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中小企業は、他社「より○○」ではなく他社との「違い」を追え

企業における戦略とは「ベター:better(より○○)」ではなく「ディファレント:different(違う)」である。

先日聞いたお話で、戦略についてとても腑に落ちるお話を聞きましたのでご紹介します。

経営学者である楠木健さん(一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻教授)のお話です。

戦略とは「長期的利益」を目指すことである。
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企業が「better」に走ってしまうと、betterには限界があり長期的利益につながらない。
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企業、特に中小企業が目指していかなくてはならないのは「different」のポジションであり、それこそが戦略である。

今日はこんなお話をしたいと思います。

中小企業の戦略についていろいろな本などで書いてあるのを見ても、なんとなくピンと来なかった経営者様は、もしかしたら初めてピンとくる話が聞けるかもです。

私はピンときました。




戦略とは長期的利益の獲得である

企業の戦略の定義を楠木さんは「長期的利益の獲得」だと言います。

確かに企業がなぜ経営戦略を立てるかと言えば、長期的な経営ビジョンを達成するために構築するものだと考えると、長期的利益の獲得はとても素直にうなずける指摘だと思います。

単純に利益の獲得ではなく、長期的に利益を得続け事業として存続し続けられるようなものでないと戦略ではないと。

その長期的利益を獲得するために「戦略」があり、その戦略を実行レベルまで落としてこんでいくと、戦略から導き出された短期的利益を追う「戦術」が生まれてくる。

戦略を地図、戦術を武器に例えた本を昔読みましたが、なおさら納得ができるようになります。



「より○○」ではなく「違う」を目指す理由

ベター(better)「より○○」戦略

戦略が長期的利益の獲得を目的とするものだとすると、その戦略は他社よりも「より良いもの」「より優れているもの」「より安いもの」という「ベター:better」を追うものではいけません。

なぜなら、「より○○」には限界があるからです。

例えば、「○○分で痩せられる」を謳う本は結構売れますね。とても簡潔で、インパクト大で、マーケティング的にもお手本となるタイトルと思います。

忙しいサラリーマンもできる!10分間ダイエット。(著:相野主税)

ですが、「10分で痩せる」という本が売れると、今度は「5分で痩せる」という本が出てきます。そしてその本も売れると、またまた今度は「3分で痩せる」という本が登場してくる。

10分:「10分で痩せられる○○」

5分 :「寝る前に5分やるだけ!簡単ダイエット」

3分 :「毎朝たった3分でマイナス10キロも夢じゃない!」

このように考えていくと、「より短時間で痩せられる」という戦略は限界があることに気づきます。

そう、0秒という限界です。「0秒で痩せられる」本が生まれた時にこの戦略はその競争を終えます。

もちろん0秒までに行く前に、それぞれの本が利益を奪い合い時間の経過とともにその戦略は価値を失っていきます

「他社よりも安く」という戦略も同様です。「0円」という限界があるため、いずれは競争が激化して長期的な優位性にはつながらない。

特に中小企業はこの競争に巻き込まれるとキツくなります。


ディファレント(different)「違う」戦略

ではどのように長期的利益を獲得する戦略を目指せばいいのか?

他社「よりも○○」なモノやサービスを追うのではなく、他社とは全く「違う」モノやサービスで勝負するのです。

他社が展開している商品やサービスと、機能や価格、技術、安心感などで「より良い」ものを追求するのではなく「違う」ものを提供していく。

楠木さんはこの「違う」についてレッドブルを例にして説明します。

レッドブルという世界的大ヒットとなったエナジードリンクの根源は、日本のリポビタンDでした。いずれもエナジードリンクであることに共通していますが、そのターゲットが明確に「違う」。かつての日本のリポビタンDのターゲットは「疲れた中年サラリーマン」。「ファイト!いっぱーつ!」で疲れた体を起き上がらせるというメッセージで日本では人気を博しました。一方、後発のレッドブルの研究者はそうじゃないと考えます。エネルギー成分は同様でも、その正しいターゲットは疲れた中年サラリーマンではなく「これから大事なプレゼンや試合や試験を控えた若者」だと考えます。
リポビタンDが「マイナスから±ゼロへ」というコンセプトだったのに対し、レッドブルは「±ゼロからプラスへ」というところでdifferentですね。

