【短編】僕達の巡りの旅
「雪が…見たい…なぁ…」
じいちゃんは僕を見てそう言った。
それから
「あれに…」
ベッドの上で重そうに腕をあげて、震える指でなんとか、湯呑みを指差したんだ。
病院の10階にあるじいちゃんの病室の窓からは、雪で真っ白な山は見える。
でも窓越しじゃなくて、僕に持ってこさせて目の前で見たいらしい。
「お父さん、外は晴れているけど寒いのよ。この窓から見え…」
「わかった。行ってくる。」
お母さんに止められないうちに素早く湯呑みを持って、病室を走って出た。
お母さんはいつも、娘のくせ