々しいわけでは無く、振り絞るようにして出てきたありったけのエモーションを"歌"に込めた一枚。


48位 踊ってばかりの国 「moana」

「光の中に」、「私は月には行かないだろう」、そして下津光史のソロ作「Transient world」と着実に傑作しかリリースしていない踊ってばかりの国なわけだが、今作はアルバムの構成力の高さよりもシンプルに強い歌が並べられた端正な楽曲集という趣だ。彼らの音楽性っていわゆる牧歌的とな部類に属されるはずなのだが、どこかシャーマン的な神々しさと不穏な空気が同居していて、そしてボーカリスト下津光史が丁寧に語る詞にうっとりしてしまう、そんな底なしの沼に溺れてしまう傑作。


47位 underscores 「fishmonger」

バチバチにカッコいいBOOK OFF君こと今年のハイパーポップを代表する一枚ですね。アメリカだとポップパンクリバイバルが起こっているらしいですが、underscoresも例に漏れずポップパンクが基盤にあるように見えるんですけど、実はガレージロックやポストパンクリバイバルあたりが本当の基盤であって、そこに近年のトラップなどのトラックメイカー的な視点も汲んでいるかなり音楽オタクチックな緻密な計算がなされてるんじゃないかと聴き返すたびに思うんですよね。そしてそれをめちゃくちゃビートとノイズでひっくり返してしまうことでトリックをより難解にする大胆不敵さが最大の魅力なんだけど。


46位 Kanye West 「Donda」

正直なことを言うと僕はまだこのアルバムの本質的な凄さを正確に理解できているわけでは無い。話題になっていたリスニングイベントも見ていない、あくまでTLから流れてくるスタジアム内に作った独房のようなスタジオで作業している様子や、満員の中見守られながら筋トレしているところや、神々しいトラックをバックに天井に吊るされるカニエ、いやYeの姿を面白可笑しく見ていただけだ。しかし27曲1時間48分のこの大作を目の前にして、途方もなく巨大な才能に打ちのめされると共に、そこには確かな愛への渇望が冷徹なトラックに乗せられて歌われていたことに驚いた。恐らくこの作品の凄みを最大限理解できるようになるのはまだまだ先になりそうだが、これからへの期待とかそういうのも含めてこの順位にしておこうと思う。


45位 Cassandra Jenkins 「An Overview on Phenomenal Nature」

今年を象徴する一枚にして、有名な音楽評論系媒体が出してる年間ベストにおいて上位に毎回いる印象がある一枚ですよね。アンビエントフォークとチェンバーポップを掛け合わせたまさに今の時代のUSインディーシーンの女性SSWの傑作といった趣ではあるものの、時折見せるグランジ的なざらついたサウンドアプローチや、繊細な心象風景をそのまま曲に反映させたような音像はスケールの違いを感じさせられますね。ただのインディーフォークでは終わらせない配慮の行き届いたサウンドプロダクション、そして程よく暖かい空気感がとても良い一枚。


44位 Diamondo Cafe 「Say You Will」

Twitter経由で知っためちゃくちゃ良質なシンセポップ。Maichael Jacksonのような節回し、めちゃくちゃ80sの意匠をまといながらPrince的な聴かせる瞬間、それをBlood Orangeのような現代型レトロR&Bで鳴らすという俺得でしかない作品なんですよね。80年代だったりBlood Orangeなんかが好きな人にはお気に召す一枚だと思うし、なによりもどの曲も聴きやすくて洒落た感じがあってとても良きです。


43位 Indigo De Souza 「Any Shape You Take」

今年出たインディーロック系の作品の中でもかなりソリッドかつエモーショナルな質感を持った傑作だ。音楽性はストレートで武骨なロックなものがメインではあるが、Frank Oceanのようなアンビエントややエレクトロな風味、Snail MailやPhoebe Bridgersらと共鳴するオルタナ性も兼ね備えており、そうした複合的なバンドサウンドが溶け合い程よいポップさ加減の楽曲を彩ることで、今のロックが出来る誰もが好きになれる楽曲へと昇華させているように思えた。簡単に行っちゃえば曲の強度がめちゃくちゃ高い一枚。


42位 Fred again.. 「Actual Life 2 (February 2 - October 15 2021)」

Ed SheeranやStormzyなどとの仕事で知られる若手プロデューサーFred again...だが、今年の4月のデビュー作を出すと11月には2作目となる今作を発表するなどかなり精力的な一年となった。僕自身先ほどのロスタム然り裏方で着実に作る人が出す職人気質な作品がすごく好きなわけだが、今作は前作と比較してリバーブがさらに聴くことによる独特なアンビエント性が増して、同時に歌モノの比重も増したためどの楽曲もかなり聴かせてくれる作風になったのがとても良きでした。前作と合わせて今年のダンスミュージックシーンを象徴する作品なのではないでしょうか?