「違う」について勘違いをしていただきたくないのは、商品やサービスそのものが他社と違わなくてもいいのだということです。

「違う」のはターゲットだったり、コンセプトだったりでいいのです。私の中で何を「違う」ものとするかという質問に対して、一番しっくりくる言葉は「ストーリー」です。↓詳しくはこちら



この話はiPhoneでも同じことが言えると思います。

iPhoneは携帯電話の業界において「違う」のポジションを唯一確立しています。

こちらをご覧ください。

「ニュータイプの時代」山口周(ダイヤモンド社)

これは2007年に日本国内で発売された携帯電話の面々です。

各大手メーカーのマーケターたちが、過去の成功事例や統計により導き出された携帯電話の面々に対して、一切市場調査を行わないことで有名なアップル社より開発されたiPhone。

圧倒的すぎる「違い」ですね。

それからたった10年後、それ以外の携帯たちは「ガラパゴス携帯」と言われるようになります。⬇️詳しくはこちら

そして今、iPhone以外のいわゆるアンドロイド携帯たちが「より動画を美しく」「より料金を安く」と「better」で競っている中、iPhoneは「different」を突き進みます。

iPhoneも最近の差別化要因としては撮影の画質であったりする点においては「better」の部分もあるかと思いますが、iPhoneを支えている「different」の部分は、アップル社におけるすべてのプロダクトで表現する世界観から醸成されているものなのでしょう。

iPhoneやiPad、アップルウォッチ等すべてを通じて作り上げている点は、他のメーカーと比べて明らかに違いますよね。

iPhoneはスマートフォンの1つではなく、アップル商品の1つとして利用しているユーザーも少なくないはずです。


「違う」は「ウォンツ(wants)」を高める

ニーズとウォンツの話を以前にしましたが、iPhoneがバカ売れするのはこの両者が高いからです。

マーケティングの世界では「ニーズ(必要性)」も高く「ウォンツ(wants)」も高い商品が勝ち組と言われます。

つまりは、必要性に駆られて購入するような商品やサービスであり、かつ、その欲求に駆られて購入するような商品やサービスは、多くのお客様が並んで購入する商品またはサービスとなるということです。

iPhoneは、スマホという生活必需品にありながらも、その独自のストーリーで多くの人の欲求を満たすことで他社の追随を許さない独占状態となっているのです。


「違う」は明確なUSPを作る

USPとは、顧客から見た自社独自の「売り・強み」という意味で知られる、マーケティングにおいての差別化戦略の土台を支える考え方の一つです。

有名なUSPもいくつもありますが、私が好きなのはアスクルです。

「明日来るASKUL! オフィスに必要なモノやサービスをスピーディに「明日」お届けします」

「アスクル」というネーミングを思いついただけで「もう絶対売れる!」と思ったのではないかなと想像します。

このようなUSPが明確に記載できる企業は「違う」ものを提供できているものだと思います。


逆に、USPがなかなか作れない企業は「違う」ところがない。

結果として出てくるUSP案は、

「より安全と安心を提供します」
「どこよりも親切です」
「他社より1円でも安く」

というものしか出てこない。

差別化どころか、他社と全く同じ商品サービスであることを高らかに宣言しているようなものです。

お客様は、あなたの会社を選ばないのではないのです。お客様は、選べないのです。


いかがでしょうか?

「より○○」ではなく「違う」に飛び込む心構えはできましたか?

あなたの周りの方々はみな「より○○」で戦っています。そこから飛び出すのは勇気がいります。


そんなあなたに魔法の言葉をお送りしましょう。


あなたはファーストペンギンになる。


ようこそ、未開拓の海へ。



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