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ロバート・スミッソンの理論展開からのランド・アート

ロバート・スミッソン (Robert Smithson、1938-1973/US)
現代美術家。ランド・アート(アース・ワークス)と呼ばれる美術の潮流にかかわり重要な作品を残した。
代表作は、スケールというの概念の基にある「スパイラル・ジェティ」(Spiral Jetty)だろう。それは、ユタ州のグレートソルト湖で6500トンの岩、土砂等を使い造られた。

基本的な視点だが、ミニマル・アート(Minimal Art/最小限のアート)の影響を受けた彫刻からランド・ワークが成立して行った。
人によって創造された人工物という形而上学的な観念は、その下にある物理的プロセスを覆い隠す、それは、近年の高度なテクノロジーに支えられた素材を採用することで永遠性と物理的な時間を確実に覆っているのだ。
芸術制作もまた*エントロピーの法則(無秩序の度合いを示す物理量)に則って行われる。つまり、あらゆる生産プロセスにおいては常に、破壊される秩序は生み出される。1968年、ロバート・スミッソンの論文「精神の沈降:アース・プロジェクト」(A Sedimentation of the Mind: Earth Projects)に述べている事だ。
 それらの前提で、「スパイラル・ジェティ」(Spiral Jetty)から、言えることは、主体と客体、対象と背景など、世界を分化、それらを対比させ構造化すると言う事だ。この事によって、我々(観る側)にとって、安定したランド・アート像(そのアート世界像)を感じる(受け入れる)という事も、1つの極(観るもの視点)かも知れない。
(註)*エントロピーの法則:自然界は、常に、エントロピーが「小さい→大きい」という方向に進む。それは、自然は「秩序から無秩序へ」という方向に進むと認識できる。

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Fig.Spiral Jetty


略歴-Robert Smithson
1938年、パサイック(ニュージャージー州)生まれ
アート・スチューデンツ・リーグ(通称リーグ/The Art Students League of New York)で絵画と素描を学ぶ。
初期の作品は、ポップアートなどに影響を受けたコラージュの周辺だ。
1964年、ミニマルアートの旗手として美術界で頭角を現した。「Enantiomorphic Chambers」ガラス板やネオン管を使い、光の反射や鏡像などを追求している、著名な作品だ。
アーツマガジン誌やアートフォーラム誌に寄稿し、この時期は、評論家としての知名度が高い。その評論内で18-19thの造園設計などのランドスケープ・アーキテクトにも視点を置いている。このあたりが、後のランド・アートにつながる。
 その時期に、美術商ヴァージニア・ドゥワンのドゥワン・ギャラリー(Dwan Gallery)と契約している。ランド・アート全体を加速された画廊だ。

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Fig.Enantiomorphic Chambers

1967年、スミッソンはニュージャージー州の工業地帯の探索を開始し、掘り出された何トンもの土や岩をダンプトラックが運んでゆく光景に魅せられ、この事象と、古代の記念碑とを等しくみなす論文を書いている。このあたりから、スミッソンは、特定の場所から持ってきた土砂や岩をギャラリーの中に「彫刻」として置き、時として鏡やガラスを加えるインスタレーション「non-sites」のシリーズを開始した。
1968年、論文「精神の沈降:アース・プロジェクト」(A Sedimentation of the Mind: Earth Projects)をアートフォーラム誌に発表しており、ランド・アートのアメリカでの最初の世代の芸術家達の活動を紹介している。
1969年、アースワークス作品の制作にとりかかった。
1970年、前述の代表作「スパイラル・ジェティ」(Spiral Jetty)だ。制作年の湖の水位が非常に低かったため、湖の水面が元通りに上昇する年には完全に水没する事なるのだが、*エントロピーの法則なのだ。
1973年7月20日、スミッソンはテキサス州でのプロジェクト「Amarillo Ramp」の予定地を調査していた。その航空機が墜落した。
まだ、これからの理論展開とランド・アートの潮流にいた矢先に亡くなった。35歳という、夭折だったことが惜しまれる。

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Fig.テキサス州でのプロジェクト「Amarillo Ramp」

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Fig.Spiral Jetty-Robert Smithson


SPIRAL JETTY - Robert Smithson, 1970 - For Utah State Magazine

Walk the Spiral Jetty [HD]

(追記)ロバート・スミッソンは、まだ、35歳という、夭折だったことが惜しまれるのだが、天才とは、そう言うものかも知れない。そう考えると私は、残念だが長生きをするかも知れない・・。話を戻すと、ロバート・スミッソンの理論展開とその偉業は、現在のアーティストに、ジャンルを超えてに過大な影響を与えていることは確かだ。 次回は、Michael HeizeのLevitated Mass(空中浮揚する塊)と明日香の石舞台古墳について、ランド・アートの視点から触れてみたい所存でおります。

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