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人は如何にして体制翼賛へとなるか - 加藤直樹「ウクライナ侵略を考える」を読み解きながら(1)

割引あり


 さて、一ヶ月以上空いてしまいました。てか、二ヶ月か(´・ω・`)
 この間、ちょっと頼まれごとがあって3月の終わりから一ヶ月ちょっとかかりっきりだったのです(´・ω・`)
 しかも、その間に色々生活面でも動きがあってバタバタしてたので…(´・ω・`)

 と言う事で、ちょっと、間が空いてしまいましたが、始めます。今回は多分、続き物になります。

 古くからの親友の加藤直樹くんが、3月にあけび書房から『ウクライナ侵略を考える 「大国」の視線を超えて」という本を出しました。

 この本、彼がウクライナ・ロシア戦争について考えてることを事細かに書いてる、変形B6版にして6ポイントくらいの、要は古めの文庫本のような小さな活字でびっしりと330ページほど書かれてる本で、それの半分くらいまでどうにか読み終えた感じではあるのですが、続きを読みつつも、何回かに渡って私の思うところを書いていこうと思います。

 この文章は、あくまで「入口」でもありますから、今週末(大体5月18日とか辺りかな?次が早くかけたらもう少し短くするかも?)までは、全文読めるようにして、その後は一旦、後半を有料にします。
その後、次の文章を出せたら、どうするかは考えます。が、「投げ銭購入」や「サポート」でのご支援を、どうかよろしくおねがいします!!! m(_ _)m

前回は、こちらから:


何故、加藤直樹くんはこの本を書いたのか。私なりに考えてみる。

 この本、多分、昨年10月に加藤くんが毎日新聞でインタビューに答えた記事を見て私が激怒して書いたnoteに触発されて記された部分が相当あると思うんです。

こちらは、本が出る直前に私が書いた文章です:

 まぁ、本の存在を知ったのが、共通の友人である見津毅氏の命日に行われた飲み会で彼が刷り上がったばかりの本を持ってきたという辺りだからなのですが、これの執筆のために半年近い時間をかけた。と言ってたのを覚えていますので、まぁ、タイミング的にそこら辺相当あるんだろうなとは(その前から企画としては動いていたにせよ)思ってます。

 なので、その時は聞き耳立てつつスルーしてたけど(おかねも絶望的になかったし)、全力を以ていいところはいい・悪いとこは悪い。ってやらないといけないな。と思ったので、4月の半ばに買って、本を読んで、9章立ての4章まで読み終わったところで、まず、書き出していくことにします。

「はじめに」という前書きで、加藤くん、

私がウクライナという国に学び、考えるようになったのは、2022年2月24日以降のことだ。門外漢もいいところである。
本来であれば、こんな本を書く資格はないのかもしれない。
それでもなお、無理を押して書いたのは、今侵略されているウクライナの人々に対して、本来であれば彼らの側に思いを寄せるべき人びとが、むしろ歪んだ認識に立った非難や例証を向けている状況があるからだ。
「いや、その認識はおかしい」と急いで言わないといけないと思ったからだ。
※改行は、引用した私が行いました※

「ウクライナ侵略を考える」加藤直樹、あけび書房、2024, 3ページ

 と書いてる訳です。この時点で、私がnoteで何度か厳しく書いた「薄い教養を深めてる」ということを事実上認めてると私は受け取りました。
 故に、この本は、極めて興味深いのです。

人は如何にして、エコー・チェンバーにハメられ、エコー・チェンバーを更に悪化させてしまうのか。その教訓を見出すために、この本を読み解いてみようと思う。

 人は如何にして、エコー・チェンバーにハメられ、エコー・チェンバーを更に悪化させてしまうのか。善良な人ほど・正義感の強い人ほど、その泥沼にハマっていくのか。

 その部分を分析するのに、極めて参考になる本だと思うのです。そしてそれは、私たちが再び過ちを繰り返さない・私たちのために始めたことが、どこかからの「悪意の第三者」に乗っ取られ、無意識の内に洗脳されたり認知を歪められ、結果として踊らされるにせよ自発的であるにせよ、おかしなことを繰り返しやって自滅してしまうようなことを防ぐにはどうするべきなのか・何を気をつけるべきなのか。

 そういう、教訓を見出してきちんと世の中に示していくのに非常に良い参考書と、最低でも私にとってはなっている。後、一つ一つの「事実」や「デマ」と本の中でされてることに関しては、細かくは触れない予定です。何故ならば、今は、戦争中であって、ウクライナとロシアだけではなく、日本も韓国も、アメリカやドイツなども、戦争の「片方」に一方的に肩入れしてる「戦争当事者」の状態なので、肩入れしてる方のプロパガンダというか一方的な主張やデマ・フェイクニュースを、あたかも間違えようのない「真実」であるかのようにしてばらまくのが当然であるからなのです。

https://www.nhk.or.jp/bunken/research/title/year/2004/pdf/002.pdf

 その危険さ・ヤバさを踏まえた上で、色々と、それこそ「敵」とみなしてる側の主張やプロパガンダ・フェイクニュースと、こちら側のそれらを同じ目線で・物凄い冷めてる上から目線で見回した上で慎重に考えないと本来はいけないのですが、そのやり方や方向性が違うと、単なる水掛け論・レスバにしかならず、話が全然進まなくなるからなんです。
 私も、ネット歴がもう、35年近くなるので、そういういやーな抗争は散々経験してますしね(´・ω・`)

こんな事を書くと、加藤くんにせよその他の同意されてる「左派」の人達にせよ、怒り心頭になるのは承知の上で、敢えて厳しく書かせていただきます。

第一章での、「誤ったアジェンダ設定」。

 第一章『「ウクライナ戦争」とはどのような出来事か』では、最初に大日本帝国が中国に侵略(もしくは「進出」)した事に対する中国の抵抗運動やレジスタンス活動から入って、それと、ウクライナの人々の「侵略に抗う抵抗活動」を結びつけて語ってるわけです。

