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【ショート】大きくなったら

 その鳥は、空を飛ぶことができない。
 代わりに、水の中を翼を使って自由に泳ぐことができるらしい。
 アルファベットのPのところに描かれた絵によると、色合いはゴジュウカラに似ているようで、背中の部分がもっと濃い色をしているみたいだ。(絵がモノクロなので、どんな色なのかはわからない)
 二本足で歩くのは他の鳥と同じだが、足が短く、背筋を伸ばして歩くらしい。ずんぐりとした姿をしていた。
 ああ、昔は人鳥(じんちょう)と呼んでいたっけな。歩く姿がひとみたいだからさ。
 おじいちゃんは眼鏡を押し上げながらぼくの方を向いた。なぜだか少し笑っていた。
 ぼくは空を飛べないけど、泳ぐのも得意じゃない。その鳥はなんだかずるいね。
 そうかな。人鳥のほかに、企鵝(きが)という呼び名もあってね。つま先立ちで歩くように、よちよちとしか歩けないんだよ。きみはその脚で、自由に駆け回ることができるじゃないか。
 確かに、飛べなくても、泳げなくても、今のところ困ることはない。でも、走ることができないと少し困る。それに、練習次第では、泳ぎが上手くなることもあるかもしれなかった。(たとえがんばっても、空を飛べることはないだろうけど)
 どこで捕まえられるのかな。どのくらいの大きさなんだろう。文鳥を飼うような鳥かごで足りるのかな。
 おじいちゃんはますます目を細めて、ぼくに言う。
 捕まえるつもりかい。それならまずは、図鑑でどんな鳥か調べてみるといい。今すぐに飼うのは難しいかもしれないよ。
 うちには鳥の図鑑がないので、図書館に行って調べることにする。
 おじいちゃんが言うのだから、飼うのが難しい鳥なんだろう。エサが変わっているのかもしれないし、世話が難しいのかもしれない。
 今すぐ飼うのは無理だとしても、調べて準備をすることはできる。突然、憑りつかれたようにぼくはその鳥のことが気になって仕方がなくなってしまった。
 もう、ほぼ心に決めている。
 大きくなったらぼくは、ペンギンを飼いたい。

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