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国際協力や開発援助関係者が東日本大震災でできること 2011年8月 6日 (土)


後出しじゃんけんではありません。11年前の2011年3月17日の東日本大震災の5か月後にブログで書いた記事を転載します。

※写真と本文は直接関係ありません。

http://www.arukunakama.net/blog/cat23873567/index.html

国際協力や開発援助関係者が東日本大震災でできること<その1>


初出: JICAコミュニティ&開発民俗学コミュ @mixi 2011年8月 6日 (土)

元(国際)開発コンサルタント会社勤務のしばやん@開発民俗学です。

いままで私もずっと海外の開発援助の現場で働いてきましたが、正直、今回の東日本大震災を見ると、実は海外も国内もないなということを切々と感じています。

実際に、開発民俗学コミュや開発コンサルタントの仲間で現地入りしている人が数名いることも知っています。

このトビでは、そのような実体験や、国際協力や開発援助に関心のあるかたならではの智恵を出しあって現地で働く外部者(政府関係者、自衛隊、ボランティアなど地元民以外全て)や被災地の人たちを励ましてみませんか。

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自分のコミュ(開発民俗学-地域共生の技法-)の仲間が被災地でプロジェクトをやるみたいで、ワークショップについてのつぶやきがあったことに触発されて、こんな文章を書いてみました。

◆ 被災地におけるワークショップのあり方について<東北大震災がらみ>

http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=64187697&comm_id=2498370

自分自身、全然被災地には足を踏み入れていませんが、開発途上国での現地調査の経験からこんな調査デザインをしてみました。

以下、引用です。

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仲間のつぶやき(2011年8月5日):

「地元学などの資源マップやワークショップ時のマインドマップについてのコツやポイントを知ってたら、教えてください。来週末の被災地域におけるワークショップに活かしたいと思います。」

これを受けて:

実はここら辺についても、開発民俗学への途(第2部)で、そのうち?に取り扱う予定だったのですが、そもそも論というか導入編で手間取ってしまったので、ここに別のトビとして扱います。

ポイントのみを列記します。

1.事前準備で確認しておくこと。

・現地でどれだけ時間が割けるのか。

・どのようなステークホルダーを集めることができるのか。

・ワークショップの場所はどこで?

・どのような道具を使うことができるのか。

・対象地域の範囲は?

・カウンターパート(現地での受け入れ先)の立場と人数

2.モデルケース

今回、あまり現地に対して、調査者・ファシリテーターなどいずれにせよ‘外部者’が土地勘や人脈がない場合を想定します。

現地調査期間を2日間とした場合のワークショップの組み方です。

<1日目>

午前中: 

・カウンターパートとの打合せ 

事務所で1時間: 地図を元に調査地の概要とワークショップの目的などを確認する。

・現地踏査 

(このケーススタディでは、対象が市で、町村が市街地を中心に5地区とする)

カウンターパートとともに5地区すべてを外部者自身が見て回る。今回の現状に即して言えば、被害状況よりむしろ現場で、どのようなアクターがいてどのような力関係で作業しているかに注目すること。

※被災地には、多くの外部者(自衛隊、ボランティアなど)が入り込んでいる。誰が実際の現地の住民なのか、現地の住民がいたら、彼らに自衛隊やボランティアなど外部者の活動についてのコメントをもらうようにしたい。

現場での活動の内容と、外部者の言動が、押し付けで高圧的なものになっていないかに気をつける。

・ 地区ごとのワークショップ(ワークショップA)

事前にカウンターパートに5地区全ての地元有力者(町内会長など)に地区毎の踏査~ワークショップがあることを通知しておいてもらう。できれば、地元の有力者ら数名には現地踏査にも同行してもらう。

この地区ごとのワークショップへの参加者は、原則的には、地元有力者に人選してもらうが、下記のようなステークホルダーが含まれることが望ましい。

地元民: 地元有力者グループ(町内会長、議員、郵便局長、警察) 

      商業従事者(小売のみならず卸売、流通業者も含むこと)

     農業、漁業従事者

     シニア(リタイア組み)

     近所のおばちゃん

     若い専業主婦(幼児づれ)

     若者(高校生、大学生など)

     子供(中学生、小学生など)

外部者: 市町村の役職

     NGO団体(※)

     自衛隊(※)

     ※実際に、現地で活動している人が望ましいが、広域活動NGOや自衛隊の一つ上のグループ長がいてもよい。

ファシリテーター: 調査者およびカウンターパート

とりあえずここまで。

ちょっと規模が大きくなりすぎましたので、後で見直します。

(続く)

ワークショップのデザインについて 国際協力や開発援助関係者が東日本大震災でできること<その2>

・アクティビティ(ワークショップA)

ワークショップAでは、地区ごとの問題点・課題と、将来への展望をあげてもらうことを目的として2つのアクティビティを行う。

A-1 全員参加による地図とスケジュール表つくり (約1時間)

