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金属材料の加工硬化と硬化則について -2-

今回は主に金属材料に見られる「加工硬化」と呼ばれる現象に迫ります。金属材料における「塑性変形」に直結する話です。

金属材料の塑性変形の中でも重要とされる概念のひとつです。特に「加工硬化」という物理現象を数学的に説明した「硬化則」と呼ばれる理論は、数値解析でも必須と言える事項です。

前回は加工硬化という物理現象について、そもそもの発生要因の話と、物理現象としてどのような形なのかを説明しました。

今回は「硬化則」について話を進めます。この硬化則には様々なモデルが提唱されていて、一般的な構造解析のソフトウェアには実装済みだと思いますので、個人的な復習も兼ねて書いていくことにします。


応力とひずみで成立する構成式

塑性変形の状態を説明するひとつの手段として、前回の際に応力ーひずみ線図の話を出しました。ここでは、応力(σ)とひずみ(ε)を数式で関係付ます。

応力とひずみを数式で関係付けたものを「構成式」と言います。最も簡単な構成式とは、弾性変形における応力をひずみの1次関数として表現した形です。

$${\sigma=E\epsilon}$$

ここで、Eはヤング率(1次関数の比例定数)です。下記で言うところの「弾性域」の部分に相当します。

ここで、構成式を説明するにあたり、応力とひずみを扱い方を明確にする必要があります。なぜなら、数値解析と普段(実地計測)では、応力とひずみの扱い方に差異があるためです。

それは数値解析で応力とひずみを扱う際の都合でもあるのですが、前置きとしてその説明を先にします。

物理量の公称値と真値

一般的に応力ーひずみ線図は実施計測(材料試験)で算出します。応力とひずみはそれぞれ「公称応力」「公称ひずみ」と称されます。

公称応力は荷重を変形前の断面積で除算した値です。変形が進行して断面積が変化したとしても、変形前の断面積を基準にしています。公称ひずみも変形量を単純に変形前の長さで除算した値です。

しかしながら、変形が大きくなると断面積や長さが大きく変化してきます。つまり、先の計算方法は力学的な矛盾が生じてしまうのです。数値計算で応力とひずみを扱う上で、真値として変換した形を「真応力」「真ひずみ」とします。

$${\sigma_t=\sigma_n(1+\epsilon_n)}$$

$${\epsilon_t=ln(1+\epsilon_n)}$$

ここで、添字(n)は公称値で添字(t)が真値です。

結局のところ、数値解析としての物理量は力学的な観点に基づいた扱い方である必要があるのです。公称値は応力増加が鈍ることがありますが、塑性変形の計算は増分計算を基本とすることからも、真値の方が何かと都合が良いのです。

加工硬化を表す様々な構成式

弾性変形では構成式は応力とひずみの1次関数として表されていました。

$${\sigma=E\epsilon}$$

ここから、塑性変形の話に入りますが、弾性変形の場合とは大きく事情が異なります。1次関数に比べて複雑な数式を用います。はじめに、多く使われる加工硬化を考慮した構成式として、n乗硬化則と呼ばれるものがあります。

$${\sigma=C\epsilon^n}$$

ここでは、前回説明したn値を指数としたべき関数として構成式を表現します。Cは定数です(真ひずみが1の時の真応力に相当します)。

n乗硬化則を複雑にした「swift則」があります。

$${\sigma=C(\epsilon+a)^n}$$

n値は同じでaは物理定数です。パラメータの部分はトライ&エラーで同定する作業が伴います。一方で、最初のn乗硬化則よりも精度は高いです。

別の硬化則として「ludwik則」も存在します。

$${\sigma=C\epsilon^n+b}$$

n値は同じでbは物理定数です。この他にも様々な硬化則(構成式)があります。ただし、どれを使うことが最適なのかは、金属材料ごとに異なるのが現状です。

おわりに

今回は硬化則に相当する構成式ついて、実例を挙げてみました。繰り返しになりますが、何の硬化則を選択するべきかは、金属材料ごとにバラツキがあります。

数値解析ではその中で最良の形を構築する訳ですが、それは計算量(コスト)との睨み合いにもなるので、簡単に済む話でもありません。

また、塑性変形の計算の出発点は「降伏点」になる訳ですが、そこにも数式的な解釈があります。次回は降伏という物理現象を中心に塑性変形を見ていきます。

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最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
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