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【#47】材料力学の強化書 〜塑性変形の巨視的な振る舞いについて〜

今回のトップ画像は、千葉県は葛西臨海公園にある葛西臨海水族園です。千葉県民ではありますが、こんな形をしていたんだと、今更ながら驚きます。落ち着いたら一人でも行ってみたいですね。

さて、材料力学の話に戻りましょうか。

前回は偏心荷重を受ける場合の座屈について見ていきました。軸圧縮の位置がずれることで、理論上はオイラーの座屈荷重より小さい荷重で座屈を生じることが分かりました。

今回で最終章になります。ここからは、塑性変形(弾塑性力学)について説明していきたいと思います。

機械設計においては、一般的に部材に生じる応力が降伏応力に比べて十分に低くなるようにすることが求められますが、降伏点を超えた塑性変形の過程を考慮した設計も近年ではなされてきています。

それらを理解する上で、弾塑性力学の存在は必須と言えます。最終章では、その辺の話を紐解いていきたいと思います。

弾性領域と塑性領域

これまで扱ってきた変形は、弾性領域を前提としていました。弾性領域とは、応力とひずみが比例関係にある状況(フックの法則が成り立つ状況)に相当します。これを線形の関係にあるとも言います。

また、外力を解放すると(除荷すると)、生じた変形は元の状態に戻ります。これが弾性領域の大きな特徴のひとつです。

塑性領域とは、応力が降伏点を超えたことで、除荷しても元の状態に戻らない変形(永久変形)が生じる領域のことを言います。

塑性領域では、応力とひずみは単純な比例関係にはなりません。これを非線形の関係とも言います。

詳しくは、次の応力ーひずみ線図を見ながら、イメージとして理解していきましょう。

応力ーひずみ線図の復習

引張試験を通じて「応力ーひずみ線図」が得られることは前に説明しましたが、材料次第でその形は大きく変わります。下図に示しているのは、一般的な金属材料で見られる応力ーひずみ線図です。

スクリーンショット 2022-02-05 16.24.37

左側は主に軟鋼(炭素を一定量含んだ鋼材)で見られる応力ーひずみ線図です。原点から上降伏点までが弾性領域です。弾性領域から塑性領域に転じると、しばらく同程度の応力で変形が進行して、その後は変形が進みながら応力も上昇していきます(この過程のことを加工硬化と呼びます)。

右側はアルミニウム合金などの一般的な金属の応力ーひずみ線図です。先程の軟鋼に比べて明確な降伏点が存在せず、緩やかに塑性領域に転じていきます。その後は軟鋼と同じく加工硬化の過程を踏みます。

いずれも、塑性領域では曲線的(非線形)な変化が見られます。一般的に塑性領域の応力とひずみの関係を表す構成式は、フックの法則のような単純な式では表せません。今なお多種多様な構成式が新たに提案されているほどです。

加工硬化とバウシンガー効果

塑性変形が生じたところまで負荷を与えて、途中で応力がゼロになるまで徐荷します。そして、改めて負荷を与えます。

除荷した段階で残る変形(塑性変形)の程度はOD間のひずみとして表されます。そこから改めて負荷を与えると、しばらくは線形(弾性領域)を示しますが、次第に塑性変形が再開されます。

この時の降伏応力(点E)ですが、最初の降伏応力(点B)に比べて高い値を示すことが分かります。この現象が先ほど説明した「加工硬化」に相当します。ひずみ硬化と言うこともあります。

次に、塑性領域まで負荷を与えてから応力がゼロになるまで除荷して、そのまま圧縮側に負荷を与えます。すると、最初の降伏応力(点B)に比べて低い応力で降伏することが分かります。この現象のことを「バウシンガー効果」と言います。

これらの現象を説明するには、塑性変形の素過程とも言える「転位」の振る舞いについて触れていく必要があります。この辺はまた後ほど説明することにします。

おわりに

今回は塑性変形の基礎的な話題として、応力ーひずみ線図を見ながら、塑性変形の特徴をいくつか挙げていきました。

塑性変形とは、弾性変形を除したときに残る永久変形のことを指します。そこから改めて同方向に負荷を与えると、材料は硬化したような挙動を見せることが分かりました(加工硬化)。

また、引張荷重から圧縮荷重に転じるなどした場合に生じるバウシンガー効果についても確認しました。

次回は塑性変形の微視的な振る舞い(転位の存在)について見ていきます。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。

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