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美術オタク歴10年以上。 初心者の方には分かりやすく、オタクの方には新しい視点から、アートの魅力を掘り下げます。 インスタ始めました。

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    note公式さんの「今日の注目記事」に選んでいただいた記事をまとめました。

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何でも描けるロートレックが描き続けたもの

今回おすすめしたいのは、こちらの展覧会です。  -『ロートレック展 時をつかむ線』@SOMPO美術館- ロートレックといえば、このような絵を思い浮かべるのではないでしょうか。 こうした定番の絵も良いですが、魅力はそれだけではありません。 いつものロートレックと、いつもと違うロートレック、両方を堪能できるのが今回の展覧会です。 カラフルなポスターとモノクロの素描会場には、いかにもロートレックらしいポスターがが展示されています。 実物で見るとなかなかの迫力。単純な線と色

    • 芸術の秋 -教養を磨く「以外」の美術の楽しみ方

      最近は美術に関する本がたくさん出ています。 私のような素人向けの美術書で多いのが、実践面を重視したもの。 つまり、美術の知識を得て「教養」を磨いたり、「美的センス」を身につけたり、「ビジネス」に活かしたりするためのものです。 それはそれで面白いと思います。 しかし正直、画家の名前とか作品名とか〇〇派を知っていたところで、実生活ではほとんど役に立たないでしょう。 それに娯楽の多いこの時代、美術鑑賞以外に「感性を磨き」、「美的センスを身につける」手段は他にいくらでもあります。

      • 単なる風景画じゃない!「音そのもの」を描いた名画

        臨場感のある絵からは音が聴こえてきます。 海を描けば波の音が、馬を描けば蹄の音が、室内を描けば生活音が。 でも今日紹介するのは「音のある風景」ではなく、「音そのもの」を描いた絵です。 画家にしか鳴らせない音とは一体どんなものなのか…「耳」をすませて「見て」みましょう。 ラウル・デュフィ〜音色が見える画家〜デュフィは19世紀末から20世紀前半に活躍したフランスの画家です。 親も兄弟も音楽家で、彼自身もバイオリンを嗜んでいました。 デュフィの絵には音楽家や楽器、コンサートを

        • ムンクが描く夏はなぜか気持ちがひんやりする

          暑さ真っ盛りのこの時期は、夏をテーマにした絵を見てみましょう。 今日紹介する夏の絵は、あの ムンク が描いたもの。ムンクといえば『叫び』ですよね。 何だか夏のイメージと結びつきませんが、一体どんな絵を描いているのでしょうか。早速見ていきましょう! ムンクの夏は暑くないムンクは意外にも夏の絵をたくさん描いています。今日紹介するのはこちらです。 作品の舞台はノルウェーの海。ノルウェーはムンクの故郷であり制作拠点でもありました。 北欧の夏は日照時間が長く、場所によっては白夜

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          夏に見たい!海と空の王者、ブーダンの名作

          暑いですね〜夏といえば海! 海を描いた画家ははたくさんいますが、中でも自らを「海の画家」と名乗り、生涯海を描き続けたのがウジェーヌ・ブーダンです。 今日はブーダンの描く海の魅力を見ていきましょう。 ①映えないけれど海の絵というと、色がものすごく綺麗だったり、逆に大波に荒れ狂っていたり、「映える」ものが多いですよね。 では、ブーダンの絵はどうでしょうか。 正直ちょっと地味ですよね。真っ青でもないし、凪のようでもないし、迫力ある大波もありません。 ですが過剰な演出がない分、

          夏に見たい!海と空の王者、ブーダンの名作

          自画像から見えてくる、ムンクの人生と心の内

          北欧を代表する画家ムンク。ムンクといえば『叫び』ですよね。 中央の耳を塞ぐ男はムンク自身だとも言われていますが、実はムンクはたくさんの自画像を残しています。 そこには意味ありげなモチーフが描かれてたり、これ見よがしなタイトルが付いていたり… このとき何があったんだろう、どんな気持ちでこれを描いたんだろう、この人はどんな人生を送ったんだろう、と思いを馳せてしまいます。 そんなムンクの自画像と、その裏にある人生の物語を追ってみましょう! 強烈な死の匂い画家になりたてのムン

          自画像から見えてくる、ムンクの人生と心の内

          動植綵絵だけじゃない!水墨画に見える、若冲の意外な一面

          みんな大好き伊藤若冲。もはや日本を代表する絵師といっても過言ではありません。 特に鶏の絵をはじめとする『動植綵絵』シリーズは大人気ですよね。 若冲=動植綵絵!超絶技巧!と思われがち…ですがそれだけではありません。 意外にも、水墨画が面白いんです! スーパー緻密な動植綵絵を剥製に例えるならば、水墨画はぬいぐるみといったところでしょうか。 水墨画だからこそ分かる、若冲の新たな一面を見ていきましょう。 ①のびのびした筆さばき最初にご紹介するのは、こちらの鶏の絵です。 動植綵絵

          動植綵絵だけじゃない!水墨画に見える、若冲の意外な一面

          「マティス 自由なフォルム」 昨年のマティス展とは、また違う楽しさがありました!

          先日、国立新美術館の「マティス 自由なフォルム」に行ってきました。 マティス展といえば、昨年2023年にも上野の都美術館で開催していましたね。 もちろん昨年のも良かったのですが、今回はまた違ったかたちで楽しめました! ①連作を堪能できた前回のマティス展は油絵がたくさんありましたが、今回のメインは切り絵です。 マティスの切り絵には、全く同じフォルムの中で色や模様を少しずつ変えたものがいくつもあります。 それぞれのちょっとした違いを見比べることで、マティスの制作過程を追える

          「マティス 自由なフォルム」 昨年のマティス展とは、また違う楽しさがありました!

