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ノルウェー語でカウンセリングを受けていたら。

☆スウェーデン・ストックホルムでAirbnbに滞在していた時の1枚

語学を学んでいる時、北欧で生活している時に「わくわくする瞬間」というのがあります。

語学を学ぶことは「その国のカルチャーや現地の人々の価値観や生き方を知る」ことでもあると思うのですが、そんなエピソードをひとつ。

私は2年ほど前からパニック障害になっていて、ノルウェーの医療機関にお世話になりながら今も治療中です。

ちなみにメンタルヘルスがボロボロだった時の「私なりの治療法」のひとつがフィンランド語の勉強を始めることでした。これは効果あり。

オスロでは心理カウンセリングも受けていて、今は3人目のカウンセラーと毎週1時間お話する機会があります。自分の思考の癖を修正するのに役立つ。

日本でカウンセリングを受けたことはなかったので、初めての体験を文化が違うノルウェーでノルウェー語で受けるのはかなり大変でした。

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例えば、何が大変って、

私は日本で暮らした影響もあるため、日本社会のことも説明しなければいけない。でもカウンセラーはアジアのことや移民の立場がわからないので、この説明さえ大変

自分の思考の癖に気が付いていなかったので、精神ボロボロの状態で考えを言語化することさえ大変

それを母語語ではない言葉でコミュニケーションする。今は慣れたけど最初は頭が大混乱でした。

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私にとって外国語で「クレームできる、ケンカできる、電話で交渉できる」などは「できたら語学力が上達している証」のようなものでした。

「現地のカウンセラーにその国の言葉で自分の悩みを、文化の壁を乗り越えながら、コミュニケーションする」も、「できたら、すごいぞ」リストに加えようと思います。

あ、話がずれちゃった。

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それでですね、最近、ノルウェー人のカウンセラーと話していたら、

「あさきは、典型的なオープンな人ね」と何度か連呼されたんですね。

※ コロナ禍なのでデジタルでカウンセリングです。

「オープン」って、皆さんは何を思い浮かべますか?

私は、社交的、フレンドリー、外によく出る人、人とたくさん話す人とか。

あと私の仕事柄、顔と名前を公に出して、SNSのアカウントも公開しているし、メディアで記事配信をしているので、その情報公開度や透明性みたいなものをオープンと言っているのかなと思ったんです。

でも、話を続けていたら、

「あれ。なんか、オープンって違う意味か?」と感じ始めました。

カウンセラーと、なぜか話がずれてきているような感じ。

「ちょっと待って、ノルウェー語でそのオープンって、どういう意味で使ってる?」って聞いたんです。

そしたらね、

「あさきがオープン」

って、

「あさきはHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」って意味だった。

日本でも生まれつき感受性が強い人、敏感な人、「繊細さん」とかで話題なのでは。

ぜんぜん意味が違った。

「だから話の流れに違和感あったんだ。話を途中で止めて、聞いてよかったー!」と思いました。

※ちなみに私がHSPって初めて知りましたけどね。

カウンセラーは「HSP」や「敏感」という言葉を使っていなかったので、彼女が言う「オープン」がこれだとは気づきませんでした。

「オープンって、そうね。あさきの家の庭の自宅が全ての人に開放されていて、あさきはその庭で起きていることを素直に受け入れてしまうの」

とか言われて、私はぽかんとしていて、

「そうね~、周りで起きている現象の影響をストレートに受けやすい人ね」

と言い直され、

私が沈黙して、ちょっと考えて、

「日本でよくHSPという言葉を聞いていたけど、そのこと?英語でハイリー・センシティブ・パーソン?」と聞いたら、

「そうそう!」とカウンセラーに言われて、やっと納得。

「とても敏感な人」という言葉と、ノルウェー語の「オープン」という単語の私の印象が全然違うので、「へええええええええ!」と大きな発見をした気分でした。

※私が「敏感な人」という指摘に驚いているというよりは、ノルウェー語の「オープン」という単語が全然違う意味だったことを、私は楽しんでいたのです。

「オープン」って、なんだか元気そうで、情報もオープンに公開しているような感じ。

でもカウンセリング内容は「私(あさき)は読者にプライベートなことを根掘り葉掘り聞かれるのが嫌だが、それを相手にはっきり伝えるのも失礼な気がする。読者と会う場所よりも森の山奥でこもって仕事しているほうがいい」というよう感じ。

これだとオープンどころか、「超クローズな、閉じこもった人」のような。だからカウンセラーに「オープン、オープン」と言われて、「顔と名前を公にして、ニュース書いてるからか?」と勘違いしていたのですね。

この会話以降、カウンセラーは「オープン」という言葉を私に使わず、「あさきのように、とても敏感な人はね……」という言い方に変えていました。

「あら、あさきにはこちらの言い方のほうがいいのね」と相手もわかったみたい。

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ちなみにパニック障害やらうつ病やら、聴覚過敏やら、広場恐怖症だわ、いままでいろんな診断をノルウェーでされていたので、

カウンセラーに「とても敏感な人」宣言されても、「あら、そうですか」という感じです。

それよりも、今回のエピソードで私が伝えたいのは、

「外国語って、やっぱりおもしろいな!」ってこと。

「オープン」の意味がノルウェー人カウンセラーが使う心理学用語では違っていて、

この時の会話で私が「?????」を繰り返して、やっと「あああああ!そうか!」と「あは体験」ができた瞬間が気持ちよかったのです。

気になっていた単語の意味がやっと分かって、しかも同時にその国ならではのカルチャーやライフスタイルが言葉に絡んでいたことを、やっと「理解できた!」という瞬間は、視界が広くなったかのように、気持ちが良い。

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ジャーナリストとして仕事をしていると、こういう瞬間はよくあり、

「どうして、そう考えるの?」

「どうして、そういう行動をするの?」

「どうして、そういう言い方なのか」

「その単語はなんだ。翻訳しにくいぞ」

と、調べて調べて、聞いて聞いて、「あー!なるほど!」となることがあるんです。これがたまらない。

取材中は

「ちょっと待って。その単語、表現はどういう意味で使っている?私はこう理解しているけれど、それと同じ?」と確認することを大事にしています。

外国語で仕事していると、取材中にひとつの単語がやけに気にかかって、放っておかずに、彫り込んでいくと、取材テーマ全体にかかっていた「ぼんやりした霧」がさーーーっと蒸発していくことがあるんです。

今回はそれがカウンセリング中に起きたので、わくわくしていました。

「別の国の言葉を学ぶことは、やっぱりおもしろいねぇ」とその時にカウンセラーにも話していましたね。

こういう瞬間はフィンランド語の勉強を始めたらさらに増えたので、この「わくわく発見」を楽しんでいます。

というお話でした。

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3/22~28のフィンランド語の勉強記録

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アプリForestで記録していた勉強時間 合計6時間44分

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スマホで単語暗記(フラッシュカード)アプリ 約12時間

加えて

語学会話サイトitalkiでフィンランド人の講師と会話 4時間 でした。

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☆最近、朝日新聞に掲載されたインタビュー記事

☆「料理通信」に新記事アップ中












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