41位 No Rome 「It's All Smiles」

The 1975のマティーとジョージが全面参加した「Narcissist」から始まったNo Rome君を助けようの会ですが、去年は同胞のbeabadoobeeとJay Somとコラボした曲があんまパッとせずに終わったので、今年再びマティー&ジョージのコンビが救いの手を差し伸べ「Spinning」を制作したものの主役をCharli XCXに奪われるという始末。もうThe 1975を持ってしてでも彼を救うことは出来ないだろうかと思われた矢先、やっっっっっっっとデビューアルバムとなる今作を発売し見事手の平クルッーーーーーーってなった一枚です。Frank Ocean「Blonde」、Kanye West「The Life Of Pablo」、The 1975「iliwys」、2016年夏のサウンドトラックとしてこれらの名盤を流したであろう少年が鮮やかなハイパーポップで彩る2021年を生きる人々に向けたポップソング集。


40位 ROTH BART BARON 「無限のHAKU」

昨年「極彩色の祝祭」というオルタナティブフォークの大傑作をリリースし、今年はBiSHのアイナとコラボした「BLUE SOULS」がポカリスエットのタイアップによって更なる注目を浴びたROTHの次なる一手は、まっさらなジャケットが象徴するような静けさと内に秘めた情熱を内包した一枚だった。前作が溢れんばかりの生命の祭りだとしたら、今作は一歩一歩を確かに踏みしめるような作品であり、前作以上に圧倒的な"祈り"がそこにはある。それがとても救われるわけで、生きる糧となるんですよね。


39位 Chrome Waves 「The Rain Will Cleanse」

シカゴ発のポストメタル/シューゲイザー。いわゆるブラックゲイズというかかなりヘヴィかつ重厚感のあるシューゲイザーで、ボーカルなんかもエモとかオルタナっぽいアプローチなので重厚で耽美な世界観が好きな人にはオヌヌメかも。野獣の咆哮の如く呻く轟音ギターサウンドと震度8ぐらいの勢いでバカスカ叩くドラムによる戦車のようなシューゲイズでありながらも、ゴシックかつしっかり聴かせにかかる曲の美しさもちゃんとあるのがとても印象的な一枚でした。


38位 The War On Drugs 「I Don't Live Here Anymore」

今年結構いい意味で期待を裏切られた作品が多くて、その中でもかなり自分のツボに強烈な北斗百裂拳を食らったのがこのアルバム。というのもアダムグランデュシエルの瘦せっぽちで掠れたボーカルがそこまで惹かれてなかったのと、完成度の高かった前作から大分ブランクが空いていたからどうなんかなぁって感じでして。しかしいざ蓋を開けてみたらアメリカらしさ全開の泥臭さを、洗練されたギターとシンセで包み込んだ極上のアメリカンロックで申し訳ございませんでした状態になりました。近年の80sリバイバルも相まってブルーススプリングスティーンっぽさを感じさせるUSロック(The Killersとかそれこそ去年ブルーススプリングスティーン本人も新作を出してる)が増えてきてるわけですが、その中でもThe War On Drugsの楽曲の完成度の高さはずば抜けていると思うし、なによりもタイムレスで温もりを感じるからこれからも多くの人に愛されていく一枚になるんじゃないかな。


37位 Deafheaven  「Infinite Granite」

ブラックゲイズのパイオニアがさらにスケールアップした姿を見せつけた一枚。彼らの絶対的な武器である絶叫シャウトを封印し柔らかいウィスパーボイスを聴かせ、また親交のあるDIIVやM83からの影響を感じられるメロディアスなシューゲイザーへと舵を切ったことで、彼らが本来持ち得るダイナミックな楽曲にさらに磨きがかかった。また時折アンビエントやポストロック的なアプローチも見せることで、静と動、陶酔感と狂騒感の間で乱高下を繰り返し聴く者をガンガン揺さぶりまくるのだが、これが不思議な事にとても心地よく感じてしまうのです。


36位 dltzk  「Frailty」

これもunderscoresとともに今年のハイパーポップの盛り上がりを象徴する一枚ですよね。このアルバムの魅力を語るとY2KとかWiiと言った00年代を思わせる単語が頻出するわけで、エモシューゲイズ的なバンドサウンドを、00年代ポップパンク文脈のメロディで鳴らし、ゲーム音楽などの影響を感じられるポストダブステップなビートでぶっ壊す痛快さ。なにが飛び出してくるかわからないそのトリッキーさが聴いてて楽しい新世代のロック。

35位 SACOYANS「Gasoline Rainbow」

福岡発のオルタナティブノイズポップバンドの会心の一枚。個人的には前作が変に捻たとこがあってそこがバランス悪く感じてしまったんだけど、今作はそこの部分がブラッシュアップされてストレートで直情的なギターロックを奏でてる。曲の強度の高さと不協和音的な轟音ギター、そしてドロレスオリオーダンを彷彿とさせる呪術的で飲み込まれそうになるボーカルがビタっとハマった結果、尋常じゃないパワーを持ったオルタナアルバムが出来てしまった。

34位 KID FRESINO 「20,Stop it.」

2021年の邦楽シーンを先導する意志を見せるかの如く、年始にリリースされると同時に聴く者に鮮烈な印象を与えた一枚。前作で確立した攻撃的なトラックをさらに煮詰め鋭利さと冷徹さは増し、そこにフレシノが流麗なフロウで彩りを与えてく。前作はひたすら圧圧圧圧圧の応酬だったわけだが、今作では「youth」において長谷川白紙が美しい光を提示し、「Cats & Dogs」でカネコアヤノがタイムレスで温かい祈りを歌う。そんな何気ない瞬間が実は人生で美しい瞬間であり、愛おしいんじゃないかと気付かされる緩急のギャップにやられるアルバムだ。


