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動植綵絵だけじゃない!水墨画に見える、若冲の意外な一面

【アート書き散らし】
作品や画家のこと、展覧会の感想などをサクッとゆるっと語ります。


みんな大好き伊藤若冲。もはや日本を代表する絵師といっても過言ではありません。
特に鶏の絵をはじめとする『動植綵絵』シリーズは大人気ですよね。

『動植綵絵』の中の『芙蓉双鶏図』


若冲=動植綵絵!超絶技巧!と思われがち…ですがそれだけではありません。
意外にも、水墨画が面白いんです!

スーパー緻密な動植綵絵を剥製に例えるならば、水墨画はぬいぐるみといったところでしょうか。
水墨画だからこそ分かる、若冲の新たな一面を見ていきましょう。

①のびのびした筆さばき

最初にご紹介するのは、こちらの鶏の絵です。
動植綵絵をイメージしていると驚くかもしれません。

『鶏図』


この大胆な尾羽!!もはや絵というより書、走り書きのサインのようです。
動植綵絵では羽根の一本一本まで捉えていた若冲が、水墨画ではこのとおり。同じ作者とは思えないですよね。

代わってこちらは、なんだかゆるっとしています。

『象と鯨図屏風』右隻


四角い身体に楕円の耳、長〜い牙と鼻に半月型の目。図形を組み合わせてアレンジしたよう!(がんばれば絵描き歌にできそうですね。)
くるんと丸まった鼻先もキャラクターみたいで可愛らしいです。

若冲の水墨画はのびのびとしていて、こちらも肩肘張らずに鑑賞できます。
このリラックス感が動植綵絵にはない魅力です。

②墨を活かす天才

墨の濃淡やにじみの表現は、水墨画の見せどころです。

こちらの作品は墨の黒を上手く活かしています。

『鯰・双鶏図』一部


この墨がぽてっとした感じ。偶然できたシミのようなのに、しっかりと鯰(なまず)の形です。
平面的ですが、濃い黒のおかげか重量感があります。鯰がそこにいるかのようです。

墨が薄いところもいいんです。下の鶴の羽根を見てみてください。

『鶴図押絵貼屏風』一部


輪郭の部分だけが白く残されているのが分かります。これは「筋目描き」という技法です。
吸水性が良い紙の上に淡い墨同士を隣合わせに置くと、水がにじんで墨が浸透しない部分ができ、そこが境目となります。
この技法は若冲オリジナル。そんなことを思い付くのもすごいですし、芸が細かいですよね。

色は黒だけなのに、表現の幅は多彩です。

③型破りな構図

若冲の水墨画では、大胆な構図も楽しめます。

『鯉魚図』


上の絵では、鯉の身体の半分くらいが画面から飛び出していますね。鯉が画面の外から飛び上がってくるようで、躍動感たっぷりです。

こちらは逆に、画面をめいっぱい使っています。

『双鶴図・霊亀図』


なかなかインパクト大ですよね。鶴も亀も画面にギッチギッチに詰まっています。
鶴亀の絵はいっぱいありますが、ここまで大胆なのはなかなかお目にかかれません。
動植綵絵にはない、思い切った構図です。

水墨画だからこそ

水墨画って筆致が分かりやすいので、絵師が絵を描く工程を想像(妄想)するのも楽しいです。
たとえば先ほどの『鶏図』の尾羽などは、筆をシュッと勢いよく動かす若冲の様子が目に浮かぶようです。
この自由な筆致を見る限り、若冲自身も楽しくのびのびと制作していたのではないでしょうか。

そしてこんなに自由で落書きみたいなのに、フォルムは的確なのが若冲のすごいところです。デフォルメが激しくても、対象の特徴はしっかり捉えています。モノクロでシンプルな分、若冲のスケッチの才能がよく分かりますね。

地味だけどすごい、すごいけどほっこりする。若冲の水墨画ならではの魅力です。



若冲の表現は本当にバラエティ豊かです。動植綵絵、水墨画以外にも驚くべき絵が…!


動植綵絵もそうですが、日本画には細か〜い描写がたくさんあります!中でもクレイジーすぎるくらい緻密なものを特集しました。


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