見出し画像

ネイピア数の使い道について

友人より「ネイピア数」について書いてほしいというリクエストがあり、リクエストに応えることにした。今回はその後編の話。

前編では、そもそもあまり聞くことのない「ネイピア数」の意味と、その発展先とも言える「オイラーの公式」について書いた。

人によっては聞くことすらない定数の話だが、前にも書いた通り、私は高専時代にかなりお世話になった。と言うか、数々の専門教科でこの定数に触れてきたのだ。後編では、その一例の話をしようと思う。

複素関数論(オイラーの公式を利用して)

画像1

本格的な話題に入る前に、高校の「数学II」で習うと思われるが、前段階として複素関数(複素平面)の話をしておこう。

ネイピア数自体が登場するのはここまでだが、その応用であるオイラーの公式の使い方として、知ってもらえれば良い。

複素平面とは、横軸(実軸)と縦軸(虚軸)を定義することで、実数成分と虚数成分に分けたもの。虚数成分は虚数「i」を付けることで区別している。

上記の図のような単位円(半径が「1」の円)では、実数成分「cosθ」と虚数成分「cosθ」に分けられる。この形は、前回紹介したオイラーの公式そのものだ。オイラーの公式を再掲する(同公式の左辺をexp(iθ)と表記することもある)。

画像2

この複素平面を利用した関数論のことを、複素関数論という(その名の通りでしかない)。詳しくは大学(高等数学)で習うので、そこに任せることにする。

これから紹介するのは、おそらくこの考え方を最も利用した教科の話である。電気回路(交流電流)の計算問題である。難しいところも多少あるが、ぜひ見ていただけたら嬉しい。

実用例(電気回路計算)

画像3

高専の頃のテキストが手元に無いので、電気主任技術者試験(電験:3種)の理論計算で扱うレベルの問題を持ってきた。抵抗とコイル(インダクタンス)の直列回路において、抵抗(R)にかかる電圧(ER)の大きさを求めてみる。

画像4

所々で複雑な計算方法を用いているが、抵抗(R)にかかる電圧は120[V]と算出することができた。ここまで来るのにも、複素平面をフルに活用していることがわかるだろう。

ちなみに、青字で書いてある数値はフェザー表示と呼ばれるもの。実際に学習する時に何かと使うのだが、無縁そうであれば無視して構わない。

電気回路で扱う素子は3種類である。ひとつは抵抗(レジスタンス)で実数成分に影響する。問題はあとふたつで、コイル(インダクタンス)コンデンサ(キャパシタンス)であるが、これが虚数成分に影響する。

これらの素子を組み合わせることで、電気計算が実数成分だけの単軸的なものから、複素平面という2軸的な形に拡張されるのだ。

これが複素平面(オイラーの公式)を利用した、ひとつの実用例である。

おわりに

ネイピア数(と言うよりオイラーの公式)の実用例として、電気回路の問題を紹介した。久々に高専の頃の頭を使い倒した。

電気回路の各素子の成り立ちについては、おそらく大学で習うことになる。その際に、こういう実用例があることを知っておいてもらえるだけでも、私なりの貢献になることであろう。

この記事が参加している募集

最近の学び

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?