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Rambling Noise Vol.36 「メルマガナイトへGo ahead! その24」

この小説『探偵物語』をアサノさんが何故今更読み返したのかというと、当時から十五年ほど経過した後のロサンジェルスを舞台として続編が書かれていたことを、たまさか知ったからだ。

幾らドラマとは別物と言ってみても、それはそれ。あのショッキングなラストを迎えたドラマのその後が有るのであれば見てみたいというのも人情というものだ。
そこで、当時の中学生時代に一度切り読んだだけであった『探偵物語』『赤き馬の使者 探偵物語2』、そして、くだんの続編である『新・探偵物語』『新・探偵物語2 国境のコヨーテ』の四冊を買い揃えることとした。

それら小説『探偵物語』の特筆すべきは文章の上手さだ。小鷹氏が長年培ってきた文筆業としての技とミステリーに関する知識の面目躍如といったところで、グイグイと読ませる正統派のハードボイルドミステリー。圧巻の書だ。

ところで、ハードボイルド小説というと、犯罪、殺人、暴力、拳銃、組織、夜、酒、女と、やたらと野蛮で残虐、非情。サディスティックな俗っぽいドラマツルギーであろうと決めつける向きも多々見受けられる。

特に日本に於いては、大藪春彦などがハードボイルド小説に於ける大作家と扱われて来た(別に嫌いじゃないけど)背景などを鑑みると致し方ないとも思えるのであるが、それを正解とは一概には言い難い。

ハードボイルドの世界を押し開いたと言われるのは、文豪アーネスト・ヘミングウェイ
肌が荒れるのを嫌い髭を伸ばしたという、フローズン・ダイキリが好物のこのアメリカ人は、『日はまた昇る』『武器よさらば』『誰がために鐘は鳴る』『老人と海』などを遺しているが、これらの作品を読んでみれば、先程述べた様な誤りに気付かされるだろう。

本来の語意を「固ゆで卵」とするハードボイルドとは、感傷や叙情から遠く離れ、物語に登場する人物たちをドライな視点で捉えるその文体自体を表すものだ。だから、そこには拳銃も死体も酒場も必須ではないのだ。


では、何故その様な誤解が生じたのか。
ヘミングウェイの短編は、より簡潔な文体の作品が多いが、これに影響を受け、探偵小説に用い始めたのが、『マルタの鷹』などで知られるサミュエル・ダシール・ハメットである。
ピンカートン探偵社でのエージェントとしての経験を生かしたハメットの小説は、ハードボイルドのスタイルを得て世間の評価をものにした。

(いったいなんの話に・・・っていつものことかと言うことで、続く)

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