33位 Kraus「View No Country」

Slow Crushの「Hush」と並んで下半期のシューゲイザーシーンを沸かせたKrausの最新作。シューゲイザーの歪みとかそういう次元を超えて、分厚くて馬鹿でかいスケールを誇るノイズの壁はもはやメタルとかそこら辺の次元にまで突入しつつある。それでいてもメロディアスでリスナーの心をざわめかす美しい楽曲群の数々によってシューゲイザーの体裁が守られているというか、まさにこれぞ耽美耽美レボリューション、轟音ギターに振り回されてSea Side Blue、最高最高最高なシューゲイズアルバムなんですよ。


32位LIL SOFT TENNIS 「Bedroom Rockstar Confused」

夢と希望とLIL SOFT TENNISとはよく言ったもので、ロック最高ともエモラップ最高ともなれるような程よいカジュアルさが癖になる一枚。ヒップホップとエレクトロのクロスオーバーという本来の彼の持ち味に加えて、今作ではPixiesやWeezerのような90年代のオルタナっぽい方向に接近したことでより楽曲のキャッチー性が増した印象はあります。自由の創作人のベッドルーム発信による全世代請求型の最高のオルタナ作品。


31位 Nas 「King's Disease II」

30年以上のキャリアを誇るレジェンドNasの新作は最高でしたね。プロデューサーのHit-Boyが手掛けるオーソドックスだけど今にも通じるハイブリッドさも兼ね備えるトラックに、Nasがすごく伸び伸びとしたフロウを乗っけるためどの曲もツルっと聴けちゃう心地よさがあって耳が喜んでしまう。あと客演ってところでも神の息子Nasとラップの神エミネムが共演っていうポイントや、その独特の渋みがある声でのらりくらりラップするだけで自分の世界を構築するローリンヒルの凄みなど見所多数。結論、Nasはやっぱすげぇ。


30位 Kings of Convenience 「Peace Or Love」

「いつのまにか、もう12年ぶりのアルバムなんだね。繊細なギターワークの中に、はっとするような美しい瞬間をもたらすのは、子ども扱いした誰かへの逆襲だろう」という最高に気持ち悪くて最高に秋元康な帯コメントでお馴染みノルウェーのアコースティックポップデュオの久々の新作ですが、ギターと優しいボーカルが紡ぐ伝統工芸のような世界観の楽曲は、春夏秋冬どのシーズンに聴いても穏やかな気持ちにさせてくれそうな美しいハーモニーを聴かせてくれる。それはまるで"いたずら"をするような子供の純粋さを体現したような美しいアルバム。


29位 Official髭男dism 「Editorial」

「このミックス、耳が死ぬどぉ」と俺の心の中の千鳥ノブがツッコミをした髭男の新譜。サブスク時代の申し子としてあいみょん、King Gnuと共に台頭した彼らだが、今作の新譜はミックスが完全に車のステレオでガンガン流すのに最適なやつやんってぐらい耳を殺しにくるミックスを施している。多分大音量で20周したら鼓膜が破裂するやつです。極上のEW&F歌謡「Universe」や「アポトーシス」、バカ転調ソング「Cry Baby」と今年リリースした楽曲でも十分強いのに、「I Love...」など去年リリースした曲もアルバムに入れなければならないというレコード会社からの圧があったのは容易に想像できる。だがそこでじゃあ収録曲全部強度の高い曲にしようって発想に至るのがトチ狂っているし、実際強度の高い曲作れるのが凄い。もはややってることは6匹全部100レべのアルセウスで四天王戦に挑むダイパキッズと変わりません。だが逆を言えばこの圧倒的な過剰さは真摯に曲作りに取り組んだ証であり、イヤホンじゃなくてせっかくならドでかいステレオで聴きたい現代J-POPの名盤だと言えるだろう。


28位 GRAPEVINE 「新しい果実」

国産ギターロックの雄にして安定して良作をリリースし続けている長距離ランナーことGRAPEVINEの新作もやっぱり凄い。というかここに来てまた新たな一面を見せてきたというか、冒頭の「ねずみ浄土」における徹底的な引き算が施されたネオソウルを筆頭に、余計な装飾なんかなくても確実にリスナーの胸にぶっ刺さるような究極のシンプルイズベストなギターロックが展開されている。「居眠り」や「最期にして至上の時」のようなジャジーで不穏なギターが目立つ楽曲や、「Gifeted」や「リヴァイアサン」などの彼ららしさ全開のストレートな曲もあるなど、進化する姿勢と従来の良い所をしっかり残すベテランのさらなる境地を見せつけられた一枚だ。


27位 black midi 「Cavalcade」

クソッ!なんやかんや年末ぐらいになればサウスロンドンで素っ頓狂なポストパンクやってるバンドも好きになれるだろうって思ったのに、結局苦手なまま一年終わりそうじゃねぇか!とはいえこのムーブメントの先駆者的立ち位置のblack midiだけは頭一つ抜けている印象があって、元々ジャズが盛んなサウスロンドンなためフリージャズの要素を取り込むことも自然な流れだろう。結果として圧倒的なカオスと構築美を誇る偉大な先人キングクリムゾンを彷彿とさせるプログレアルバムが完成したわけで、聴かせる曲ではしっかり聴かせ、暴れる曲ではとことん暴れまくるという、ぐちゃぐちゃも一周回れば究極のカオスとなることを証明した一枚。


