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サイボウズの​​有志メンバーが『子どもたちに民主主義を教えよう』を読んで考えた、ワクワクする未来の教育とは?

こんにちは。あさま社です。
先日、SNS をみているととってもうれしいtweetを見つけました。
それがこの投稿……!

なんとあの「サイボウズ」の社内であさま社の第一弾書籍『子どもたちに民主主義を教えよう』 (工藤勇一/ 苫野一徳【著】)の読書会が行われているではありませんか!
これは、お話を聴かねば…! 
急なお声かけにも快く応じてくださいました。

今回、『子どもたちに民主主義を教えよう』 の読書会を主催してくださったのは「サイボウズらしいワクワクする子どもの学び場を創ろう」プロジェクトの一環として。メンバーはサイボウズの社長室を中心とする社内プロジェクトです。子どもたちの教育に関するさまざまな取り組みを行なっているそう。なぜサイボウズが「教育」? 読書会というかたちで本を読んで、どんなことが見えてきた? 大人同士の学び合いから見えてきたことをお届けします。

◆お話を伺うのは…
前田 小百合さん
 
「サイボウズらしいワクワクする学びの場を創ろう」プロジェクト専任
なかむら アサミさん
 自律型組織づくりを支援するコンサルタント
渡辺 清美さん
虐待防止プロジェクト
「サイボウズらしいワクワクする学びの場を創ろう」プロジェクト

なぜIT企業が教育のプロジェクトを!?


― はじめまして。今日はよろしくお願いします。

前田さん:よろしくお願いします。先日の読書会には私のほかに4名の社内メンバーが参加したのですが、今日はそのうちの2名、なかむらと渡辺をお連れしました。

― ぜひ、ざっくばらんにお話できればと思います。
まず、そもそもサイボウズが社内プロジェクトで“子どもたちの教育”に取り組んでいるというのが意外でした。いったい、どんな背景があるのでしょうか。

前田さん:実はサイボウズは、IT企業として教育の場に関わっています。たとえばプログラミング教育にサイボウズ製品を提供したり、高校生や大学生に向けてチームワークに関するワークショップを行なったり、学校現場でキントーンを活用したICT教育モデルの実証実験をしたり。

そのなかで、教育の現場にあるさまざまな現実を見てきました。

先生は朝から夜まで休みなく働いていて、頑張りすぎてしまっている。けれども学校に行かない子どもや、教室に行けない子どもが増えている。このような山積みの問題を、学校の現場だけで解決するには限界があるのではないかと私たちは感じたんです。そこで、サイボウズが民間企業としてなにかサポートできればと思い、教育に関する社内プロジェクトを立ち上げたわけです。

― 今回はその活動の一環として、読書会を実施したのですね。
そもそも、本書を選んだきっかけは。

前田さん:私は本書を、個人的に予約して購入していました。著者の工藤先生のお名前はよく存じ上げていましたし、共著者の苫野さんのこともよく知っておりましたので、この2人が出す本ならぜひ読みたいと思って。

実際に読み進めてみると「これは大人が全員知っておいたほうがいい」と思えるようなことが書かれていました。そこで、偶然同じように本書を読んでいた社内のメンバーと「読書会を開いて、みんなで語り合ってみたい」という話になって。さっそく社内に呼びかけ、教育に関心のある5人のメンバーが集まりました。

「思いやり」や「絆」じゃ何も変わらない!


― 実際に読書会で読んでみて、いかがでしたか?

なかむらさん:私は読書会の場で、初めてこの本を読みました。気づきが本当にたくさんあったなというのが率直な印象です。

たとえば2章の冒頭にあった「心の教育」が民主主義の成熟を妨げているという話には、大きく共感しました。「思いやり」や「絆」、「一致団結」という言葉を使って課題を解決しようとするのは本質的ではないという話の部分です。

私は普段、外部企業に対して組織づくりの研修を行なっているのですが、講演の場でビジネスパーソンにまさに同じことをお伝えしています。「思いやり」や「絆」を掲げるだけでは行動に結びつかない、と。だから私が思ってきたことをズバズバ言葉で書いてくれているなと思って、読んでいてなんだかほっとしましたね。

