見出し画像

青い星

ある星にひとつ、木の実が埋められた。
木の実は、土のなかで成長した。
実から芽を出し、茎になり、枝になり、幹になり、葉をつけた。
これが僕。僕は木である。

まわりにはなんにもなくて、
ただ、宙と大地だけが広がっている。
宙は、明るさとぬくもりを与え、
大地は、やさしい母のようにいつだってそこにいる。
愛はちょうど僕の頭のてっぺんと足の先にあった。
僕は、愛を抱く、平和な木である。

冷たい風が吹いた日、僕は必死に実を落とした。
寒がりな動物たちは、秋になると僕の実をおうちいっぱいに集めて、そうして、冬の間はそれを食べて過ごすのだ。
僕は持てるだけの愛を全部分け与えてカラカラになった。
僕は、愛を与える、平和な木である。

とうとう寒い冬が訪れて、
宙と大地と身を寄せあって眠っていたある日、
大きな音が聞こえて目を覚ました。

見ると、僕の体に穴があいている。
足元には、小さく震える人間。
そういえば、ずっと前に僕をここに連れてきてくれたのも人間だった。

僕の体は、絶えず飛ぶ何かで穴だらけになった。
もともとカラカラだった僕は、今にも倒れそう。
でも、足元の人間に穴があかないように、
僕は必死に、しゃんと立った。
足元で震える人間を守らなければいけなかった。

しばらくするとその人は、
僕のかげから身をだして、大きな音を鳴らした。
持っていた黒い筒から、白いモヤが出る。
周りを見渡すと、たくさんの人間が黒い筒を持って見つめあっている。

緊張した背筋の力が抜けた。
なんだか痛そうだけれど、きっとこれは人間にしか分からない、楽しい遊びだったのだ。
僕の体も、このために崩れてしまったのならしかたがない。
足元にいた人間はきっと、肩を震わせて笑っていたのだ。


この星は、愛に包まれた、平和なところである。
僕は、そんな愛の星で暮らす、平和な木である。
そして人間は、そんな愛の星で暮らす、平和な動物である。

僕の見た平和の色は、白い大地に横たわる赤だった。




「ドングリ大戦争」という題名で短編を書く課題。
いや無理だろ。
書いたはいいものの、
結局、題名は変えてしまいました。

題名の与える印象って大きいですよね。
私は「ドングリ大戦争」と聞いて、ポップで、クスッと笑えるようなエンタメ小説、みたいイメージを持ちました。
書き上がったのは、小説というよりほぼ詩だし、ポップの欠片もないけれど。

ちなみにドングリの花言葉は、「永遠の愛」だそうです。


横書きってなんだか気に食わない。
縦書きが好きです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?