26位 Tyler, The Creator 「CALL ME IF YOU GET LOST」

今年はあまり自分の琴線に惹かれるようなヒップホップ作品は少なかった印象があるんですけど、やはり今年のシーンを代表するこの作品の魅力は半端ないなと思いましたね。そもそも自分自身前作の「IGOR」を聴いたことでヒップホップの魅力に気づいたってのもあってタイラーにはかなり思い入れがあるんですけど、「Flower Boy」と「IGOR」で完成させたメロウでポップなトラックと初期のタイラーが持つグロテスクで攻撃的なスタイルが上手く掛け合わさり、とてもエッジの利いたスタイリッシュなブラックミュージックの傑作といった趣になっている。ゴツゴツとしたビートが印象的な「LUMEBERJACK」、スウィートで多様な顔を見せる「SWEET/I THOUGT YOU WANTED TO DANCE」、終わりよければ総て良しな「SAFARI」などみんな最高じゃんってなっちゃうタイラーマジック恐るべし。


25位 Sweet Trip 「A Tiny House, In Secret Speeches, Polar Equals」

 今年度激ダサジャケット写真最優秀作品賞を受賞しましたSweet Tripさんの12年ぶりの最新作です。シューゲイザー/ドリームポップの甘い音像に、IDMやグリッチなどの切れ味あるサウンドでズタズタに切り裂いて味付けする彼らのお得意の手法が、20年代へ突入したとたんハイパーポップ的な文脈へと昇華されたことでさらに鋭利かつダイナミックなものになった。また彼らの歴代の作品の中でも非常に甘美で円熟味のある楽曲があり、耳に引っかかるメロディが全体的に増した印象がある。現代の音楽シーンにおいても耐久するどころか、さらに引っ掻き回してくれそうなぐらいのレベルアップ、まさに偉大なる帰還とも言うべき一枚だ。


24位 Hovvdy 「True Love」

テキサス州オースティン出身のシンガーソングライターデュオの4枚目のアルバム。フォークとベッドルームポップが入り混じったローファイなサウンドは包み込むような温もりがあり、そしてなんといってもメロディとハーモニーがめちゃくちゃ良くて楽曲に究極のノスタルジックさをもたらしている。ちょうど10月の頭ぐらいにリリースされ、これを聴きながらマックの月見バーガー食いながら、うわぁ秋めっちゃいいわぁってなったのでSlowdiveの「Souvlaki」、Bon Iverの「i,i」、Fleet Foxiesの「Shore」と並んで個人的秋にススキが一杯ある大地で聴きたいアルバムに殿堂入りです。


23位 betcover!! 「時間」

今年の邦楽シーンにおいてもかなりのビッグサプライズというか、もはや20年代を象徴する名盤としての評価を確立してしまった感すらあるモンスターアルバム。個人的にはユニークなサウンドメイキングを施しながらエモーショナルなギターロックを奏でる印象があったが、今作ではそのユニークなサウンドメイキングに重きを置き、ジャズやボサノバにブルースといったジャンルレスで陰鬱な空気感を落とし込んだことで、無国籍かつKing Kruleばりの冷徹さと無秩序さを持った音楽へと昇華された。聴く人の感情に寄り添い訴えるエモーショナルから、あまりにも強大なカオスで聴く者を圧倒させる一枚。


22位 Bleachers 「Take the Sadness Out of Saturday Night」

かつてFun.のギタリストとして「We Are Young」などのヒット曲を生み、現在はテイラースイフトやラナデルレイ、FKAツイッグスの話題作を手掛ける売れっ子プロデューサーに成長したジャックアントノフによるプロジェクトの最新作。まずゲストがラナデルレイとブルーススプリングティーンの時点で最近のUSインディーのトレンドを把握している、いや正確にはこの人がそのトレンドの中心なのだがまぁとても人選が良い。特に近年目立つスプリングスティーン感があるUSインディーロックの中でも、本作はとてもスプリングスティーン感があって愚直なまでにストレートなポップアルバムだ。それでいてどの曲も品があるというかどこかエレガンスな感じがして、それを10曲33分でスマートにまとめてしまうあたりに強烈な職人魂を感じるのだ。


21位 揺らぎ「For you, Adroit it but soft」

ここ数年の国産シューゲイザーの中でも強烈な存在感を示しながらも、3年ぶりのリリースしかも1stフルアルバムとなった今作だが、いざ蓋を開けてみるとさらに進化した轟音が奏でる広大な音像は彼らが既存のシューゲイザーのカテゴライズでは収まらないことを示してしまった内容だった。ポストロックやエレクトロを前面に押し出したことでよりエクスペリメンタルな作風になり、透明度抜群で今にも消えそうなボーカルは身体性の欠如による不安定な心地よさを生み出し、またモグワイやシガーロスを彷彿とさせる大陸的でダイナミックなシューゲイズサウンドは我々にまだ見ぬ景色を見せてくれる。シューゲイザーの更なる拡張を狙ったその野心と、美しくも暴力的な宿る作品の空気感に乾杯。


