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美術オタク歴10年以上。 初心者の方には分かりやすく、オタクの方には新しい視点から、アートの魅力を掘り下げます。

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    note公式さんの「今日の注目記事」に選んでいただいた記事をまとめました。

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あの絵をモノクロにしてみたら…線が楽しい名画たち

西洋画といえばカラフルな色彩を思い浮かべる人も多いでしょう。 でも、いい絵はモノクロにしても魅力的!色だけじゃない名画の魅力に迫ります。 動きが伝わる、踊るような線 絵をモノクロにすると、画家のデッサン力があからさまになります。 素人の私でも「すごいデッサン!」と思えるのが、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックです。 彼を一躍有名人にした作品です。誰もが一度は見たことあるのではないでしょうか。 これをモノクロにしてみると… 色がなくても伝わってくる、この躍動感!肉体

    • 自画像から見えてくる、ムンクの人生と心の内

      北欧を代表する画家ムンク。ムンクといえば『叫び』ですよね。 中央の耳を塞ぐ男はムンク自身だとも言われていますが、実はムンクはたくさんの自画像を残しています。 そこには意味ありげなモチーフが描かれてたり、これ見よがしなタイトルが付いていたり… このとき何があったんだろう、どんな気持ちでこれを描いたんだろう、この人はどんな人生を送ったんだろう、と思いを馳せてしまいます。 そんなムンクの自画像と、その裏にある人生の物語を追ってみましょう! 強烈な死の匂い画家になりたてのムン

      • 動植綵絵だけじゃない!水墨画に見える、若冲の意外な一面

        みんな大好き伊藤若冲。もはや日本を代表する絵師といっても過言ではありません。 特に鶏の絵をはじめとする『動植綵絵』シリーズは大人気ですよね。 若冲=動植綵絵!超絶技巧!と思われがち…ですがそれだけではありません。 意外にも、水墨画が面白いんです! スーパー緻密な動植綵絵を剥製に例えるならば、水墨画はぬいぐるみといったところでしょうか。 水墨画だからこそ分かる、若冲の新たな一面を見ていきましょう。 ①のびのびした筆さばき最初にご紹介するのは、こちらの鶏の絵です。 動植綵絵

        • 「マティス 自由なフォルム」 昨年のマティス展とは、また違う楽しさがありました!

          先日、国立新美術館の「マティス 自由なフォルム」に行ってきました。 マティス展といえば、昨年2023年にも上野の都美術館で開催していましたね。 もちろん昨年のも良かったのですが、今回はまた違ったかたちで楽しめました! ①連作を堪能できた前回のマティス展は油絵がたくさんありましたが、今回のメインは切り絵です。 マティスの切り絵には、全く同じフォルムの中で色や模様を少しずつ変えたものがいくつもあります。 それぞれのちょっとした違いを見比べることで、マティスの制作過程を追える

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          花を並べただけ、なのに!燕子花図屏風は何がそんなにすごいのか

          今年も根津美術館で、尾形光琳の『燕子花図屏風』が公開されています。 名作と名高い一枚ですが、言ってしまえば、燕子花をたくさん並べただけの絵。 一体、何がそんなにすごいのでしょうか。 それは、とにかく何もかもが大胆で思い切っているところです。 ①モチーフ選びが大胆 テーマは『伊勢物語』、主人公の在原業平が、八ツ橋に咲く燕子花を見て和歌を詠む場面です。でも主人公の在原業平はおろか、舞台の橋すら出てきません。 燕子花に物語を託しているのか、燕子花を描くために物語を利用したのか

          花を並べただけ、なのに!燕子花図屏風は何がそんなにすごいのか

          大胆で繊細で美しい!今も色褪せない琳派の魅力

          今年もアレが始まりました。根津美術館での『燕子花図屏風』の展示です。 誰もが一度は見たことがあると思います。江戸時代の画家、尾形光琳の傑作です。 尾形光琳といえば…「琳派」ですよね! 日本美術の代表ともいえる琳派。時代を超え国を超え、たくさんの人を魅了しつづけています。 みんな大好き琳派の魅力を、私にも語らせてください! シンプルなのが、かっこいいさて、琳派の絵ってすごくシンプルです。 さっそく作品を見てみましょう。 『伊勢物語』の主人公・在原業平たちが宇津山を越え

          大胆で繊細で美しい!今も色褪せない琳派の魅力

          この人に描いてもらいたい!ローランサンの魅力

          絵画ジャンルの一大勢力を誇る肖像画。肖像画を手掛けた画家は数えきれないほどです。 そんな中でも、私がもし肖像画をお願いするなら(実際にそんなことはできませんが)、ぜひこの人にという画家がいます。 マリー・ローランサンです。 ローランサンは社交界の女性たちに大人気でした。彼女に肖像画を描いてもらうことが一種のステータスになっていたそうです。 女心をがっちり掴むローランサン。その魅力に迫ります。 似てないからこそ ローランサンはさまざまなご婦人を描いています。 中でも有

          この人に描いてもらいたい!ローランサンの魅力

          ゴッホの風景画に見える「景色」以外のもの

          今年も東京でゴッホ展が開かれています。 毎年のようにゴッホを冠した展覧会が開かれてる気がしますが、それだけ人気だということでしょう。 ゴッホは生涯で約2,000点の作品を残したと言われています。 手がけたジャンルは肖像画、静物画、自然画など様々ですが、今日ピックアップしたいのは風景画です。 風景画とは文字どおり風景を描いた絵のこと。ただし、それが現実の景観をそのまま写しているとはかぎりません。 それでは一体、ゴッホは風景画に何を写したのでしょうか。 彼の人生と作品を追

          ゴッホの風景画に見える「景色」以外のもの

          モネの魅力は、その「目」にあり!

