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正欲(朝井リョウ|新潮文庫)を読んだ感想とかの話

僕はこの本を読んで良かったと思いました。
文庫本で税込935円、僕は自販機で時々ジュースを買ってしまうのですが、これを7回ほど我慢したら買える金額ですね。
その我慢を上回る価値がありました。

良かったと思える点をみなさんにも共有したい!という思いでこの記事を書きます。よろしくお願いします。

この小説はこんな人におすすめしたい

・多様性、ダイバーシティといった言葉に共感を覚える人。
・新しい価値観に触れるのが好きな人、触れたいと思っている人。

ちなみに、僕の購入理由は、表紙にカモが描かれていたからです。
僕はカモが好きなので何となく手に取ってみたという、ほとんど偶然といってもいいようなきっかけです。
しかし小説のなかにカモは登場しませんでした。

読み終えた後の変化

自身の価値観のあり方、持ち方について考えるきっかけをもらいました。

例えば、この小説には多様性という言葉が頻繁に登場します。
多様性を尊重しよう!という意見を聞くと、多くの人はポジティブに捉えるのではないでしょうか。しかしその一方で、もしかしたらそれ故に、中にはこの言葉によって傷つけられたりネガティブな気持ちにされる人も存在するのです。
物語は前者と後者それぞれの心情・内情にスポットをあてつつ進行します。

僕はこれまで、多様性を尊重するためにはまず寛容であらねばならないと考えていました。言い換えるなら、あらゆる存在をありのままに「認識」できる心の余地を常に用意しておくことが重要である。ということです。
ただし、この「認識」するというプロセスには終わりがありません。そのことをこの小説で知りました。

どういうことかというと、自分の価値観は自分で知覚できますが、他者の価値観の場合にはそうはいきません。なので他者の価値観を認識しようと思ったら、知識を取り入れたり、過去の経験から類推するなどする必要があります。
しかしながら、どんなに知識を取り込んでも、どんなに類推、想像を巡らせても、結局のところ、それは理解したいと思っている価値観そのものではありません。なぜなら、知識も類推も自分の価値観というフィルタを避けて通れないからです。

僕なりの結論としては、理解したい価値観そのものを得ることができないということを大前提としつつ、(概念的な知識を取り入れるだけではなく)目の前の相手を見据えて対話することがコミュニケーションにおける重要ポイントなんだろうな。ということです。
例えば、誰かのことを理解したい!と感じたら、安易に「その気持ちわかるよー」なんて言わず、「こういう気持ちなのかな?」くらいの控え目なスタンスで確認作業を繰り返すのがいいのかなと思いました。(例えとしてはパンチが弱いかな??)

印象に残った言葉(自分用)

どんな小説だったかな?と思い出すときのキーフレーズとして

多様性とは、都合よく使える美しい言葉ではない。自分の想像力の限界を突き付けられる言葉のはずだ。

出典元:正欲|朝井リョウ|新潮文庫

マジョリティというのは何かしら信念のある集団ではないのだと感じる。マジョリティ側に生まれ落ちたゆえ自分自身と向き合う機会は少なく、ただ自分がマジョリティであるということが唯一のアイデンティティとなる。そう考えると、特に信念がない人ほど”自分が正しいと思う形に他人を正そうとする行為”に行き着くというのは、むしろ自然の摂理なのかもしれない。

出典元:正欲|朝井リョウ|新潮文庫

信念がないマジョリティについての話


ちなみにの話(帯のこと)

帯に”読む前の自分には戻れない。”とあるけど、そもそも読む前の自分に戻れる小説なんてないだろ。などと読む前は軽く考えてました。
でも読んだ後に振り返ってみれば、いい得て妙ですなぁ。と思いました。
こういうキャッチフレーズを考えられるっていいよね。

今回も散らかった頭の中を整理しきれてない感が残りますが、、。
ここまで読んでいただきありがとうございました!

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