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『流浪の月』を読んでみた

こんにちは!読んでいただきありがとうございます。
『流浪の月』(凪良ゆう著)を読んだので、感想を書いていこうと思います。ネタバレはしません。

実は、前回の記事で感想を書いた『滅びの前のシャングリラ』よりも前に、読み終わっていたのですが、感想を書かないまま時間がたってしまったので、もう一度読み直しました!

初めて読んだときは、ドキドキが止まらなくて大変でした!今回は、結末を知っていたので、1回目ほどのドキドキはなかったのですが、やはり、ついつい続きを読みたくなってしまう作品であることには変わりなかったです!

小説について

主人公の家内更紗が、過去(当時9歳)に自分を誘拐した当時19歳の大学生だった男・佐伯文に15年ぶりに再会するお話です。

更紗と文は、世間的には“誘拐事件の被害者と加害者”と言い表すべき関係なのですが、その誘拐事件までの成り行きや、誘拐後に過ごした2人だけの時間のなかで、お互いのつながりが生まれ、世間の基準では言い表せない関係性を築いていくお話です。

読んだ後の感想

主人公・更紗が様々な人と出会う中で、社会の暗黙のルールや常識(だと思い込んでいること)に対し、常に問いかけを繰り返しながら物語が進んでいきます。

ほとんどの更紗の問いについて、本書内で明確な答えは出されておらず、読後もその問いを自分の頭で繰り返し問いたくなるような内容でした。

事件後に更紗と出会う人々が、善意で更紗へ情けをかけ続けるたびに、更紗は何度も苦悩することになります。

“自分が相手に対して行っていることは、相手にとって本当に支えになっているだろうか?”

“そもそも、私はしっかりと真実をとらえているのだろうか”

“自分視点からみた「事実」と「真実」との区別はできているだろうか”

“根拠のない社会の暗黙のルールやある一面的な正義感で他人を苦しめていないだろうか”

という問いを、自分自身へも何度も問いかけたくなりました。

この物語は、大部分は更紗の視点で書かれていますが、更紗と関係を持つ他の登場人物も言葉では表しきれない葛藤を持っています。たった一人の葛藤についてだけではなく、他の人が抱える心の闇や葛藤も感じ取れるからこそ、読み終わった後に誰か特定の人を、ある一面的な正義感を理由に、安易な気持ちで人をジャッジしてはいけないんだなあと感じることができました。

物語中では、更紗自身が外に訴えたい苦しみを抱えつつも、相手にどう影響するかということを常に考え迷い続けている場面もあり、そんな姿からも“一面的な正義感の押し付けをやめるべき”ということを考えました。

この物語、もし更紗の苦労や葛藤についてだけが書かれているものであったら、私はおそらく更紗視点でしか物事をとらえることができず、更紗が作中で何度も問うているような問いを、自分の中に持つことができなかっただろうなと思います。

更紗と文の関係性は2人だけが共有している、特異で、かつ、特別なもの。その“真実”を世間は受け入れようとしませんでした。先ほども書いた通り、世間が理解している“事実”と2人だけが知っている“真実”のギャップで2人は苦しんできました。

しかしながら、物語内ではあまり強調されていませんが、更紗が知っている“事実”と文だけが知っている“真実”にもギャップがあることを、更紗は、物語の終盤になってようやく知るのです。更紗の想像の域を超えた文の苦しみを、同じく苦しみの渦中にいる更紗はなかなか知ることができませんでした。

この物語から、私が“事実”だと認識していることは、いったいどれだけの確率で“真実”なのだろうかと考えてしまいました。案外、“事実”と“真実”の区別がついていないことって、よくあるのかもなとも思ってしまいます。

その後、更紗と文は幸せになったのかは読んだ人の解釈で変わりそうです。この物語の終わりは、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかは正直わかりませんでした。著者から“この状況、あなたはどう考える?”と問いかけられたような感じでした。

登場人物全員が幸せになるわけではなく、心に傷を負ったままになってしまう人もいます。更紗と文は、2人だけが知っている“真実”を信じることを選んだのですが、そのことで悲しい思いをした人がいるのも事実です。

“私のもつ正義感がすべての人を幸せにできるわけではないのかも”

という問いを、常に自分のなかで持ち続け、安易な気持ちで他正義感を振りかざさないようにしたいと思いました。

この小説は、“一方的な正義感の押し付けをするなんでダメなんだよ!”という他人に対する怒りを呼び起こすことなく、“自分はちゃんと他人を理解できているかな?”と自分自身へ問いかけさせるような仕組みがあるのかな?と思えるような感じでした。

穏やかでわかりやすい文面なのに訴えたいことの本質がぶれることがないのがすごいなと感じました。

どんな人におすすめ?

日常生活のなかで変化や成長を感じられなくなっている人に読んでほしいです。

善と悪、事実と真実、愛と憎しみ。2つの概念の境目はいったいどこなのか、真剣に考えることになります。

前向きで明るい話ではありませんが、私は自分を、他人を、社会をどうとらえていったらいいだろうということを、問いかけ続けることになるでしょう。

訴えかけるメッセージ性の強い作品でした!

おわりに

物語中ででてきた、文の朝食を作りました!食欲ではなく、創作意欲が沸いてしまったので!!

サラダ・ハムエッグ・トースト・コーヒー

物語は食事に関する場面も多く、食事や食レポ好きの私にとって、この小説の楽しみポイントでした!!

小説の感想を記事にするのは今回で2回目だけど、前回以上に感想を言葉にするのが難しく感じた、、、。

自分の感性と表現力のリミッターを、またもや作品が超えてしまったのでした。

読んでいただきありがとうございます!

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