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批評・演劇・『桜姫東文章』・木ノ下歌舞伎

基本情報

・形態:演劇
・場所:あうるすぽっと
・年:2023

概要

江戸時代後期の歌舞伎の作者・鶴屋南北による戯曲『桜姫東文章』を現代翻案したもの。
ストーリーは下記を参照。https://rohmtheatrekyoto.jp/archives/report_sakurahime2021talk_01/ 
木ノ下歌舞伎は歌舞伎の作品を現代翻案して上演する劇団。
本作品の脚本・演出は、劇作家・演出家の岡田利規氏。
基本は原作に沿って進行し、俳優たちも舞台上で劇の進行を見ているメタ演劇の構造である。
また俳優たちの発声や動きは、これまでの岡田氏の他の作品と同様、ゆっくり・はっきりとしていたり、常時動いていたりする。
音楽は舞台上でアーティストの荒木優光氏がレゲエなどのものを流している。
その他、歌舞伎のパロディーの要素として、舞台上で劇の進行を見ている俳優から「ダルメシアン」や「ポメラニアン」といった屋号を要所で叫んだり、最初と最後の拍子木がエラーのように速く連打されるといったものもある。
衣装は東京の古着屋で入手できそうなものを使用している。

既存の批評

「揺れる身体から間欠的に発せられる言葉には意外な効果がある。女性や下層階級への差別にあらがうように『出た、またモノあつかいです』などと南北の言葉に杭(くい)を打つ。濡(ぬ)れ場は女性主導で、言葉も決然と。」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO68360020Q3A210C2BE0P00/

目的

戯曲における女性の存在を強調する。
それはひいては、現代の歌舞伎や伝統芸能におけるジェンダーバランスへの批評ともなりうる。

方法

戯曲における桜姫のあり方を、そのまま描く。
最後の場面で、演出として、一人の女性が背景で動き続け、桜姫が自らの家族を殺した夫とその間に生まれた子を殺し、家宝を再度持った瞬間に「ハレルヤ」と叫ぶ。

目的の新規性:普通程度に感じられた。

これまでも同戯曲について、近年ではフェミニズムの観点からの解釈がされるようになってきた。https://rohmtheatrekyoto.jp/archives/report_sakurahime2021talk_02/
https://www.elle.com/jp/culture/music-art-book/a37288907/feminism-inside-kabuki-risa-furutachi-210820/

本演出はその延長上にあると考えられることから、新規性は普通程度に思われた。

方法の新規性:やや高く感じられた。

最後の場面において、背景で何も言わずにうろうろしている女性は、これまで本戯曲の上演において見過ごされてきた女性の存在を表しているように思えた。そのような存在は、これまでの演劇でも見たことがなく、新規性があるように感じられた。
一方で上記のような女性の存在は、岡田氏著の『未練の幽霊と怪物』における戯曲「都庁前」において、「フェミニズムの幽霊」というかたちで既に現れていた。

目的-方法の合致性:高く感じられた。

社会的インパクト:高く感じられた。

目的・方法の新規性やそれらの合致性、本劇が全国ツアーを行うことからも、社会的インパクトは高いように思われた。

参考

トップ画像引用源:https://twitter.com/stage_natalie/status/1621421551336968193/photo/2

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