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48arts|JAPAN ART BRIDGE(マーチエキュート万世橋)

旧万世橋駅の高架橋を利用した商業施設「マーチエキュート万世橋」に行ってきました!
飲食店や雑貨店などが集まり、走行する電車を眺めながら食事ができるカフェがあるとは聞いていましたが、なんと細長い空間を生かしたギャラリーでアート体験もできるんです。


JAPAN ART BRIDGEとは

JAPAN ART BRIDGEは、JR 東日本各社、アートを用いたエデュケーション事業等を展開する株式会社 INERTIA、株式会社ルミネアソシエーツ(JR東日本グループの一員でルミネグループの中核企業)が手を組み、日常の暮らしの中での“アート体験”を媒介として、社会を繋ぐプロジェクトで、2023年の夏から本格的に始動しました。
つまり、アートを介して交流を促したり社会への理解を深めてもらおうということです。

具体的には、マーチエキュート神田万世橋をリアル拠点として展示やグッズ販売、イベント、JR東日本の通販サイト「JRE MALL」内のオンラインショップで作品を販売しています。

公式ウェブサイトより

マーチエキュート神田万世橋は、建物の中心をギャラリー空間が貫き、飲食店や雑貨店などは屋外から出入りする造りになっています。

「Pierre Jeanneret × 叢 – Qusamura × アート」 展

とりあえず橋側の端から入ると、ちょっと無骨な木製の家具がありました。建築家ル・コルビュジエのいとこで家具デザイナーのピエール・ジャンヌレの作品です。

三角形の足には、既視感が。2022年の展覧会「ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで」(東京都現代美術館)で紹介されていた家具に似ていますね。
プルーヴェは同じ現代芸術家連盟の創立メンバーであるジャンヌレやル・コルビュジエ、シャルロット・ぺリアンとともに共同作業で家具や建築を手掛けていました。
ズブズブの仲良し。

解説には、ル・コルビュジエによるチャンディーガル都市計画(インド)のためにデザインされ、自分たちの手で、現地で入手可能な素材でつくれる家具は、インド発展に大きく貢献したとありました。
確かに、それほど高度な加工技術がなくても制作可能がデザインは、修復も難しくなさそうなので、気兼ねなく使うことができそうです。

ところどころに置いてあるサボテンは、「叢 – Qusamura 小田康平 × 陶芸家」展の関連イベント「接ぎ木ワークショップ」でつくられた作品。
素材の風合いを活かしながらも個性を放つ家具と、砂漠に生育するサボテンは、しっくり馴染みます。

渡辺育「Photographic Meditation」展

これは都市の中での瞑想をテーマに、渡辺育が設計した茶室〈浮浪庵〉と、築山礁太の写真作品〈End Evening Nautical Twilight〉を組み合わせたインスタレーション作品。
※インスタレーションとは、物を置いたり音を流したりして展示空間全体を作品とみなす作品ジャンルのこと

鉄パイプやブルーシートでつくられた茶室は、どこでも組み立てられる即興性があり、キャスターで移動することもできます。周囲に置かれたキューブは、置き方によってローテーブルにも踏み台にもなります。

杉本博司や吉岡徳仁をはじめ、多くの美術家が茶室を設えていますが、みなさんどのくらい茶室のルールに準拠しているのでしょうか。どのように侘び寂びを出そうと考えているのでしょうか。個人的に気になりました。
(それほど侘び寂びしなくていい流派や形式もあるかもしれませんが)

そんな杉本博司やオノ・ヨーコの作品(写真と地球儀)も展示

脇田玲「PROPOSAL(JR VERSION)」展

AIが描く「150年後の移動環境の姿(仮)」、AIが考える未来の乗り物に安心・納得して乗れるかを鑑賞者に問う参加型インスタレーション。AIが生成した画像が流れるモニターを見て、YESかNOで投票します。

「痴漢を派生を抑制する」などのプロンプト(画像を生成させるための指示)はあったのですが、どういった発想なのか説明がなく(AIは説明してくれない)、なかなか判断は難しいものです。
人間はルールを掻い潜ったり無視したり、想定外のことをしますし、当初の設計では使い勝手が悪くて改変されたりもするので、どうなのでしょうね。

HUMAN AWESOME ERROR 展「Super Cell – n/f Pink Noise」

テクノロジーやシステムのエラーを世界を再認識するために作品化するHUMAN AWESOME ERRORの展示では、乳がんに直面したメンバーの福原志保さんが、がん細胞を細胞のエラーと捉えて考えたこと、患者として感じたことが映像とインスタレーションで表現されていました。

フラスコや試験管がチューブでつながり、なかには血液のような赤い液体が入っています。おそらく細胞を模した白い風船がたくさん浮かび、展示室内はゴムの匂いで充満していました。匂いにやられて長居できず。
がんは深刻な病気ではありますが、生物の進化は遺伝子の突然変異(エラー)がきっかけになることもあります。がん=細胞のエラーと捉えると医療とは別の視点からも考えられそうな気もしました。

献血した後に展示をみたので、生々しかったですね。

実はギャラリーのことを知らずに訪れたのですが、社会との関わり方や人間について問いかけ、考えさせる作品が並び、その質の高い展示には驚きです。
けれど、展示の間隔が十分に取られているのと、煉瓦造りで落ち着いた空間、川沿いという立地もあって、ゆったりとした気持ちでいられました。

*ここからはおまけ*

ショップで書籍を購入したのですが、レジのお兄さんがとてもにこやかに対応してくださったので、私も「うへへへ」とニヤけながら代金を支払いをしました。
ウェルカムな気持ちの伝わる接客は、お客さんの体温を上げるものなんですね。

白身魚のグリーンカレーソース

展示の後は階段で2階に上がり、展望カフェ・レストラン「プラチナフィッシュ」でのランチがおすすめです。
屋内の席は電車好きの親子で満席だったため、テラスに案内してもらいました。

ガラス壁に囲まれたテラスの両脇が中央線の上下線、奥の緑の鉄橋が総武線、程よい頻度で電車が走り抜けます。
電車に夢中なキッズはご飯もそっちのけで大喜びの様子でした。

キッズが「あずさだー!!」と言っていたので「あずさなの?!」と撮った一枚。
時刻表を調べれば、お目当ての特急に会えるかもしれませんね。

道路の向かい側には、万世橋がその名の由来となった「肉の万世」もあります。
私は田舎の万世しか知らなかったので、「万世橋に万世がある!」とちょっと感動しました。高円寺に高円寺がある、みたいな。


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