アルスシムラ講師ブログ「日日」にちにち

京都嵯峨にある芸術学校アルスシムラの講師ブログです。アルスシムラは染織家 志村ふくみ・志村洋子が創造した染織の世界を芸術体験を通して学ぶ場です。「私が染めて、私が織って、私が着る」ー染めと織りの日々をお伝えしていきます。https://arsshimura.jp/

アルスシムラ講師ブログ「日日」にちにち

京都嵯峨にある芸術学校アルスシムラの講師ブログです。アルスシムラは染織家 志村ふくみ・志村洋子が創造した染織の世界を芸術体験を通して学ぶ場です。「私が染めて、私が織って、私が着る」ー染めと織りの日々をお伝えしていきます。https://arsshimura.jp/

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    ブログ移転のごあいさつ

    2022年4月、アルスシムラは開校から10年目を迎えました。 これまでアルスシムラにお集まりくださった方々とのたくさんの出会いとご縁に深く感謝しております。 10年という節目に、「note」へブログを移転することにいたしました。 二度とない「日」と「日」がつづく毎日を、また、アルスシムラに集う方々がつむぎだす色や音が、ここちよく響いている秘密を、少しずつお伝えしていきます。 改めまして、どうぞよろしくお願いいたします。 アルスシムラ 講師一同

      • 2022年度アルスシムラ卒業制作展を開催しました。

        2023年3月10日から12日まで、京都府京都文化博物館にて、2022年度アルスシムラ卒業制作展を開催しました。 1年間、もしくは半年の集大成としての作品が科を越えて一堂に並び、「今のアルスシムラ」を体感できる空間になりました。 また、アルスシムラ卒業生も数多く訪れ、在校生と卒業生との貴重な交流の場のひとつとなりました。 晴天と、春を思わせる暖かさに恵まれ、最終的には3日間に650名を超えるお客様にご来場いただくことができました。 ご来場くださった皆様、開催にあたり支え

        • 卒業制作展に向けて

          馬酔木(あせび)の花が咲き、寒さのなかにも春が訪れています。 アルスシムラでは、3月11日から始まる卒業制作展に向けて、織り上げた着物を仮仕立てする追い込みの日が続いています。 洋服が主の現代、和裁に親しむ機会が減りつつあります。 それでも、生徒さんたちは自分で一針一針縫うことで、着物になっていく行程を体験していきます。 互いに縫いながら、着物は着ていても、細部まで意識せず着ていたことや、本仕立てを縫う職人さんの技に改めて感心する話になります。 日本の染織文化を体験していく

          • 立春

            嵯峨は冷え込みの厳しい、最も寒い時期を迎えています。 いっぽうで、雪が降るたび、厳しい寒さを感じるほどに、やがて来る春を思うようにもなります。 本科の校舎では、日々機音が響き、着物が続々と織りあげられています。 着物を織り終え、伸子をはり、裁ち合わせ、仮仕立てを終えたら、ひとつの区切りを迎えます。 一方で、つぼみのついた梅を染めたり、ミモザの枝を染めてみたり。 はたまた、次の制作を考えて、準備を始めてみたり。 染めと織りが積み重なり、繰り返し、終わりなく続いていきます。

            裂を裁つ

            大寒を過ぎたころ、強い寒気の影響で各地で大雪となり、アルスシムラ嵯峨校にも今までにないくらいの雪が積もりました。 日ごろ見られない嵯峨野の白銀の景色に包まれ、生徒さんたちは卒業制作展に向けて織る日々です。 着物を織り終え、機からおろし、伸子張りをして裂地を整えると、裁ち合わせをします。織りあげた長い反物に、着物の部位ごとにはさみを入れていく作業を裁ち合わせと言います。 この裁ち合わせで仕上がりの印象が大きく変わります。誤ってはさみを入れると、着物のデザインに大きく影響する

            新年会

            久しぶりの雨模様。小倉山には朝靄がかかり、この時期にしては暖かな日が続いています。 新たな年が始まり、本科・特別コースの生徒と講師一同で、岡崎の細見美術館に集いました。着物姿の方も多く晴れやかな表情でさざめきながら、「細見コレクション 江戸時代の絵画」の鑑賞をして、東山が一望できる三階のお茶室『古香庵』へ。 新年らしい福鈴や仏手柑などの床飾りも美しく、福々しい花びら餅を頂き、一服のお茶を共にしました。 ご自身が織ったり、ご家族や大事な方から譲り受けたお着物や帯、お気に入

            「ワクワク」~心情のいろ~

            冬の柔らかな日差しが射し込む予科の学び舎。 それぞれの機には、桜で淡く染めたピンクやグレーの縞の経糸や白糸がかかり、緯糸も皆で染めた季節の色が手元に揃いました。 自分にとって大切なことを言葉にすると、仲間にも情景や時間、気持ちが伝わります。でも、機の上で色として広がった時、言葉よりも豊かに織り手の感性を分かち合うことができます。心にぴたりとくる色を追いかけて織るうちに、織り手自身がハッとすることも、心が軽くなることも、深みにはまることも、誰かと繋がることも、思いがけない心の