          上野のモネ展が話題です。モネの絵ってほんとに綺麗ですよね! 描かれているのは家や庭や橋など、ありふれた物事ばかり。ですが作品は輝くように美しく、唯一無二の個性を放っています。 何の変哲もない風景をこんなに美しく描くなんて、モネは一体どのように世界を見ていたのでしょうか。モネの魅力の秘密を一緒に見ていきましょう! 見たことあるけど見たことないモネの絵は形も輪郭もぼんやりしています。それにより際立っているのが、色彩の魅力です。 本当にたくさんの色が使われているんです! たと

          モネの魅力は、その「目」にあり!

          もはやクレイジー!細かすぎる名画たち(西洋画編)

          「神は細部に宿る」といいますが、それは絵画も同じ。 よく見なければ分からない、でも見逃したらもったいない!! そんな細かすぎる名画の魅力を見ていきましょう。 600年前とは思えない!超絶技巧まず紹介するのは、1434年、つまり約600年前に描かれたこの作品です。 様々な視覚的刺激に晒されている現代人からすれば、なんてことのない絵に見えるでしょう。 でもよく見てみてください。その緻密さ、特に質感表現は今見ても驚異的です。 まずは、ぱっと目を引く女性の衣服。ドレスのひだの

          もはやクレイジー!細かすぎる名画たち(西洋画編)

          もはやクレイジー!細かすぎる名画たち(日本画編)

          「神は細部に宿る」といいますが、それは絵画も同じ。 よく見なければ分からない、でも見逃したらもったいない!! そんな細かすぎる名画の魅力を見ていきましょう。 臨場感のウラに緻密な描写ありまずご紹介するのは、鎌倉時代の絵巻物、平治物語絵巻です。 「平治物語」は平治の乱(平清盛が権力を掌握するきっかけとなった出来事)をテーマにした物語。「平治物語絵巻」はそれを絵巻物にしたものです。 物語を絵で伝えるためには、描写の説得力がとても重要です。では「平治物語絵巻」はどこに説得力を

          もはやクレイジー!細かすぎる名画たち(日本画編)

          ほんとに同じ人!?正反対の世界観を1人で描いた画家

          名画はどれも個性豊かです。作品には画家のクセや特徴が表れるので、誰が描いたか一目で分かったりします。 それでは、同じ画家が手がけた作品は全部おんなじ作風になるのでしょうか……そんなことはありません! 次の2つの絵を見てみてください。 同一人物が描いたものですが、全然違いますよね! 作者はフランスの画家、オディロン・ルドン(1840~1916)。前者は画家が43歳のとき、後者は72歳のときに描かれました。 作風の変わり方がものすごいですが、この間、画家の身に何があったのでし

          ほんとに同じ人!?正反対の世界観を1人で描いた画家

          デジタルアートじゃなくても!描きかた次第で絵が動く

          最近は『動くゴッホ展』など、デジタル技術を使って名画を動画にするプロジェクトがあります。 しかし画家たちは、コンピューターのない時代から、絵に動きを取り入れようと様々な工夫してきました。 動かない絵を動くように見せるため、彼らはどんな仕掛けをしたのでしょうか。 絵画で「速さ」を表現するには 静止画で描くのが難しそうな「スピード感」。これを見事に表した作品があります。 汽車がすごい速さで迫ってきます。早くよけないと轢かれてしまいそうです! この迫力を表すために様々な工夫

          デジタルアートじゃなくても!描きかた次第で絵が動く

          あの名画、雑すぎるけどスゴすぎる!

          どんな名画も、究極を言えば絵の具の集合体にすぎません。近くで見たら絵の具のかたまりにしか見えないでしょう。 しかし一歩下がって見ると、そこに素晴らしい傑作が現れます! 今日は「ただの絵の具」が「絵」になる瞬間を見ていきましょう。 ぐちゃぐちゃの絵の具が、美しき令嬢に! これはある絵画の一部です。 ものすごく大雑把で、もはや絵具の固まりにしか見えませんね。 しかし、一歩下がって全体を見ると… 緑の藻屑はヘアアクセに、白い点線はレースに早変わり。 とっても可愛らしい王女が

          あの名画、雑すぎるけどスゴすぎる!

          見ているだけで元気が出てくる!マティスの魅力

          仕事に家事に育児に、忙しくて疲れていても、気持ちだけは元気になりたいですよね! そんなときにぴったりな名画が、アンリ・マティスの作品です。 明るくて、楽しくて、ワクワクする!そんなマティスの魅力を存分に紹介します。 目の覚めるような色 マティスの異名は「色彩の魔術師」。 とにかく色が強烈です。 上の2つは、画面のほとんどを赤が占めています。 原色を前面に出す大胆な色づかい。こんな配色は、日常ではなかなかお目にかかれません。 この華やかすぎる色味を見ているだけでも、なん

          見ているだけで元気が出てくる!マティスの魅力

          「売れなかった」画家たちの、超個性派な作品と人生

          一生懸命頑張っても、報われるとは限りません。 美術史に名を残した画家の中にも、生前に売れずに苦しんだ人がたくさんいます。 しかし彼らは、苦境の中でも自分の芸術を貫き、誰にも真似できない作品を残しました。 今回は、そんな画家たちの超個性的な人生と作品を追っていきます。 絵描き以外の道がなかった画家 「売れなかった画家」として、真っ先に名を挙げられるのが、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853~1890)でしょう。 もはや知らない人はいない人気画家です。 ゴッホの作品は

          「売れなかった」画家たちの、超個性派な作品と人生