 中国の抵抗運動やレジスタンスに関する記述は、さすが加藤くん。とは思いました。が、それが、ウクライナ・ロシア戦争とそれを結びつける「2 歴史を補助線に本筋を見い出す」あたりから、どんどんと雲行きがおかしくなってくる。

過度の引用は何かとややこしい法的な話になるので抑えますが、本筋として加藤くんは

私が考える本筋は3つある。
1つ目は、これがロシアとウクライナという2つの国の間の戦争であるということ。
2つ目は、これが大国による小国への侵略であるということ。
3つ目は、これがかつての支配ー従属関係を回復しようとする侵略であるということ。

「ウクライナ侵略を考える」 加藤直樹,、あけび書房、2024 29ページより

と設定してるのです。

さて、この前提自体が、私には大間違いであるように見えてならない。

「3つの前提」に関して、「教養の薄さ」が見え隠れしてる。

1つ目について。

 これは、表面上は2国間戦争ですが、実際の所、どちらの国にも外国との背後関係や利害的な結びつきがそれなりにあって戦争に突入してるんですよね。

 ウクライナ側については、2014年のマイダンクーデター(マイダン革命)以降、ウクライナの右派セクターの活動家たちを、CIAなどが設置した軍事訓練キャンプで教育し・武器や資金を与えてウクライナ国内に戻して、それこそ新選組のような感じで街中暴れまわったりドンバス地方やオデッサなどで民族浄化をやったりしてたという経緯がありますし、
 戦争開始するや否や、アメリカとイギリスが主導して、多くの国々に圧力すら掛けて、ロシア排除やゼレンスキーばんざい!的な世論づくりや政治の動きを作らせ、挙句にはSWIFT排除のように、ドルが世界の基軸通貨であったことの信頼性を自分たちから棄て去りかねないような真似までしてロシアを締め上げたり・ウクライナに武器を渡したり、果ては非公式に軍事顧問団を送ったりしてる。

 ロシア側も、別に一国で戦っているのでもなく、表面上はどっちつかずに見せてる中国に限らず・上海協力機構各国に根回しをした上で、中国からの技術支援やイランとの兵器生産契約、果ては、サウジアラビアなどの中東の産油国の「西側離れ」を開戦直後に一気に進めてたりするんですよね。勿論、ベラルーシは兵隊を出してないだけで最初から色々支援してるし、シリアなどの友好国から兵隊を出してもらったりしてる。

 そういう、「アメリカ一極支配がオワコンになって、多極化がもはや当たり前になり始めてる世界の中での、一極支配にこだわる陣営と多極化を加速させたい陣営との間の、代表者としての」ウクライナとロシアが2国間戦争に表向き見えるような戦争をやってる。

 というのが、実際のところだと思うんです。

ソ連崩壊以降、90年代まではほぼ同じ道をたどってたロシアとウクライナがその後明暗を分けた理由。

 そして、2つ目について言うなら、ロシアもウクライナも大国かと言えば大国とはいい難いし、小国かと言えば、それも違う。マフィアの経済的な存在感が異常に強い上に政治的に安定してないウクライナよりも、政治が先に安定して「二度と米英のかいらいにならないように国を建て直す」とやったロシアのほうが、軍事的にも産業的にも、2022年の頭時点で先んじていた。というだけの話だと思ってます。

 3つ目ですが、これは、もう、前提自体が全然、ダメ。1つ目の事について書いた時に触れましたが、もっと大きな枠組みでの争いの中の1エピソードなんです。これは、多極化する世界の側に立っているロシアが、多極化を拒んで滅びつつあるアメリカやイギリスと手を組んでるウクライナと長年小競り合いを繰り返した末に起きた話で、ロシアからしたら、ドンバス地方の安全やクリミア地方の軍事的権益が達成され・あわよくばオデッサなども手に入れてウクライナを封じ込めるような、ある種の懲罰戦争であって、侵略戦争とは一寸違う

 そもそもロシアは、今のキエフのゼレンスキー政権や後見人的な西側のネオコンを「折れさせる」のが最大の目標であって、政権やウクライナ全土を占領する気が見えないんですよ。

 この辺りは、古い本になるのですが、(今は右翼堕ちしてしまって目も当てられなくなってる)北野幸伯氏が2007年に草思社から出した「中国・ロシア同盟がアメリカを滅ぼす日 一極主義vs多極主義」と言う本で、詳しく・なおかつわかりやすい文体で書かれてたりしますし、彼が長年運営している「RPE ロシア経済政治ジャーナル」というメールマガジンの、大体2012年辺りまでの「マトモだった頃の」記事にもたくさんあります。

 後、何かと陰謀論者と中傷されがちな田中宇氏が自分のWENBサイトに出している多くの調査報道記事でも、詳しく書かれています(ソースへのリンク付きで!!)

 その後、早期停戦や日本が協力しないでロシアとウクライナの間に入って戦争を止める役割を担うように呼びかけた、和田春樹先生達のことをけちょんけちょんに書いてるんですけど、それ自体がすごい、なんていうか…なのです。

戦争に正義を見出していいのだろうか?人が無駄に死ぬというのを忘れてないのか?

 戦争に、正義を見出してるという感じなんですよね。

※訂正(5/15 02:08 JST):一寸考えるところがあって、今週末(5/18の土曜日頃)迄、全文無料期間を延期します。

※5/19 02:06 JST: ここから先は、ご購入の上でお読みくださいませ m(_ _)m
ご購入や「サポート」でのご支援、どうかよろしくお願い申し上げます。
次回は:

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