20位 折坂悠太「心理」

一つの時代の区切りに「平成」という歌心溢れる金字塔を打ち立てたシンガーソングライターの最新作。前作まではあくまでも弾き語りによる純度の高い"歌"に肉付けを図る形式だったのに対し、今作は"歌"が中心では無く重奏による"楽曲"を聴かせるという形式に変わり、「Fetch The Bottle Cutter」やBlake Mills作品へのアンサーとも取れるオーガニックで切羽詰まったサウンドメイクは凄まじく非常に聴いていて楽しい(しかもこれがライブで完璧に再現できるのがもっと凄い)。そんな全く違うアプローチで挑んでいながらも中心にいるのは折坂悠太という非常に画になるフロントマンで、彼の雄弁な歌唱から放たれる言葉の数々は生活の中で生まれる繊細な心理の変化を巧みに捉えている。そこには日々の暮らしを一生懸命に打ち込む生活の担い手息遣いを確かに感じさせる、そんな瑞々しく逞しい人生を描写した一枚。


19位 Silk Sonic「An Evening With Silk Sonic」

未知の感染症による閉塞感を吹き飛ばす劇薬、それはディスコなのではと思う瞬間がある。BTS「Dynamite」、乃木坂46「I See...」といった去年リリースされたディスコナンバーが生活に光をもたらすと同時に、腰を振りたくなるようなビートに乗っかる妙にかっちりとしたメロディは"歌”の必要性を無意識に再認識させた。そんな中ブルーノマーズとアンダーソンパークという古のソウルをルーツに持つ二人がSilk Sonicに行き着くのは当然の帰結であり、癒しと暴力の20年代に鳴らす極上のスウィートなソウルは"歌"の必要性は無意識ではなく意識的に気づかせてしまう力がある。2021年重要な作品であり、例えサウンドが古き良き懐かしいそれであっても、根幹にあるその強烈な歌心だけはいつの日も色褪せることはないだろう。


18位 sonhos tomam conta「wierd」

今世界中のロック小僧たちの心をぐちゃぐちゃにしてしまう罪深き3組のバンドことLonginus Recordings三銃士の一角の一枚。ブラジルの宅録シューゲイザー・ブラックゲイズでして、初期Turnoverのような空間的すぎて清津峡渓谷トンネル?ってぐらい反響しまくったシューゲイズサウンドに、野性的で強烈な怒りすら感じるシャウトがめちゃくちゃ様になる。けたたましいサウンドではあるものの楽曲はとても直情的で、心の芯を正確に捉える強烈な請求性はレアルの攻撃陣が不甲斐ない時にゴール四隅に正確にぶち込むトニクロースの年1回入るミドルのインパクトと同じくらいぶっ刺さる。


17位 Tempalay「ゴーストアルバム」

ネオシティポップムーブメントの端っこで面白くて奇天烈な事をやっていたTempalayだが、時代が進むに連れ求道者としてさらに深い深い場所へと進化していった結果遂に本作で一つの完成形を提示したように思える。ファンクやヒップホップを怪しげなサイケデリアで彩るというアクの強い音楽性を程よいおしゃれさでコーティングする基本のフォーマットに、日本古来の祭りや原風景を想起させるトラディショナルな要素までもが加わりカオスさらに極まり。独特なユーモアと諦念的な顔が見え隠れする詩世界は、国産サイケの第一人者の坂本慎太郎にも通ずる感性と言えよう。ラストの「大東京万博」で想起されるAKIRAと似たような混迷の時代となった今を生き抜くために、肉体を超越した先の脳内快楽としての音楽、すなわち「ゴーストアルバム」なのかもしれない。


16位 Asian Glow 「Cull Ficle」

そのファニーでポップなアートワークとは裏腹に、予想を裏切る展開とノイジーなギターサウンドに魅了されてしまうエモの傑作。こちらもエモシューゲイザーシーンにおいて話題になったLonginus Recordingsの三銃士の一角であり、三組と比較すると直情的というよりはあの手この手で様々なトリックを入れてくる印象があり、フォーク、アンビエント、エモを行ったり来たりして暴れるさまは聴いていてとても面白い。そして音像も非常にノイズかつローファイを極めたような音で、その不明瞭さが鬱屈としてやりようの無い感情の矛先をノイズでかき鳴らすようなエモーショナルな感性に惹かれるのかもしれない。


15位 Jennifer Souza「Pacifica Pedra Branca」

ミルトンナシメントやトニーニョオルタなどブラジルを代表するミュージシャンを輩出したミナス州出身のSSWの8年ぶりのアルバム。ドリームポップっぽい不思議な浮遊感と幻想感のあるサウンドが心地良く、そこに乗っかる芳醇で実の詰まったボーカルが聴く者の心情を暖かく包み込む極上のレイドバック。聴いているうちに心の中で溶けていくような質感が美しく、きこりの泉に落ちたジャイアンも驚くほどまるで聴いてる自分までもが綺麗になったんじゃないかと一枚だ。


14位 Cathedral Bells「Ether」

もし後8年くらい前にリリースされていればDIIVの「Oshin」やWild Nothingの「Nocturne」のような金字塔になることも出来たんじゃないかとすら思ってしまうくらい素晴らしいドリームポップ。ドラムは打ち込み感満載なのはさておき、それ以外のパートは残響系エフェクトをドバドバかけまくったせいでもはや雲の中を行ったり来たりするようなローファイなサウンドで、これがまた作品全体に幻惑性と不穏で冷たい空気感をもたらしている。この手のCaptured Track系のドリームポップサウンド個人的には好きだけど、あと数年したら時代の遺物として歴史の闇に葬られる気がしなくもないので、10年代から続くドリームポップの系譜の最後の傑作という風になってしまうかもしれないですね。