作業を行うのは、多くても7~8名くらいが限度なので、出席者が多い場合は、地区を2つか3つにわけて、それぞれ現地に詳しいメンバーを中心にグループで、下記の資料をまとめさせる。調査者及びカウンターパートは、このグループワークには直接参加せず、タイムキーパーとグループの作業状況をみながら、必要に応じて詳細の説明や資料への加筆を求めたり、個別インタヴューを行う。

1.資源マップ (リソースマップという)

A1かB1の模造紙を準備する。地区のなかで絵心のある人に基本はフリーハンドで地区の主要施設(道路、公共施設、ランドマークなど)を書いてもらった上で、以下の作業を行う。

・被害が甚大なところの網掛け (次に下記のランク分けをする)

A)実施中プロジェクト

網掛け部分に直接、事業名、内容、実施主体、プロジェクト期間 (始まりと終了予定を押さえること)

B)実施してないところ

 網掛け部分でまだ事業が実施されていないところについて、下記の仕分けと優先順位をつける。

B-1 すでにプロジェクトの計画があるもの

 とりあえずわかっている範囲の内容を上記にならって書き込む。

B-2 新規のプロジェクト

 AとB-1以外で必要なプロジェクトを地図上に落とし込む。

2.スケジュール表

2-1 営農カレンダー

1年間の営農・漁業についてのシーズンカレンダーを作る。特に第一次産業の復興にあたっては、現実の作付や漁業についての開始時期を押さえることが必須である。

2-2 スケジュール表

今後、数年にわたる上記1.資源マップで抽出したプロジェクト(A:実施中、B-1.計画中)の実施時期を落としこむ。

ここまでで、現地の現状の把握を行う。

A-2 全員ワークショップ (約1時間)

A-1で作成した資源マップとスケジュール表(2種)を元にプレゼンテーションと全体討議を行う。アウトプットは、A-1と同じく模造紙に直接、書き込みながら参加者全員の面前で取りまとめていくこと。

1.プレゼンテーション (20~30分)

A-1 で準備した1.資源マップと2.スケジュール表について、グループごとに発表をしてもらう。1グループのプレゼンテーションは5~10分を目処。事実確認の質問のみにとどめ、次の全体討議の時間を確保する。

2.全体討議 (40~30分)

1で行った各グループ発表内容と全体についての討議を行う。討議内容には、最低限、下記の内容が含まれることが望ましい。

a. 実施中のプロジェクトについての問題点と課題の抽出

b. 実施していないところ(B-1.計画があるところ、B-2.計画のないところ)における新規プロジェクトの優先順位(※)と課題の抽出  ※基本的に計画があるところについてもゼロベースで見直すこと。

c. 全体を通した実施体制の見直し。

・実施中のプロジェクトからの振り返りを具体的にしてもらうこと。

・特に新規プロジェクトについては、実施主体と予算の確保、スケジュールについてできる限り具体的にスケジュールに落とし込む。

出来上がりのアウトプットとしては、下記のものが考えられる。

1)実施中のプロジェクト毎の問題点と課題、

2)新規プロジェクトの概要一覧、

3)全体のスケジュール表(実施中、新規を含む)、

4)実施体制の見直し内容(レッスンラーント、組織図など)

(続く)

ワークショップデザイン(続き) 国際協力や開発援助関係者が東日本大震災でできること<その3>

ここまで書いてきて、これだけの内容で盛りだくさんだとわかりましたので、現地踏査と、全体ワークショップは下記のように分けることにしましょう。

・地区ごとのワークショップ(ワークショップA)

1.ステークホルダー (同前)

2.ワークショップ作業内容 (上記のA-1 全員参加による地図とスケジュール表づくりのみ)

3.アウトプット

3.1 ワークショップ結果(A-1で作った地図とスケジュール表)

3.2 全体ワークショップ(A-2)への参加者の決定

ここまでの作業を、5箇所全てで行います。たぶんこれだけで、1.5~2時間かかりますので、5箇所回ったら、1日目で3箇所、2日目で2箇所が限度でしょう。またはファシリテーショングループを2つに分けて、1日目にそれぞれ、3箇所、2箇所でワークショップを行い5箇所のデータを1日目中に集めておくのも手です。

<2日目>

午前:

地区毎のワークショップの残りと、ファシリテーショングループメンバー内での調整ミーティング

午後:

・全体ワークショップ (ワークショップA-2) (約2~3時間)

5地区から選出されたメンバーとファシリテーショングループでワークショップを行います。内容は、先にA-2で述べたとおりです。

このワークショップは午前11時頃から昼食をはさんで行い2時か3時に終わるようにします。この場で、一旦、地元の方には帰っていただきます。

なお、ワークショップで作った模造紙は、作業用に一旦借りる形にして、後で必ず地元の人に返却するようにしてください。

・ラップアップミーティング (外部者のみ) (1時間)

ファシリテーショングループと、外部者のみでワークショップ結果について話し合い、今後の援助計画について、大体のコンセンサスを得て、この場で決められないことについて、それぞれ持ち帰ってもらうように手配します。

(続く)

