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暗い藍色

藍色は一日の終りの色だから
「今日はもう何もしなくていいんだ」という
安堵感に包まれる。私にとっては幼い頃から
そして今もなお好きな赦しの色だった。

時間に追われ、トラブルに追われ、
目まぐるしく急かされ心休まらない一日が
ようやく一段落し、大人も子供も全員寝静まり
好きな事ができて何事もなく眠ることが
許される時間。人生という罰の唯一の休み時間。

中学一年生に上がった頃、
そう思ってた矢先に睡眠中に叩き起こされ、
濡れ衣で真夜中に母に感情の捌け口として
滅多打ちにされて以来、眠る事すら下手になった。

何を拠り所に日々を過ごしていいのか
わからなくなった。ずっとどこの惑星の軌道にも
乗らずに当て所無く漂う宇宙ゴミのように。

誰を信じればいいのか、
何のために生きてるのかわからない。 

ウォークマンで大音量で好きな曲を聞いて
外界の情報全てをシャットアウトする事を覚えた。
無意識に現実逃避としてやっていたが、
解離した人間にはグラウンディングといって
「今」に注意を向け直すのにかなり
有効な方法らしいことを最近知った。

夜中は母の襲撃に怯える地獄の時間に変わった。
声を殺して息を潜めて布団の奥、
それも壁と本棚の間の親の腕の届きにくい
場所に隠れるようにして眠る。
大事なものも全部そこに隠して、
ホームレスがバックパックを抱くように眠る。
居ないふりをする。その間、少し眠れても
下の階から聞こえてくる電話口の相手との
口論の声で起きてしまう。
この頃から深刻な不眠が出ていた。

中学一年に上がって早々、授業中に
眠るようになった。唯一親が居ない学校という
家よりはマシな檻で惰眠を貪った。
異常と嘲られてもどうでもよかった。
マトモに頭が働かないからクラスメイトや
教師が言ってることも書いてることも
何も記憶に残しておけない。
テストで赤点を取るとまた
怒鳴られ殴られバカにされた。
バカになってしまったんだからしょうがない。
実際知能は低かった。短期記憶が滅法苦手だった。
情報の取捨選択が致命的にできなかった。
理不尽な罵詈雑言を浴び雑木林状態で
放置されたシナプスにはそれが限界だった。

未だに身勝手な怒りを剥き出しにして
乱暴にドアを蹴破る前兆の、階段を
壊れんばかりの勢いでドカドカと
駆け上がってくる足音が近づいてくる恐怖に
ふいに襲われる事がある。
抗不安剤の頓服を飲み、更に8種類11.5粒の
睡眠導入薬、睡眠薬、抗うつ、抗不安薬を飲む。

弟や妹にこれ以上被害が及ばないように、
人気のない山中にバラバラにした親を遺棄して、
凶暴な野犬や熊が襲って食い散らかしたように
見せかける、そういう夢を見る。
生まれてこなければよかったし、
殺しておけばよかったなという気持ちで起きる。

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