          花を並べただけ、なのに!燕子花図屏風は何がそんなにすごいのか

          今年も根津美術館で、尾形光琳の『燕子花図屏風』が公開されています。 名作と名高い一枚ですが、言ってしまえば、燕子花をたくさん並べただけの絵。 一体、何がそんなにすごいのでしょうか。 それは、とにかく何もかもが大胆で思い切っているところです。 ①モチーフ選びが大胆 テーマは『伊勢物語』、主人公の在原業平が、八ツ橋に咲く燕子花を見て和歌を詠む場面です。でも主人公の在原業平はおろか、舞台の橋すら出てきません。 燕子花に物語を託しているのか、燕子花を描くために物語を利用したのか

          花を並べただけ、なのに!燕子花図屏風は何がそんなにすごいのか

          大胆で繊細で美しい!今も色褪せない琳派の魅力

          今年もアレが始まりました。根津美術館での『燕子花図屏風』の展示です。 誰もが一度は見たことがあると思います。江戸時代の画家、尾形光琳の傑作です。 尾形光琳といえば…「琳派」ですよね! 日本美術の代表ともいえる琳派。時代を超え国を超え、たくさんの人を魅了しつづけています。 みんな大好き琳派の魅力を、私にも語らせてください! シンプルなのが、かっこいいさて、琳派の絵ってすごくシンプルです。 さっそく作品を見てみましょう。 『伊勢物語』の主人公・在原業平たちが宇津山を越え

          大胆で繊細で美しい!今も色褪せない琳派の魅力

          あの絵をモノクロにしてみたら…線が楽しい名画たち

          西洋画といえばカラフルな色彩を思い浮かべる人も多いでしょう。 でも、いい絵はモノクロにしても魅力的!色だけじゃない名画の魅力に迫ります。 動きが伝わる、踊るような線 絵をモノクロにすると、画家のデッサン力があからさまになります。 素人の私でも「すごいデッサン!」と思えるのが、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックです。 彼を一躍有名人にした作品です。誰もが一度は見たことあるのではないでしょうか。 これをモノクロにしてみると… 色がなくても伝わってくる、この躍動感!肉体

          あの絵をモノクロにしてみたら…線が楽しい名画たち

          この人に描いてもらいたい!ローランサンの魅力

          絵画ジャンルの一大勢力を誇る肖像画。肖像画を手掛けた画家は数えきれないほどです。 そんな中でも、私がもし肖像画をお願いするなら(実際にそんなことはできませんが)、ぜひこの人にという画家がいます。 マリー・ローランサンです。 ローランサンは社交界の女性たちに大人気でした。彼女に肖像画を描いてもらうことが一種のステータスになっていたそうです。 女心をがっちり掴むローランサン。その魅力に迫ります。 似てないからこそ ローランサンはさまざまなご婦人を描いています。 中でも有

          この人に描いてもらいたい!ローランサンの魅力

          ゴッホの風景画に見える「景色」以外のもの

          今年も東京でゴッホ展が開かれています。 毎年のようにゴッホを冠した展覧会が開かれてる気がしますが、それだけ人気だということでしょう。 ゴッホは生涯で約2,000点の作品を残したと言われています。 手がけたジャンルは肖像画、静物画、自然画など様々ですが、今日ピックアップしたいのは風景画です。 風景画とは文字どおり風景を描いた絵のこと。ただし、それが現実の景観をそのまま写しているとはかぎりません。 それでは一体、ゴッホは風景画に何を写したのでしょうか。 彼の人生と作品を追

          ゴッホの風景画に見える「景色」以外のもの

          モネの魅力は、その「目」にあり!

          モネの絵ってほんとに綺麗ですよね! 描かれているのは家や庭や橋など、ありふれた物事ばかり。ですが作品は輝くように美しく、唯一無二の個性を放っています。 何の変哲もない風景をこんなに美しく描くなんて、モネは一体どのように世界を見ていたのでしょうか。モネの魅力の秘密を一緒に見ていきましょう! 見たことあるけど見たことないモネの絵は形も輪郭もぼんやりしています。それにより際立っているのが、色彩の魅力です。 本当にたくさんの色が使われているんです! たとえばこちらの作品を見てみま

          モネの魅力は、その「目」にあり!

          もはやクレイジー!細かすぎる名画たち(西洋画編)

          「神は細部に宿る」といいますが、それは絵画も同じ。 よく見なければ分からない、でも見逃したらもったいない!! そんな細かすぎる名画の魅力を見ていきましょう。 600年前とは思えない!超絶技巧まず紹介するのは、1434年、つまり約600年前に描かれたこの作品です。 様々な視覚的刺激に晒されている現代人からすれば、なんてことのない絵に見えるでしょう。 でもよく見てみてください。その緻密さ、特に質感表現は今見ても驚異的です。 まずは、ぱっと目を引く女性の衣服。ドレスのひだの

          もはやクレイジー!細かすぎる名画たち(西洋画編)

          もはやクレイジー!細かすぎる名画たち(日本画編)

          「神は細部に宿る」といいますが、それは絵画も同じ。 よく見なければ分からない、でも見逃したらもったいない!! そんな細かすぎる名画の魅力を見ていきましょう。 臨場感のウラに緻密な描写ありまずご紹介するのは、鎌倉時代の絵巻物、平治物語絵巻です。 「平治物語」は平治の乱(平清盛が権力を掌握するきっかけとなった出来事)をテーマにした物語。「平治物語絵巻」はそれを絵巻物にしたものです。 物語を絵で伝えるためには、描写の説得力がとても重要です。では「平治物語絵巻」はどこに説得力を

          もはやクレイジー!細かすぎる名画たち(日本画編)