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紙媒体と海外生活

バンコクに住んでいたときに、
街中で見かけたら安心していたものがある。
「DACO(ダコ)」という日本人在住者向けのフリーペーパーだ。

同誌のインターネット配信もあったけれど、僕はフリーペーパーの方を好んで読んでいた。

どうしてフリーペーパーなのか。

バンコクに初めて住んで、タイ語も全くわからない。街を歩いていても、目に飛び込んでくるのはタイ文字ばかり。聞こえてくるのは、呪文のようなタイ語だけ。

そんな異世界だからこそ、日本語で書かれたフリーペーパーを見つけたときの喜びはひとしおだったのだ。

冊子を手に取り開いてみる。一頁一頁、紙の質感を確かめるように丁寧に指でつまむ。

特集もコラムも広告も全てに目を通し、内容を理解できることを認識しながら読み進める。当たり前のことなのに、ここだとそれができることに、何倍もの喜びを感じる。

「DACO」は観光客より在住者向けの冊子だったので、それを片手に休日のたびにレストランへ行ったり、ワンデイトリップしたりして、ボロボロになるまで活用した。バックナンバーも人気があって、読み返して活用したこともあった。

また、広告がとても大事だった。日本にいるときは、広告に注視したことはあまりなかったけれど、タイでは広告の見方が変化し、注視するべきものになっていたように感じる。

広告を出している会社や店だと、安心感を持てたのだ。これは、紙媒体だからであり、はたまた愛読する「DACO」だったからであると思っている。

情報はインターネットで仕入れるのが最も手軽な方法だと思う。しかし僕にとって、殊にタイにおいては、「紙」という物質として実在するフリーペーパーこそが、信頼できる情報源であり、タイ生活に安心感を与えてくれるものだった。

それは情報源としての価値を超えて、心の拠り所のような存在になっていたのだと思う。

紙面に載っている文字の一つ一つ、写真の一枚一枚に、だいぶ寄りかかっていたなーと今改めて思い返す。僕の海外生活を守ってくれていたように感じている。

2020年5月11日

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↑同社から発行されているガイドブック。

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