学校教育の現場では、「思いやり」や「絆」という言葉が多用されているほかに、「〇〇を意識する」なんて言い回しも頻繁に使われている印象があります。こういった言葉は、具体的に何も示されていないという点で、ビジネスサイドから見るとすごく違和感のある言葉です。でも、教育現場においては昔も今も、当たり前に使われているのですよね。子どもの頃からそういった「心の教育」を受けてきたからこそ、大人になっても離れるのが難しいんだなと感じます。

渡辺さん:たしかに、今の日本の学校は、大人が辿ってきた枠組みに、また子どもを当てはめているところがありますよね。

前田さん:私は小学生と中学生の子どもを育てているのですが、親としても、学校には「心の教育」ではなくて、ある課題を前にどんなふうに対話を重ね、どんな話し合いをしていくべきなのかを教える場になってほしいです。工藤先生が本書で言っていたように、全員が向かうべき「最上位目標」を打ち立てて行動を促すことこそ、本当に意味のある民主主義教育になると思います。

取材の様子

「私達は誰からも民主主義を教えられてこなかったんだ」という気づき


― 今の日本の民主主義について、本書を読んだうえでどう感じていますか。

前田さん:民主主義って何だろうということは、この本を手に取る前から考えてきました。まだまだ多数決がよしとされる世界だから、国会こそが民主主義が体現されている場なのかなと…思ったこともありましたね。でも、苫野さんとか工藤先生の考えを聞き、多数決ではなくて話し合いを重ねて、みんなが納得できる案を作り上げていくことにやっぱり本質があると納得しました。

ただ、難しい課題だなと思います。日本人はどうしても「対話を通じて別のよりいい案を作っていく」ということが苦手です。逆に、一度主張したことを曲げたら負けみたいな空気が強くあると思うんです。話し合いの中で考えを変えていくということが、自分も含めてまだまだ上手じゃない。だから結局イエスかノーかで争うかたちになって、勝ち負けのある対決みたいになり、しまいに感情的に決裂してしまうんです。

それだけ私達は、誰からも民主主義を教えられてこなかったんだなと、改めて感じています。

なかむらさん:そうですね。私たち日本人って、歴史的にも昔から“お上”が決めたことに従ってきましたからね。言わば戦争に負けて民主主義が入ってきた国なので、急に民主主義と言われても根付くのは難しいんだろうなと思います。

企業研修やコンサルタントをしているなかでも、この日本人の特性を感じます。ずっと「上に従うための教育」を受けてきたので、議論をしていい解を生み出すという練習ができていない。結果、自分の意見は言ってはいけない、議論はぶつかってはいけないという考えが染み付いてしまっているんです。

渡辺さん:なかむらさんは研修をしていて、自分の意見や気持ちを言えないビジネスパーソンによく出会うと言っていましたもんね。しかも、気持ちを言えないだけじゃなくて、そもそも気持ち自体がわからなくなっている方も多いのだとか。気持ちを表現するって、大人にも難しいことですよね。

なかむらさん:本当にそうです。もちろん大人自身もこのいびつさに気づいていて、「変えよう」という声も挙がっているんですが、なかなか改善されません。やっぱり教育ってすごく根深いなと思いますね。一生引きずるくらいの負債になっているんだなと。だからこそ、大人が今改めて民主主義を学ぶことの意義を、すごく感じます。

前田さん:気持ちを表現しにくい雰囲気は、学校の職員室にもあるかもしれません。多くの学校の職員室では、職員同士が多様性をうまく認められず、心理的安全性が低い状態になっていると聞きます。そういう環境の影響を子どもたちも受けて、気持ちに蓋をすることを学んでしまうのかなと思います。

最近では「心理的安全性」というワードを巷でもよく聞くようになりましたし、少しずつ学校側にも危機感広がっているのかなと思いつつも、まだまだこれからかなと思います。親としては、先生たちが変わって学校全体がもっと柔かくなったらいいなと思いますね。たくさん衝突しながら、新しいアイデアを探していく…そんな経験ができる場になってほしいです。

渡辺さん:公教育の場で子どもたちが民主主義について学んでいくことは、すごく大事ですよね。私もその重要性についてずっと考えてきたので、今回この本が、自分の気持ちをしっかり言語化してくれた感覚です。

「対立構造をつくらない」は学校との対話に役立つ


― 本書で得た気づきが、日常で活かされたシーンはありましたか?