全体を通じての注意点 国際協力や開発援助関係者が東日本大震災でできること<その4>

3.全体を通じての注意点

まず、現地がかなり疲労していることに配慮しなければなりません。そのためにやるべきことを列挙します。

<現地前にやっておくこと>

・できるだけ事前に現地情報を集める。

日々、現場は動いています。しかしながら都市や町ごとの地誌、地理や産業情報などは基本的に大きくは変わらないし、逆に変わり果ててしまった現状をみても想像できない‘かつてあった’土地情報を前もって調べておくことは、現地でワークショップを行うのにヒントとなることがあります。

・すでに活動の外部者ネットワークにコンタクトする。

当然、現地の市町村や現地のキーインフォーマントを捕まえることは必要ですが、彼らはすでに動いているプロジェクトで正直、手一杯です。

つまり、彼らとすでに協業を始めている外部者のネットワークの仲間にいれてもらうことを考えます。

彼らは現地駐在員とは別に東京など被災地の外部に基地をもっている場合が多いので、できるだけ被災地から遠い、また外部者に近いところ、たとえば東京内部で現地をよく知ったインフォーマントを捕まえて、外部者から見た現状分析を聴いてみましょう。

いろいろなヒントがあると思います。

あと、外部者から攻めることのもう一つのメリットは、現地踏査やワークショップのダブりを事前に防ぐ目的があります。つまり自分のデザインしたワークショップなりがすでに試みられていたとしたら、現地の人から何をしにきたといわれかねません。

大体、人の考えることは似通っていますので、今まで試みられてきたことをなるべくできる範囲で、振り返っておく、そしてロールプレインしておくことが必要です。

<現地に入ってから気をつけること>

・まずは自分の体調管理です。見知らぬ土地に乗り込むこととは、物理的な体力的な疲れとは別に緊張感からかなりとストレスを体は感じています。

決して、無理をしないこと。

・計画は時間的な余裕をもって、ワークショップでは調査項目を欲張らずに、自分の都合だけでワークショップや調査を進めないこと。これは、特に被災地支援では絶対に守るべき鉄則です。

ふつうの平穏時の農村調査でも人を動員してワークショップをするのは結構、根回しやら準備やら大変なのに、みな現場にかかりきりの被災地では絶対に無理に動員しないこと。今回、ワークショップ案を示しましたが、とても思うようなステークホルダーは、一度の集まりません。その場合は、潔く調査方法を変えることを考えるべきです。

たとえば、自分が聞きたいステークホルダーのグループごとにフォーカスグループインタヴューを行います。それぞれ作業中のグループの元に自ら足を運んで、彼らの作業現場で、少しだけ時間をとってもらい(目安として20~30分以内)、手の好いていそうな個人からそれぞれ話を聞きます。

<続く>

ワークショップ時に気をつけること 国際協力や開発援助関係者が東日本大震災でできること<その5 完結>

<ワークショップ時に気をつけること>

・相手を待たせない、予定時間を絶対にオーバーさせない、できれば予定より早く切り上げることを考えます。

・ワークショップの時間は、約90分を目安に計画を立て、実際に作業を進めます。延長しても最大2時間が限度でしょう。そして、参加者に疲れが見えたら、潔くワークの途中でも切り上げる勇気が必要です。聞き取れなかった点、現地の人が言い足りなかった点については、きっと後で個別に話しにきたりとか補う方法がいくらでもあります。

・参加者に、かならず‘満足感’というお土産を持たせること。これは物理的なモノではなく、「参加してよかった」という‘感動’と‘気づき’です。ワークショップで作成した資源マップやスケジュール表の模造紙は、調査の取りまとめのために一時借りることはあっても最終的にはグループに返却するようにしてください。

このような協同して作った‘モノ’は、参加したことの思い出であると共に、後で振り返ったときに、そのワークショップでの‘気づき’を忘れないためにも必要なものとなります。

いずれにせよ、基本は、あまり外部者がでしゃばらないこと、ワークショップの際も、裏方に回ってグループワークの作業自体を現場のリーダー格となる人たちにやってもらってください。それは彼らの経験にもなりますし、外部者にとっては、全く別の観点からの意味があります。自分がでしゃばらないことによって、外部者には、作業を外から見て必要に応じてグループワークに参加したり、個別インタヴューをしたりする余裕と時間が生まれます。実際、私はこのやり方で、かなり効率的に情報収集をすることができました。

あと、あまり過度の期待は持たないことですね。これは自分自身にも、相手にとっても期待値が大きすぎるとがっかり感が大きくなりますので、あまり身構えたりがんばる感を出さずに、さりげなくなにげにワークショップを運営しましょう。

とにかく参加者がグループワークを通じて、彼ら自身の力を感じて、グループダイナミクスが彼ら自身の言動の中から生まれてくるようにすること。

外部者がでしゃばって、ハッパをかける問題ではありません。一番、切実なのはなによりも彼ら自身なのですから。

あと調査結果の現地へのフィードバックを忘れないこと。報告書、写真などできるだけ、早く現地の人に手渡すようにしましょう。

ということで、とりあえず気のついた点をまとめてみました。

まあ、いろいろ漏れがあるとは思いますが、現場をみて適当?にアレンジして使ってみてください。

ではでは^^?

この項 了

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