見出し画像

ローマで、ダンテと地獄巡り。

2019年ぶりのローマへの旅。フィレンツェからは、新幹線で1時間30分ほどの距離なのに、コロナ禍で、近くて遠い、永遠の都。

行きは元国鉄のトレニタリアにて。スタンダート、プレミアム、ビジネス、エグゼブティブの3タイプにクラスが分かれています。

プレミアム以上だと、こんな感じに、お菓子、ジュース、水を、サービス(無料)で頂けます。

画像1

二人組のスタッフがワゴンを引いて、甘いお菓子と、甘くないスナックと、どちらがいい?と聞いてくるので、好きな方を遠慮なく頼みましょう!

乗車中にグリーンパス(陰性証明書)の確認もあります。もし携帯してない場合はどうするのか尋ねてみたら、次の駅で強制下車され、警察のもとへ連行されるとのことでした。

マスクと消毒液も無料配布。さすがです。トレニタリア。

画像2

お菓子を配り終えると、しばらくしてから、ドリンクサービス(無料)がきます。

車内だし、多くを望むのは、わがままというもの。と思っていたコロナ前。コーヒーを注文しても、すでに作られたアメリカンなコーヒーをエスプレッソの小さな紙コップに注がれるだけで、なんとも味気なかった。

そんな期待しないコーヒーを待っていたら、エスプレッソマシーンが搭載されたワゴンでやってきました。期待してなかった分、感動もひとしお。

素晴らしいです。トレニタリア。思わず写真まで撮っちゃいました。その場で淹れてもらえるコーヒーは、香り高く、エレガントです。

画像3

通路を挟んだ、反対側の座席には、おじさま二人が、政治の話しで盛り上がっていました。入るだろうな。と思ったら、やっぱり、主人も話題に参加(参戦?)しはじめ、走行中は、ずーーっと、おしゃべり。だからゆえか、ビジネスクラスでは、「静かな号車」を指定できるようにもなっています。

今回のローマの目的は、2つの展示会に行くこと。最初はこちらです。

画像4

ここは、大統領官邸「クイリナーレ宮殿」の目の前にある展示会場「スクデリア・クイリナーレ(Scuderie Quirinale)」。ただいま「インフェルノ(Inferno)」を開催中。ダン・ブラウンの映画のタイトルにもなったので、聞き覚えた方もいるかしら。「地獄」という名の展示会です。

画像5

ダンテ没後700年を記念して「神曲」の地獄編をテーマにした展示会。平日の午前や午後は人が少なくて、ゆっくり鑑賞できます。

画像34

いざ、地獄へ足を踏み入れましょう。

画像7

いきなり、地獄。

断末魔の叫びが聞こえてきそうな、迫力ある作品。360度から鑑賞できます。さらに驚くのは、これが大理石のブロックを彫り出して作られたということ。

画像8

天使の一振りで、地獄になだれ込むように落とされる人たち。

表情、仕草、骨格、肉付き。ひとりひとりの表情がしっかりと表現されていて、魅入ってしまい、ぜんぜん先に進めません。

画像8

おお!これも来ていましたか!
オルセー美術館所蔵です。
見てるだけで腰が、あぅっ!と痛くなる。

画像9

案内役ウエルギリウスは「おぅ」と口に手を当て、

ダンテは「うわわ」と目の前の光景に慄(おのの)き、

そんなふたりを見て「うっしっしっしっ」と楽しんでそうな悪魔。

次は冷たい世界。地獄に落ちた人が流されています。

画像10

画像11

「なんと!」とでも言ってそうな、
ダンテの表情。

画像12

驚きや恐怖や、
足を滑らせて落ちないようにと
手の仕草からもよくわかる。

このふたりは、パオロとフランチェスカ。(額縁の作りもすごい。)

画像13

ダメとわかっていても、抗(あらが)えない心。禁じられた愛を、フランチェスカの夫に見つかり、殺され、地獄に落とされます。

画像14

画像18

愛する自分の気持ちを偽ることはできず、地獄に落とされた今でさえ、その気持ちを変えることはできません。とでも訳せるでしょうか。

地獄で、ダンテと目を合わせるフランチェスカ。

画像15

絶望に打ちひしがれながらも、愛を貫き通すフランチェスカと、憐れみ同情し、けれど、なにもできないダンテのやるせない気持ちが、ふたりの視線から伝わってきて、切なくなります。

画像16

強烈なインパクトを与えつつ、舞台背景になっている登場人物の表情もしっかりと描いている作品の数々。

ここでひと休憩。展示会場の中ほどに、待ってましたとばかりに、ドンピシャなタイミングでカフェテリアがあります。

画像19

休憩したところで、2階へと移動。ガラリと雰囲気が変わり、マリオネット劇場。 シシリアの人形劇プーピの地獄絵劇場。

画像20

画像33

ブリューゲルの絵もありました。細密なだけじゃなく、ひとつひとつが、それはそれは表情豊かに、色彩豊かに、描かれている、ファンタジー。

画像21

ブリューゲルって、1500年代の人なのに、この想像力たるや。いまだったらSF映画とかの、キャラクターデザインでも活躍していそう。

画像22

画像23

画像25

画像26

画像27

画像28

ブリューゲルの絵が展示されている部屋は「聖アントニウスの誘惑」がテーマ。洞窟に籠っていた聖アントニウスを、女性が誘惑して、愛欲の快楽に落とそうとしている場面です。

こういう題材って、アーティストとして食指が動くんでしょうねえ。

画像28

ドメニコ・モレッリという1800年代のイタリア人画家の作品。彼はイタリア王国時代に上院議員にも選ばれたらしい。

次の部屋は、現代のインフェルノ(地獄)。

画像30

鉄を溶かしては、兵器を作る高炉の様子。
スモッグで汚される大気。

画像30

COP26(気候変動枠組条約締約国会議)を終えたばかり。シシリアでは今夏48度を記録し、竜巻による多大な被害をここ最近2度も被っています。

次世代に美しい地球を受け継ぐためにも、地球人が一丸となり、良い環境を作るために取り組みたいです。

画像31

さて、そろそろ地獄を出て、
ふたたび星を見上げようではないか。

画像32

ダンテの「神曲」をテーマにしたアートの地獄めぐりだけかと思ったら、現代の地獄を表現した部屋もあり、心が疲れてきたときに、満点の星空の部屋にたどり着きました。安堵感とともに、心が開放された気分。

クイリナーレで開催される展示会は、毎回秀逸。見応えがあり、しっかりした構成と展示方法で、訪れる人をぐいぐいと引き込んでいくパワーがあります。今回の「インフェルノ」も、とてもよかったです。

最後に、「春」や「ヴィーナス誕生」で有名なルネッサンスを代表する画家ボッティチェッリが書いた、ダンテの地獄絵図です。

画像18

地獄は九層で構成されていて、上から下に降りて行くごとに、地獄の最下層に近づいていきます。最下層は、永遠の責め苦を受けるところ。

地獄と天国の間には、煉獄(れんごく)があり、天国へ行く前に浄化するところであり、煉獄から天国へと昇って行く。という構成になっています。

1300年代に書かれた「神曲」は、キリスト教の地獄を表すだけでなく、世紀を超えて、アーティストのインスピレーションの源となっていることがよく分かりました。永遠の詩人、ダンテ。ラヴェンナにお墓があります。

次回は、ウイーンの生んだ、偉大なアーティスト、クリムトの展示会へご案内します。ローマ編、もう少し、お付き合い下さい。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか? 気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます! コメントを気軽に残して下さると嬉しいです ☺️