見出し画像

美味しく飲んで、意識せずいつの間にか健康に。カテゴリー・クリエイターへの挑戦 Vol.39

「黒字化にならねば、事業を終息する」
その期限がとうとうやってきてしまったのだ。
これまでにも幾たびか、都度都度その期限を引き延ばしてきてはいたのだが、いよいよタイムアップとなってしまった。
そして、私は、もう社内に於けるプレッシャーに耐えることにも疲れてしまっていた。
歯向かう気力も失せた私は、匙を投げた。
2015年12月の取締役会で、私は事業継続を断念することを皆に告げたのであった。

元より、事業の終息を予期していた他の取締役は、事業売却先に関して既に当たりを付けていた。
であれば何も言う気も、する気にもなれない私は、売却に関して一切を任せた。
売却に必要だと言われれば、資料の作成なども、「判りました」と素直に行なった。

画像1


ウォーターサーバーの仕入業者と、メンテンス及び保管工場の会社は、共に愛知県にしていた。
購入履歴と設置台数から計算して、在庫数が2,000台弱不足していることが判った。
だが、問われてみても私にも理由は皆目判らない。
営業会社の設置と解約のラッシュ以降、対応に追われっぱなしだった為、細かいところまで目が届かなくなっていた。それが正直なところであった。

そこで、弁護士、会計士などによる実態調査が行なわれた。
私に対しては、仕入れた様に見せかけたとの横領の疑い。仕入業者とメンテンス工場に対しては転売横流しの疑いという訳だ。
苦痛と憤然とした思いに満ち、それでいてすっかりと投げやりな気持ちの、思い出すのも嫌になる月日が数ヶ月続いた。

画像2


結論として、私の横領も、仕入業者との結託も無かったであろうことが認められた。
私はすっかりツンボ座敷、蚊帳の外に置かれていたので詳細は知らないが、対して仕入業者の転売については、調査に当たった全員が、まず間違いあるまいと確信をしていた様であった。
弁護士や会計士なども行動を共にし、現地まで赴いて仕入業者を追求するなどをしたりして調査は続けられたが、しかし最後まで確証は現れなかった様であった。

だからといって、それで済まされるものでもなかった。
誰かがオトシマエを付けなければならない。
ウォーターサーバーのずさんな在庫管理の責任を負って、私は、紛失してしまったサーバー2,000台分の損失補填をした。
保有していた会社の株式を、質権設定という形で返納し、不足額に対しては個人の財産を処分して支払った。
また、事業撤退のタイミングを遅らせたことにより会社に損失を与えたとして、代表取締役の任も解かれた。

お試し


頑として事業継続を邁進し続けていた私は、今やすっかり悪人の処遇だ。敗残者は発言権も無いし、抗う術も持たない。私はなすがまま、なんでも良いから早く終わらせてくれ、という心持ちで、全てを諾々と受け入れるだけだった。
それでも会社を去る訳にもいかない。事業売却が完了し、水事業が終結する迄は、居続ける責任が有るのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?