前田さん:まさに毎日の仕事で活かせています。たとえば本書には、工藤先生が学校改革を進めるうえで「戦わなくてよさそうなところから学校を変えていく」「対立構造をつくらない」ことを心がけたと書かれています。

この箇所は読書会でもトピックとして盛り上がった部分なのですが、やっぱり、無闇に敵をつくらないことってビジネスにおいてもとても大事なんですよね。自分の理想をそのまま伝えるのではなく、お互いがWin-Winになるようなアプローチをとれば、スムーズに事が動きます。今後も、仕事をする上で大事にしていきたい姿勢です。

なかむらさん:他にも、ビジネスの場に通ずるポイントがたくさん書かれていましたね。小さな意見対立をどうやって解決するのかとか、一度決めたことはやり通さなければいけないと思い込んでいるけれど本当にそうなのかとか。
本書には子どもたちのエピソードがたくさん出てきますが、読んでいると、大人社会にも言える共通した課題に気づかされます。

渡辺さん:本当にそうですね。だからこそ私は本書を、大人が変わるためのツールとして使いたいと思っています。

実は去年、イギリス・スウェーデンに子どもアドボカシーの視察に行ったのですが、とくにスウェーデンでは「子どもたちの権利」に対する感覚が市民にも企業にも保育や学校現場にも広く浸透していて、いろいろな取り組みがなされていました。日本ももっとそうなるべきだと思っているので、本書を使って、子どもの権利に関するワークショップのようなことができたらいいなと考えています。

― 最後に、本書をまだ手にとっていない方に向けてメッセージをいただければうれしいです。

前田さん: 今、子どもたちの学びはだいぶ変わりつつあると言われながら、まだまだ変わってない部分があると思います。学校は旧態依然とした教育を続けていて、子育てをしていてもどかしさを感じるばかりです。

実は私は以前から、学校のやり方に違和感を覚えたら、直接に話しに行くようにしているんです。「ちょっとママ、学校に行って先生に話してくるけどいい?」みたいに。単に批判するのではなく、先生にはどんな狙いがあるのか聞きながら、対話の中で「私はこう思うんです」と伝えていく。そんな背中を子どもに見せているつもりです。こういうのも、大人が子どもに見せられる一つの民主主義だと思うんですよね。

本書を読むと、大人として子どもとどう関わっていくか、視界が開けるような感覚になると思います。そして身近なところから一歩踏み出そうと思えるはずです。ぜひ、子育て中の方に読んでほしいです。

渡辺さん:民主主義について基本的なことを学べる本ですものね。自由の相互承認とはなにか、どんなふうに合意形成していくのがいいのか…そのあたりがわかってきます。

だから私は、子育て中の方以外にも、何らかの対立で悩まれてる方とか、世の中に窮屈さを感じられてる方にも読んでもらいたいと思っています。

なかむらさん:私はちょっと違う視点から、組織開発に関わる人とか、組織の文化を変えたいと思ってる人に読んでほしいと思いますね。組織をどういうふうに変えていけばいいのかみたいなヒントが随所にあるので、手にとって参考にしてみてほしいです。

渡辺さん:やっぱりこうして話すと、1人で読むよりも、理解に深みが出ますね。今回読書会をやってみて本当に面白かったですし、今日もまた、改めて2人の話を聞いて学ぶものがありました。

何十人という規模じゃなくても、数人で話すだけで、こんなにいろんな気づきが得られるんだなと驚いています。小さいアクションでもいいから、まず動いてみることって、とても大事ですね。これからも読書会を続けていきたいです。

― ぜひ本書の輪も、一緒に広げていきましょう。今日は、たくさんの気づきをありがとうございました。


▶▶▶「サイボウズらしいワクワクする子どもの学び場を創ろうプロジェクト」公式noteでは、読書会のレポートをご覧いただけます。

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