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【#46】材料力学の強化書 〜偏心荷重を受ける長柱の座屈〜

今回のトップ画像は、チュニジアに点在する砂漠(クサール・ギレン)に実在するベルベル人の遺跡です。クサール・ギレンはチュニジアで最もサハラのイメージを味わえる場所だそうです。

他に砂漠に比べて赤く染まりやすい特徴があり、なだらかにカーブする砂丘には夜風で造られた風紋が遙か彼方まで広がるそう。まるで月の上にいるかのような気分に浸らせてくれます。

さて、材料力学の話に戻りましょうか。

前回は両端固定支持についての座屈発生の条件について見ていきました。微分方程式の解き方が複雑になりましたので、チャレンジ課題みたいな様相ですが、数学の復習を兼ねて解き進めてみてください(三角関数の公式をフルに使います)。

今回は偏心荷重を受ける場合の座屈について見ていきます。実際の柱の軸圧縮荷重の作用線は、柱の軸線からずれることがあります。このときオイラーの座屈荷重より小さい荷重で座屈を生じることがあります。

軸線と作用線のずれが座屈荷重にどのように影響を及ぼすか、数式を追いながら確認してみましょう。

基本的な例題

早速ですが、偏心荷重を受ける柱の座屈の計算過程を見てみます。今回は両端回転支持の柱に対して軸線と作用線のずれ(e)が生じている場合を扱います。

柱にかかるモーメントのつり合いを考え、そこから導き出した曲げモーメントの式をたわみの方程式に代入します。これにより、座屈を計算するための微分方程式を導出します。

今回の微分方程式も「非斉次」です。右辺がゼロのときの微分方程式の一般解に加えて、今回の微分方程式の解をひとつ決めて足し合わせます。

今回で言えば(-e)がひとつの解なので、これを足し合わせます。

ここから三角関数の変換が続々と出てきます。主に使うのは「倍角の公式」「半角の公式」のふたつです。式変形は複雑ですので、ひとつずつ着実に見ていくことにします。

たわみ(v)を表す式を求めたことで、分母がゼロになるタイミングでたわみが無限大に発散することが分かります。このときの偏心荷重は次の通りです。

$${P=\frac{\pi^2EI_z}{l^2}}$$

この値は両端回転支持(偏心無し)の座屈荷重と一致します。つまり、偏心荷重が上記の値に近づくほどたわみ量は大きくなり、最終的に無限大に近づくことが分かります。

座屈に関する実験式

これまでオイラーの座屈荷重について説明してきましたが、実際の柱は必ずしもオイラーの座屈荷重で座屈するとは限りません。これまでに、数々の実験式が提案されてきました。

  • ランキンの式:$${\sigma_c=\frac{\sigma_0}{1+a\lambda^2}}$$

  • テトマイヤーの式:$${\sigma_c=\sigma_0(1-a\lambda)}$$

  • ジョンソンの式:$${\sigma_c={\sigma_Y}(1-\frac{\sigma_Y\lambda^2}{4\pi^2E})}$$

ここで、$${\sigma_c}$$は座屈応力、$${\sigma_Y}$$は圧縮降伏応力、$${\lambda}$$は細長比、$${\sigma_0}$$と$${a}$$は実験から決まる定数です。

実際の柱では、オイラーの座屈荷重よりも小さい値で座屈を起こすことが知られており、その際に上記の関係式を代用することがあります。

おわりに

今回は偏心荷重を受ける柱の座屈について見ていきました。また、座屈に関する実験式について代表的なものを最後に紹介しました。

長柱の座屈は細長比が比較的大きい場合(細長い柱)で発生します。逆に細長比が小さい場合は、座屈を起こす前に降伏が発生します。つまり、柱を用いる構造設計では、柱の応力が圧縮降伏応力と座屈応力の小さい方を超えないようにします。

オイラーの座屈荷重はあくまで理論式です。現実的な指標としては、これまでの実験結果を参考に算定するということも念頭に置いておきましょう。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。

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