13位 パソコン音楽クラブ「See-Voice」

僕の好きな音しか鳴らさない人たちことパソコン音楽クラブですが、最新作もアプローチこそ変化はあれどやっぱり僕の好きな音しかなっていませんでした。前作「Night Flow」ではダンサブルなビートで都会の孤独を残忍に描いた彼らだが、今作はそのアートワークにも象徴するように全体的にはつらつとした印象があり、ニューエイジや90年代のゲーム音楽のような柔らかいシンセと優美なメロディが目立つ。その一方で身体性はかなり欠如した状態であり、前作と比べてゲストボーカルの方もかなり機械的なせいか不思議と血の通ってなく凄く内省的なのだ。ダンスミュージックという非常に肉体と密接な身体的音楽を主戦場とする彼らが、その身体性を削ぎ落し心理という不明瞭な物への問いかけを図った意欲作。


12位 Poter Robinson 「Nurture」

「Worlds」から7年ぶりのアルバムとなったポタロビ久しぶりの作品、というか今年~年ぶりのアルバム多すぎな。どの曲も非常にキャッチーなダンスミュージックで耳馴染が良くポップな音像から聴き手にポジティブな印象を与える。しかしそのポジティブ性には自分の弱さや繊細さを描いた歌詞という裏打ちがあり、自分自身初めて聴いた時「Pet Sounds」のような悲哀を抱えている印象があった。そしてこのアルバムが強い請求性を持っている要因にポーター自身がボーカルを取っているという点が挙げられる。楽曲の創造主であるポーター自身が縦横無尽にピッチを操作しながら歌うことで一気に説得力が増し、それは息の詰まるような日々を一生懸命に歩む生活者である我々の叫びと共鳴していくのだ。今を生きる僕らが抱く悲哀をあえて受け入れ、暗いベッドルームをささやかなダンスフロアへと変えてしまう魔法がそこには確かにある。

11位 L'Rain「Fatigue」

今年度のサウンドやば過ぎでしょ大賞はこの人でしたね。エクスペリメンタル、ソウル、R&B、ジャズ、ゴスペル、ネオサイケデリア、、、はぁぁぁんうっせえうっせえうっせえわ、音楽用語とかよく知らねえで一丁前に喋ってんじゃねえぞばーかばーか!簡単に言うとな、ゴニョゴニョなってぶわぁぁぁぁぁなって急にオシャンティーな音鳴って極上にチルいっすわーってなったらスペーシーな音が鳴る最高のR&Bだぞ!わかったかお前ら!!!とりあえず聴け!!!!!!!!

10位 Lucid Express「Lucid Express」

はぁ...最高最高最高裁判所がLucid Expressに今年のシューゲイザー大賞1位の判決を下したようですね。香港出身のバンドでして、19年の香港民主化運動に20年のコロナなどにより今に至るまで前途多難の道を歩んできた彼らですが、満を持してリリースされたデビューアルバムである今作はシューゲイザー・ドリームポップ好きを唸らせる夢と魔法のスケープでしたね。シューゲイザーの正解ですよと言わんばかりにノイズと空間的なサウンドが織りなす広大なサウンドスケープは我々を幻想旅行へと誘い、そして甘美でうっとりするような楽曲群は甘い罠であってもうここから抜け出せない、いや抜け出したく無かなってしまうわけですよ。日本は大麻が許されずひなあいとLucid Expressが許されないのはなぜでしょうか?こだまでしょうか?いいえ、鳴り響くノイズはいつまでも聴く人の心を離さず虜になってしまう一枚。


9位 NOT WONK 「dimen」

今年の頭に「国産オルタナティブロックが熱すぎて光熱費爆上がりして水止められた話」って記事を出して、その記事を出した時点で新作のリリースが決まっていたNOT WONKには今後のシーンを引っ張って欲しいくらいの期待を抱いていたんですけど、リリースされた今作を聴いてバンドとしてかなり無敵じゃんって確認することができました。今作は聴けばわかるがフォークロックにソウル、R&B、ワールドミュージックなど本来のパンクという出自を超えていろんなジャンルの音楽をやっているのだが、これがまたエッグスシングスのホイップクリームか!ってぐらい過剰でして一つの曲に何個ジャンル詰め込んだの?ってぐらいクロスオーバーしたものになっている。そんな君がッ泣くまで殴るのをやめないッ!状態な強い曲が続くが、そのどれもがクオリティが高くソングライティング面における成長を感じさせた。こうしたあらゆるジャンルをいとも簡単に調理できる実力があるのに、あまりの全力さに空回りしそうな不器用さが愛しい日本で最強の3人組のアルバムだ。


