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サイコバブルなプロポーズ


初めて自殺を企てた、2016年の秋。

希死念慮というものは、大した理由がなくともやってくることを、私はこの年に初めて学びました。

当時の私は精神を病みつつも、少数とはいえ友人もいましたし、お付き合いしている彼もいました。

超絶時短ですがアルバイトもしていたし、母と二人で住む家、要は帰る場所もありました。

過去ブログを掘り返すと、


毎晩切らなきゃ眠れない、子供を気取る僕の心に革命を!!!


とか書いてあるので、まぁまぁに頭の方は狂い咲いていましたが、それを加味しても、環境的にはとても恵まれた状態だったと思います。

なのに希死念慮さんときたら秋の始まり頃に私のもとへ意気揚々と現れて、挨拶もそこそこに私の心を黒い布で包み込み、結び目を鉄のワイヤーできつくきつく締め上げていきました。

希死念慮さんの威力って言ったら凄いのなんの。

締め上げられたワイヤーを解くことは出来ず、何をしていてもしんどい毎日になり、しんどい毎日は辛い毎日になり、辛い毎日は死にたい毎日になり、私は希死念慮さんとの出会いからたった一か月で、立派な自殺志願者に仕上がりました。


そしていざ死のうと決めた時の解放感。

夜空に星として吸い込まれ、見たこともない広い宇宙の中を突き抜けて塵になるような感覚でいっぱいになりました。


決行日には身辺整理として様々なものを処分しまくり、今日で辛い毎日が終わると思うと嬉しくて嬉しくて、「死ぬ希望ってたまんねぇな」とか思いながら、ドーパミンだとかアドレナリンだとかをドバドバと溢れ出しながら作業に勤しみました。

が、

その解放感も束の間、この自殺計画は当時お付き合いをしていた彼氏さんの手によって呆気なく頓挫し、結果的にメンヘラ奥義「死ぬ死ぬ詐欺」というとてつもなく有り触れたダサい結末を迎えました。


その時、彼氏さんが涙しながら私に言った言葉は、「終わる日は同じ日に、一緒にして」でした。


振り返ってみると、こう言ってくれる人が傍にいるのは、きっと幸せなことだと思います。

でも正直、当時の私はこの言葉の意味を図りかねていました。

だってそこまで私という人間に執着してくれる意味も分からないし、私にはその言葉に見合うだけの価値もない。


私が常日頃心掛けていたものは、


自傷行為を繰り返しつつも自殺願望だけは一切なく!


出来る限り自分の病みは自己完結!


安全第一!健康第一!


他人に迷惑かけずに病もう!


というものだったのに、今回の一件では完全過失の巻き込み事故で、一方的に彼氏さんの心に猛スピードで追突し、重傷を負わせたようなものです。

自己肯定感は大暴落し、彼氏さんからの有難い言葉も真正面から受け止められず、かと言って一度挫かれた分、衝動性は意気消沈。

締め上げられていたワイヤーはゆっるゆるになったものの、心の奥底ではまだ希死念慮さん自家製のワイヤーが絡まっているような、燻る気持ちで2016年を生き延びました。


そして年が明け、2017年。


この年は初っ端から腐っていました。

記憶には殆どないですが、腐敗しきっていました。

仕事に行って、休みの日があって、友人関係もそこそこに、彼氏さんとは月に1度のペースで会って、辛くはないけれどそのどれもこれもが単調で。


2017年も半分が過ぎる頃には、自然の業火に焼かれたいという訳の分からない思考に陥り、彼氏さんに延々と「夏になったら海に連れて行ってほしい」と言っていました。


比較的都会に住んでいたからなのか、大自然有り余る場所へ身を投じて、水の上をプカプカと浮きながら、空を眺めて自然に殺されるのを待つように、只ボーっとしたくなったのです。


理屈は簡単で、非日常を過ごすことで、少しはリフレッシュになるんじゃないかと。

そうすれば単調な日常にも少しの彩りぐらいは返ってくるんじゃないかと、只それだけです。

私に金銭的余裕があれば、きっとラスベガスとかに行っていたのでしょうが、如何せんメンヘラ半ニートみたいなものなのでね!お手軽にSeaね!


