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「おっさんだって恋はした~ダメな恋だったけど~2」

恐らく美香とは、このタイミングでなければお互いを意識する関係にはなっていなかっただろう。後に美香に恋をして、好きになり、愛した人。記憶の中にいる美香の表情は笑っている。でもその笑顔は年々、日に日に思い出せなくなっている。たぶんこの先、後数年で全く思い出すこともできなくなってしまうだろう。


・・・・。

美香との待ち合わせ場所に近づくにつれて、緊張が徐々に強くなっているのが自分でも感じることができた。「美香は本当に来ているだろうか?」「やっぱりドッキリ?」ドッキリなら笑いにして終われるかもな。そう考えながら待ち合わせ場所に向かって歩いていた。

私より先に美香は待ち合わせ場所にいた。私の緊張とは正反対に美香は落ち着いているように見えた。

私が美香を見つけてほんの数秒遅れて美香も私を発見した。その表情はとても落ち着いていて笑顔を見せていた。その表情を見た瞬間ドッキリではないと感じた。

会ったのは午前9時。夕方17時まで一緒にいる予定だ。お互い家庭があるので仕事帰りを装える時間帯に解散することにしていた。

美香「どこに行きましょうか?」笑顔でそう聞いてきた。

正直、本当に来るとも思わなかったので全然決めていなかったし、緊張で頭の中が真っ白だ。どうしてそんなに緊張しているかというと、仕事の時とは雰囲気が違うその姿に圧倒されていたからだ。美人だと思っていたが、いま目の前にいる美香を見てこんなに美人だったんだと改め思っていた。

こんな美人がどうして???そう思っていると

美香「大丈夫ですか?今日、どこ行きますか?」

は!?っとした私は慌てて

私「さ、桜木町に行こう」桜木町はこの場所から30分程だ

超典型的なデートスポットだ。少し自分を落ち着かせたかった。何より美香にどうして今日来たのか?本当に良いのか?話を聞きたかった。

私「本当に来たんだね。」

美香「はい。楽しみにしてたんです。」

私「そっか。まだ信じられないよ。」

美香「どうしてですか?」

私「昨日の今日だし、突然のことだし。それは、良いとしてメールだけでは表情を感じることができなかったから、だから本当のことなのか半信半疑でいたよ。でも今こうやってあっているからね。現実のことなんだと今ようやく実感できたよ。本当に俺とこうやって会うのは美香にとって良いことなのかな?正直なことを言うと俺はすごく嬉しいよ。美香はどう思っているのかなと思って」

美香「そうですね。私は旦那とは別居中だし、離婚の手続き中だしストレスというか寂しい気持ちが大きくなってきているのかなと思います。だから浅広さんに甘えたいのかな?って思っているのかもしれないです。」

なんの曇りもないその眼差しは、真っ直ぐに私のことを見つめていた。あぁダメだ・・・。これ以上足を踏み入れては戻れない。また沈む音が聞こえる。戻れなくなる・・・。

私「そうなんだね。なら美香が思うように甘えな。今の俺に出来ることは限られているけど話くらいはいつでも聞くし、出来ることは何でもしてあげる。」

そう話すと美香はもたれかかってきた。

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美香「なら。私をめちゃくちゃにして下さい。」

そうつぶやいた。

その瞬間、完全に戻れないところまで一気に沈んだ。これ以上足を踏み入れてはいけないと踏ん張っていたが、その力も一気に無くなってしまった。音もなく沈んでいる。

そこからは覚えていない。何を話し、どうやって移動してきたのか。

気づいたら二人でホテルにいた。そして激しくお互いを求めあっていた。

この時の私は全く気付かなかったが、美香は私を求めていたのではなかった、旦那の面影を私に見ていた。現実では私に抱かれていたが、彼女の心の中では旦那に抱かれていたのだ。何が理由で離婚に至ることになったかは聞いてなかったが、この時までは美香はまだ旦那のことを愛していた。

私は美香の寂しさを埋めるための役割を果たすことになった。

寂しさを埋めるための役割・・・。それは私から美香に対して求めた事でもある。私は妻との夫婦関係も完全に悪化していた。必要最低限のことしか話さなかったし。日々の虚しさを美香に潤してもらった、日常の寂しさを埋めてもらった。

お互いに何度も何度も求めあい、心のすき間を埋め合った。

気づくと昼過ぎになっていた。思った以上に時間が過ぎていた。

私「もうこんな時間なんだね。昼食食べに行こうか?」

美香「そうだね。ホテルだけで終わるのも勿体ないよね」

確かに。どうしてかわからないがここでやっと自然に笑った。不倫関係で他の人には絶対にバレないようにしないといけないとはいえホテルだけで終わりたくない。せっかく桜木町っていうデートスポットにいるのに。

今日残された時間はあまり多くはないけど、ゆっくり昼食がべることができる店を探し昼食にすることにした。食事を一緒に食べてふと思った。

私「美味しい。なんか美香と食べるご飯は美味しい。こんな風に思ったのは初めてだな。」

美香「そんな風に言ってもらえるの、初めてでどう反応したらいいかわからないよ。」

美香はとても嬉しそうにそう言った。

お互いに職場の同僚ということもあり仕事上の話も少ししたが、プライベートのことを全くわからなかった。なのでプライベートの話を残された時間は話していた。

学生時代の思い出。好きな音楽や映画。趣味の話。さっきまで体を重ねていた2人の会話とは思えないほど初々しい会話だった。でも本当に楽しい時間だった。この時のこの気持ちは嘘ではないと思えた。

そして、この日を境に二人の仲に決まりが出来た。2人の関係がバレないようにするための決まり事だ。

会うのは月に1回、レシートは必ず捨てる、メールの送受信履歴は必ず削除する、電話の履歴も削除する。

不倫をしている罪悪感が襲ったが、美香のため、自分の寂しさの埋め合わせのためと、都合のいい言い訳をして感じないふりをした。

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本日はここまで続きは次回

次回は「寂しさの埋め合わせだけでは終わらなくなっていく状況」です。

駄文長文おつきあいありがとうございますm(_ _)m

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