8位 Subsonic Eye「Nature of Things」

あああああああああああああああああああああ心がぴょんぴょんするんじゃああああああああああああああああああああああでお馴染み、今年ちいかわと共に俺の心をぐしゃぐしゃにしてしまったシンガポールのインディーギターロックの雄ことSubsonic Eyeですね。スピッツやGRAPEVINEみたいにこの手のギターロック系のバンドには安定して良作を作り続けるバンドが多いと思い、Subsonic Eyeもまたその系譜にいる非常にタイムレスなグッドメロディを奏でるバンドの一つだと思う。いや正確に言えば今作を持ってその系譜に名を連ねたのだ。今作は前作までに見られたシューゲイザー的な空間系エフェクトは見当たらず、非常に生々しく飾らないギターサウンドを鳴らすことで楽曲の良さをよりダイレクトに感じさせることに成功した。今年はロックってやっぱ良いなと思わされることが多い年だったが、特に彼らにはそう思わされることが突出して多くトキトキメキメキときめいて心がぴゅあぴゅあハートになってしまいました。誰か助けて助けて助けて田中宗一郎な一枚なんです。


7位 NIGHT TRAVELER「Dreams You Don't Forget」

The 1975が2ndで鮮やかに描いた80s由来のポップセンスを現代のアンビエントやドリームポップなどに織り交ぜて奏でる10年代シンセポップは、18年にLANYの「Malibu Nights」という夕日がよく似合う極上にチルな傑作によって完成された。そしてNIGHT TRAVELERの今作はその完成された方法論をさらに押し進めた隙のない究極のポップソング集だ。どの曲も非常に完成度が高くうっとりするような堅実で正統派なメロディが魅力的だが、ここでも登場するスプリングスティーン的な土着感あるギターが前面に出ることで程よい武骨さも演出され、こうした甘美な部分と同時にカッチリとした部分も持ち合わせていることからBlue NileやBBHFなんかみたいな職人気質も兼ね備えたバンドを彷彿とさせることが出来るだろう。そういう意味でも沈みゆく太陽をバックに恋に落ちる「Malibu Nights」とは対照的に、今作は嵐の夜を彷徨い東の空から昇る太陽に思いを馳せるそんな作品であって、時代が進んでいくことでさらに評価を高めていきそうな傑作だと感じた。


6位 Men I Trust「Untourable Album」

現代インディーポップの最高傑作だと個人的には感じているカナダのトリオの通算4枚目の作品であり、下半期の愛聴盤として非常に流す機会が多かったアルバムだ。このバンドは相変わらず曇り空のような原風景を描くのがとても上手いというか、もくもくとしたシンセの音は非常にヴェイパーでありな質感でそこにマットで屈強なリズム隊が織りなすグルーヴは極上の1,2,3でチルアウトなわけで、俺の心の中の岸田繁が終始殺虫剤をかけられたゴキブリみたいなダンスを踊っているわけです。気持ち悪い例えを出してしまったが、ドリーミーで深みのあるローファイサウンドはいつ聴いても心に究極の平穏をもたらし、コーヒーをすすりながら雑誌を読むときに聴くのも良し、夜眠る時に聴くのも良し、特に意味もなく無印良品に聴くのも良しといった具合に、もはや生活するうえで欠かせないライフハックにまでなりえてしまう究極の生活アルバムでもあるわけなんだなこれが。


5位 Japanese Breakfast 「Jubilee」

韓国出身アメリカ在住のシンガーソングライターの4年ぶりの新作は、ポップソングというフォーマットに収まらない軽やかな立ち振る舞いが鮮烈な作品であった。10年代ドリームポップの最高のクリエイターであるWild Nothingのジャックテイタムを招いて制作された「Be Sweat」はダンサブルでヒップな都会派シンセポップであったが、その直後に「Kokomo, In」では非常に牧歌的なカントリーへと切り替わる。その後も非常に沈痛な空気感がヒヤリとする「Posing In Bondage」、シューゲイズな分厚いギターの層が押し寄せる「Sit」、チェンバーポップ的な質感とストリングスで構成されたスローナンバー「Tactics」と楽曲単位で見ると統一性は希薄だ。しかしながら圧倒的な陽の気と強度の高さという共通点は明確にあり、創作意欲の旺盛さが作り上げた縦横無尽な楽曲たちは自由という名の喜びに満ち溢れており、我々リスナーに生きることの肯定という祈りを捧げてくれる。このアルバムから感じられる圧倒的な自由は大きな希望だ。


4位 家主「DOOM」 

今年はロックって良いなと思える年だったのは先ほどのSubsonoic Eyeのレビューやこのランキングの並びを見てもらえればわかるが、特に邦楽シーンに目を向けると師走にリリースされた家主の2作目のアルバムは非常に最高なギターロックだったと言えるだろう。田中ヤコブというタイムレスなギター音楽を奏でることにおいて非常に凄まじい才能を持つフロントマンを筆頭に、3人のボーカル/ソングライターが織りなすドライブ感ましましなギターロックは、まるで「ANTENA」~「NIKKI」期のくるりとthe pillowsと曽我部恵一BANDが同じいる感覚に近いだろう。とんかつカレーオムライス、メッシスアレスネイマール、バナナマンラーメンズおぎやはぎ、これと田中ヤコブ田中悠平谷江俊岳はほぼ同義語だと思って大丈夫だろう。日本語の硬い語感を活かしたグッドメロディとエッジが効いて非常にドライブ感あふれるサウンド、それはまさしくやるせなくて石ころを蹴飛ばしたくなるような僕らのための最高のギターロックだ。僕は彼らに日本のギターロックの未来をベットしたい。


