平塚市美術館「こどもたちのセレクション」エピソード②
平塚市美術館「こどもたちのセレクション」。今日（8月7日）午後、7ヶ月かな？という赤ちゃんが、入ってすぐのところにある佐々木豊さんの『薔薇爆弾』を指さし「気になる～」と意思表示！
●小さい頃の鑑賞は「記憶」がない、だから「記録」をプレゼントする！
抱っこしていた若いお父さんの「うお～！選んでるよ、見てるよ！」と感動している姿に、思わず「見てますね！」とお声かけしてしまいました。
この人だれ？怪しい者ではないです～「この展示の企画構成を担当させてもらった者です」と名乗りはしませんでしたが一言添えつつ「作品リストに◯をつけて様子を書き残してあげるといいですよ」とお伝えしました。
ご夫婦「なるほど～」と。お父さんが抱っこして鑑賞し、お母さんが作品リストに◯など印をつけていらっしゃいました。
そのあと比較的、長い時間ご滞在。
赤ちゃんが疲れない程度で、ソファに座ったり抱っこ姿勢を変えたり、飽きないアプローチを自然にされていてすごい！
「お子さんが鑑賞した時に、何かしらメモや記録を残してあげてくださいね～」とお知らせしています。
あまりに小さいと本人は記憶ないですからね～
大きくなって見返した時に、小さい頃に興味を持った作品と新たに出会う可能性を残す。未来のプレゼント。
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●子どもたちは、案外、真理をつかんでいる
さて、佐々木豊さんの『薔薇爆弾』は、鑑賞会の記録（2015年度～2022年1月まで。詳しくは初回投稿とエピソード①をご覧ください）を集計した結果、子どもたちの反響が最も多かった作品です。平塚市美術館さんの「所蔵作品データベース」で画像を見ることができます。
https://jmapps.ne.jp/hiratukabi/index.html
・佐々木豊『薔薇爆弾』2011年 227.3×363.6cm 油彩・キャンバス
子どもの背丈からすると、とても大きな作品です。
ネオンカラーに近い鮮やかなピンクの薔薇がたくさん、巨大な1つの木のように描かれています。
背景の淡いブルーやイエローとの色合わせがとても美しく、パッとみて「きれい」と思う子が多い。天使も大勢、飛んでいます。
1歳10ヶ月 指をさして「きれい」と言っていた。
4歳7ヶ月 好き。ピンク色が好き。ばらがかわいいから。
でも見ているうちに…こんなお話も出ます。
3歳2ヶ月 逃げたい
3歳5ヶ月 ドッカーン！（天使たちが）お腹が出てる
3歳6ヶ月 赤い傘みたい
6歳1ヶ月 飛んでるのはウサギ？木にうずが巻いてる。枯れない？戦争のヤツが何である？
地上には廃墟や原爆ドームが描かれています。
知っている子はそれに気づきます。
どれくらいの年齢の子から知っているかなぁと思っていたのですが、保育園児年長さんの鑑賞ツアーで、何人かの子が知っていました。
廃墟から、キノコ雲のようなピンク色の形が吹き出しています。
この薔薇のかたまりは、爆発を描いているのかな？と思えてきます。
みんなから感じたことを話してもらった後に、学芸員さんのお話を聞くようにしています。学芸員さんによると、この作品は「空から落ちてくるのが薔薇の花だったら、というイメージで描かれ、平和と復興の願いが込められている」とのこと！
子どもたちは、作者の意図や思いを聞く前に、自分なりに感じ取って言葉にしていました！
そんな様子に、ご家族は「子どもたちは案外つかんでいるんだ」と実感されます。
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●時を経て、今、展示される巡り合わせ
今年8月10日の「キッズ鑑賞ツアー」でも、5,6歳以上の子たちはピンク色の薔薇や天使だけでなく、少し怖いところにも気づいていました。
（人が飛んでいる様子が描かれているのを見つけて）あんなふうに空から落っこっちゃったら、こわい
絵の中に自分が入っていってますね。共感力のあ
5歳 地面に1つ、薔薇の花があるよ！ すき
8歳 ふしぎなような、きれいなような、きがします
以前、この作品を子どもたちと鑑賞したのは2015年でした。今のウクライナの戦禍など想像もしなかった頃です。
その時、たくさんの子どもたちが反響を寄せたのがこの作品で、今年「こどもたちのセレクション」で展示されることになった。
作家さんが作品に込めた想いも考えると、巡り合わせの不思議さを感じます。
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子どもたちが大きくなって社会や歴史について知った頃、再びこの作品を見たら、その時、どんなことを思うでしょう。
2015年に一緒に見た子たちは、たとえば赤ちゃんだった子は今は小学1年生か2年生、年長さんは中学1年生、小学3年生だった子は高校1年生です。
見に来てほしいなぁ！！ そしてお話を聞いてみたい。
（本稿は美術館ご担当者様に確認いただき掲載しております）
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