ウィリアム・トレバーという作家とアイルランド
先日読了した小説『密会』 から派生して、アイルランドの歴史に興味を持ち、入手した歴史本に目をとおしてみたところ、思った以上に味わい深い作品だったのだと気づいた。
図説 ケルトの歴史: 文化・美術・神話をよむ という本で少しは予備知識を得ていたが、全体を捉えるには情報不足だった。
アイルランドは、イギリスのガキ大将に搾取されている歴史が垣間見え、政治的、宗教的な理由による生活のあらゆるパラドックスを抱えてきた国だとわかった。
トレバーが執筆した時代は、ジャガイモ飢饉よりだいぶ後とはいえ、アメリカに移民する話 『大金の夢』などは、長子の家督相続のしきたりや、穀物生産から畜産への変貌の副作用が濃厚に描かれている。
他にも、歴史背景を知らずに読んでいたときにはピンとこなかった 『ダンス教師の音楽』 は、地主と農民との階級的矛盾を解消するための救済負担が重くのしかかったことで陥落していく、地主の家の話だ。
カトリックとプロテスタントの派閥による結婚問題を描いた 『死者とともに』 にしても、歴史的背景を知ってから読むと違った一面が見えてきて、なんとも言えない気持ちになった。
先に歴史本を読んでおくべきだったなぁ。
もう一度、『密会』 読んでみよう。
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