見出し画像

【エッセイ】うさぎ

 秋分を幾日か過ぎた夕方に、うさぎが現れた。
 姉から写真とともに「なんかいる」と送られてきた。
 最初は隣の家の馬屋のあたりをうろうろしていたが、そのあとうちのほうに来て、しばらく家のまわりを見てまわり、知らないうちにいなくなったそうだ。山に帰ったらしい。
 毛色は白に少し茶が混じりはじめ、まだらだった。耳は見慣れたペットのうさぎより短い。立ち歩くと、足の長さに違和感を感じるほどだ。
 動画も送られてきた。
 すたすたと歩き、ときどき辺りの臭いを嗅ぐように顔を上げる。
 雪にうさぎの足跡がついているのは見たことがあったが、昼間に間近で見たのは初めてだった。
 まさか卵を運んできたのではあるまいな、と仏教徒が意味もわからず考える。

 さらに4枚の写真が送られてきた。次々に見る。
 うさぎ、うさぎ、うさぎ、ねこ。
 いや、ねこやん!
 そう返すと、姉の満足そうな顔が浮かぶようだった。

より素敵な文章となるよう、これからも長く書いていきたいです。ぜひサポートをお願いいたします。