でもそんな約束をした夏を迎える前に、私はまたしても限界を感じ、昨年に彼氏さんの心に向かって猛スピードで追突したばかりにも拘らず、今度は更に235キロ(推定)と速度を上げて真正面から轢き殺しにかかりました。


「彼氏さん、今後の話をしよう」


月に一度の逢瀬の日、私はそう切り出した後、2つの選択肢を提示しました。


「結婚するか、別れるか」


彼氏さんは戸惑い「ちょっと待って、急にどうした」と。


でもこの時の私は精魂尽き果てていて、2016年は何とか乗り越えたものの、繰り返される単調な生活に楽しみを見いだすことが出来ず、それらがこれからも続くのであれば人生列車からもう降りたいと。

だってこの時の私の唯一の楽しみは、仕事帰りのバスの中で、夜の舗道をガラス越しに眺めながら音を回すことくらいだったわけで。

それはとてもバカバカしくて、笑えたら良かったけれど、笑うのは希死念慮さんだけなわけでして。


でももし彼氏さんと今までとは全く違う新しい生活が始まるのだとしたら…

何か変化が生まれるのだとしたら…


『というわけで、私はあなたと第二の人生プランに移りたいのです』


「えーっと、もし俺が結婚しなくて別れたら、あるぐはその後どうするの?」


『自然淘汰されるだけです』


「ちょっと待って、それ君、死ぬよね?」


『ご心配なく。別れた以上は他人になります故、あなたに罪はございません』


「いやいやいやいや」


『じゃあ結婚しますか?』


「いや、急過ぎて…考える時間はもらえる?」


『考えるくらいならやめましょう』


「え、待って、え、別れるの?」


『はい。おつかれさまでした』


「え、じゃあもう今日で終わり?もうあるぐとは会えないの?」


『うん。でも海には連れてって』


「はい?」



ゴーイングマイウェイ‼



彼氏さんは真面目な人です。

とても仕事熱心で、朝から晩まで労働基準法が見えていないかのように働き、そんな激務の中でも毎月時間を作っては泊まり掛けで会いに来てくれ、会えない日は朝、昼、晩とマメに連絡という名の生存確認をしてくれ、私の病気のことも真剣に受け止めてくれていました。

私と結婚をしたとして、もし自分自身に何かが遭って働けなくなった時や、それ以上のことが遭った時、隣にいるあるぐはどうなるのか?をきちんと考えてくれる人でした。

そしてこの時の彼氏さんは社内の様々なプロジェクトの進行中で、常に時間に追われており、毎日が家と会社の往復生活。

私と会っている最中でもよく会社から電話が掛かってくる始末で、私との将来を視野に入れてはくれつつも、生真面目故に余裕がない状況でした。


そんな彼氏さんの気持ちを慮るどころか、昨年は自殺騒ぎで心に負担を与え、挙句の果てに結婚しないなら死にますと心を轢き殺すのだから、


ゴーイングマイウェイ‼



彼氏さんがストレスで死ぬかと思った。


結局、その日の話し合いは深夜にまで及び、議論に議論を重ね、途中お互いが涙する場面もありつつも、昨年に彼氏さんが言った「終わる日は同じ日に、一緒にして」という言葉は本心だった様で、結果賛成2票、反対0票で、


結婚が決まりました。



さてさて、ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございます。


この文章だけを読んでいると、私は只変化が欲しくて、刺激が欲しくて、結婚を口にしたように読み取れるかと思いますが、これでも大前提として彼氏さんへの愛情というものを持っていることだけは分かって頂けると幸いです。

気持ちのない人との共同生活なんて只の地獄、それなら人生ログアウト、そんな人間です、私。


しかしまぁ彼氏さんみたいな真面目な人が、よくこんな常識の範囲外で生きてきたような私と結婚を決めたなぁとは思います。

後悔しているんじゃないかなぁと思う日もあります。しかも割と。


そもそも逆プロポーズどころか、恐喝に近いんで。


でも私がこの世からいなくなることに、心から泣いてくれた人なので、いなくなる時は一緒にと涙してくれた人なので、その涙に見合った価値を、これから少しずつでも自分の中に見出していけたらいいなと思うのでした。


次回:彼氏さんのご両親にご挨拶に行くの巻


興味がある方はぜひ、読みにきてあげて下さい。

ではまた。







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