3位 JPEGMAFIA「LP!」

自分の中で2021年は"癒しと暴力"の狭間で"歌"へと回帰した年という風に定義したが、JPEGMAFIAの新作は圧倒的に"暴力"だ。今年は例年に比べてヒップホップ系の作品でビシバシ刺さるような作品はあまりなかったのだが、10年代の自己の証明を求める動きを活発化させるエナジーとしてヒップホップを求めていたのが、20年代に入り世界中が疲弊したことでヒップホップ以上にオーガニックな歌が求められるようになったことが起因しているように思える。そんな中でもJPEGMAFIAだけは時代の流れとか関係なしに居心地が悪そうである。彼の作るトラックはエナジーでもなければ癒しのチルアウトでも無い、怒りと破壊と狂気でしかない。ゴツゴツとしたサウンドと妙に筋の通ったハーモニーが織りなす異様な不気味さ絶妙なバランス感覚で成り立っていて、圧倒的な暴力性と熱量でぶつかってくる怪作。結論、JPEGMAFIAは神。


2位 Parannoul 「To See the Next Part of the Dream」

またあの夢だ。

嫌な冷や汗とムカつくくらい燦燦と輝く太陽が差し込む部屋、鳴りやまないアラームがファッキンムカつく。

部活で練習漬けかい?
どこか旅行にでも行くのかい?
それとも夢を追いかけるために勉強の励むのかい?

誰しもがもう2度と戻ってこない18歳の夏という永遠を可能な限りしゃぶりつくそうとして、やってくることが無い8月32日に思いを馳せているのだろう。

僕はと言えば相変わらずジャスコな街にイオンが出来たのを尻目に自転車をただ走らせていた。夢も好きな人も希望もないから絶望もない。鼻からそんなもの期待していないから気は楽だけど、虚しさだけはずっと付きまとっていた。

地平線の果てを目指して海へと向かう。砂浜にはシューゲイザーをバックに駆け巡る筒井あやめと与田祐希なんているわけないのにいつも期待してしまう。ドンヘンリーの言う通りロックなんて69年の時点でスピリットを切らしていたんだと悟った僕のiPodから流れるのはNUMBER GIRLからFrank Oceanに変わっていた。自分の中でもどこか淡い夏の終わりを悟っていたのであろう。


「何聴いてるの?」



ルイボスティーを飲みながら少女がそう微笑んできた。
美しい黒髪とびっくりするくらい小さな顔の少女の目は夢か?と錯覚するほど引き込まれるものだった。
いつもの夏と違うそんなある日、僕は少女の純粋無垢な質問に答えた。


Parannoulの『To See the Next Part of the Dream』ってアルバムさ。狭いベットルームでたった一人DTMを駆使して制作されたこのアルバムは、窮屈な居心地の悪さに葛藤する繊細な感情の機微をローファイなサウンドで残酷なまでに描くと同時に、その人の心をつかんで離さないメロディはどこまで広がる青空のような無限の可能性も内包しているんだ。Frank Oceanが「Blonde」でこれ以上考えられないような夏の終焉を描いたのに対し、Parannoulは鬱屈とした夏を自転車で現状突破したくなるような反逆のエナジーがあって、NUMBER GIRLの「SCHOOL GIRL BYE BYE」やスーパーカーの「スリーアウトチェンジ」のように少年少女の夏に特別な意味をもたらしてくれるバイブルになりえるポテンシャルを秘めた凄いアル...


「...気持ち悪い」




黒めがちな少女に振られたのでラーメン食らって走りたくなりました。

それでは一位を発表したいと思います。



























































1位 Cleo Sol 「Mother」

そこには確かに"歌"がある。

再生ボタンを押すと同時に発せられる"Lonely nigths..."というシルクのように滑らかな歌唱と静謐なタッチのピアノに引き込まれてしまうCleo Solのアルバムは、"癒しと暴力"の狭間で揺れ動く時代において人々が渇望している"歌"そのものであった。カーステからイヤホンへ、CDからサブスクへ、孫感じで音楽と人々の距離感が近づくにつれて音楽は日常のシナジーへと消費されていき、次第に重低音の効いたリズムとビートによって生活の歩調を合わせていった。そうでもないといつ狂ってもおかしくないからだ。しかし2020年に状況は一変し、文化はいつ簡単に捨てられてもおかしくないというあまりにも残酷な現実を何度も見せつけられてきた。ずっと悩んで苦しんで疲れ果てた自分の耳には、インフローによる最低限の編製が織りなす落ち着いたオーガニックなサウンドプロダクションは耳にスッと入っていき、キャロルキングなどの70年代のSSWを基調とした堅実で丁寧なソングライティングは優しい曲調と相反して非常に強い請求性を伴うことになった。このアルバムは物凄いテクニックや革新的なサウンドもない、刺激という部分ではこのランキングの中でも最も劣るだろう詰まるとこ純粋に良い曲しか入っていない。しかしそれは悪いことなのかという全くそんなことは無い、むしろ素晴らしいことだし音楽の一つの理想的なあり方だ。"歌"が寄り添ってくれることがどれだけ素晴らしいことか、こんなどうしようもない時代だからこそ余計染み渡るものがある。僕はあまりにもこのアルバムの素晴らしさにやられてしまっているので、これ以上どういう感想を言えばいいのかわからない節があるのだが、ただ一つこのアルバムを通じて言えることがある。



音楽は魔法だ。





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