            飛び立つ時に向かって

            12月に入り、嵯峨の山並みは、 紅葉の彩りから冬のたたずまいに変わってきています。 本科の生徒さんは、修了制作の『着物』制作が本格化し、 作業に打ち込んでいます。 着物を着慣れた方も、普段ほとんど着ない方も、 自ら制作するのは初めて。 まずは、 「どんなものを作りたいか?」 イメージを持つところから始めて、 図面に起こし、実際に糸を染めて、準備を進めてきました。 機に糸をかけて織り始めたら、今度は、 「どんな色の緯糸を織り入れようか?」 試行錯誤の連続です。 着物制作の

            藍をはぐくむ

            この秋は、色とりどりに紅葉した山々が美しく、日ごろ静かな嵯峨野も人の訪れでにぎわっているようです。 今年度二回目の藍建てをしてから、2か月が過ぎました。 老齢に当たる月日が経っているものの、藍染めも、黄色に染め重ねて緑を得るための緑染めも、まだ底力を感じる色に見えます。 藍甕に糸を浸けて染める人の手は、生徒さんたちの手。 この二か月、何人の手が藍に染まって来たのでしょう。 爪も、手の甲もしっかり染まり、藍の一部になったようで、ものづくりに関わる喜びでもあります。 青く染まっ

            どんぐり染め

            今週末の予科はどんぐりの染めでした。 京都、大阪、長野、大分から通われる生徒さん達がそれぞれの場所で拾い集めてくれました。最後は、授業日の朝に学校近くの嵯峨釈迦堂(清涼寺)に落ちているどんぐりをみんなで拾い納めです。 きりをつけなければ、毎年いつまでも拾ってしまいます。 卒業生からも秋のお便りとともにどんぐりが届き、みんなで嬉々として染めさせてもらいました。 どんぐりを炊き出すと、その香りに秋の実りを全身で感じ、縄文人の作るどんぐりクッキーってどんなだろうなど古に想いを馳

            創作の秋

            朝晩涼しくなり、嵯峨野は金木犀の香りがただよっています。 秋といえば、さまざまな活動に適した季節。 アルス本科の生徒さんも、徐々に制作のペースをつかみ、次々と新たなことに挑戦し始める時期です。 1年生は帯の織りを進めながら、次の着物の制作に向けて、準備を進めています。 イメージをふくらませてデザインをする。 イメージに合うような色を求めて、染料を染めてみる。 色やデザインが決まったら、経糸の計算。 計算が終わったら、実際の糸の準備。 同時進行で、少しずつ「次」の準備

            予科のバトンタッチ

            秋は予科の前期コースが終わり、後期コースが始まる時期です。 春スタートの半年間と秋スタートの半年間、それぞれの生徒さんが機に向かい、それぞれの想いを織りに込めます。 先日、前期コース最終日の合評会を行いました。 ご自身の作品に言葉をのせて発表することで、新しい気づきがありそれぞれの裂作品にいろんな一面を見る1日でした。 そして後期コースのはじまり。秋の染料でみんなで糸染めを行いました。 通年コースに通われている生徒さんたちは、春のクラスメイトとお別れをし、秋のクラスメイトと

            裂から着物へ

            秋風が心地よく感じる季節になりました。 嵯峨校のまわりの植物は、季節の花が咲き、秋の深まりを知らせてくれます。 昨年に設置した特別コースでは、前期の生徒さんが、春から夏にかけて着物を織り上げ、色糸を入れて織る楽しさを予科で経験し、特別コースでは着物という型に、どのように自分が表現したいことを落とし込んでいくのか、デザインが決まるまで、手を動かしながら試行錯誤します。学校は、本科コースの生徒さんたちと、それぞれの作業工程を見せあい、お互いに質問し合っう場でもあります。 1日

            経糸を整える~予科

            心地よい風が吹きわたり、嵯峨野の田舎道を歩くと稲穂が揺れています。 予科では、整経体験の授業を行いました。 クラスの仲間と一本の千切りを仕上げることを目指して、機にかけるまでの経糸を作る作業を行います。 作業がしやすいように、綛の糸から木枠にあげ、そして大管へと巻きなおしていきます。1040本の糸を引きそろえ、織りたい幅に整えて千切りに巻きあげていく作業工程は大変ですが、どの瞬間にも絹糸の美しさを感じます。 「1040本」というちょっと遠く感じる本数も、自分の手を1本1

            本科授業再開

            嵯峨野の朝は風に涼しさを感じ、夕方は虫の声が響くようになりました。 続く暑さの中にも、季節の移ろいが現れています。 約1カ月の夏休みを終えて、本科の授業が再開しました。 ある人は、帯の経糸準備。 またある人は、経絣の準備。 夏の時期ならでは、葛の染め。 休み前の作業を思い出しながら、 それぞれのペースで作業を進めています。 アルスシムラでは、2023年度の生徒を募集しています。 締め切りは9月30日です。 詳細はアルスシムラサイトをご覧ください。 https://

            ひぐらし

            嵯峨嵐山は、夕日がなだらかな山あいに沈む頃、山の稜線は濃紺色へと移り変わり、美しい色彩を生み出しています。 本科生は夏休みに入りました。5月から怒涛のように過ぎた生活も、少しの間お休みです。 1年生のこの3カ月間は、10色以上の色をみんなで染めて白い経糸に織り込み、経と緯が交わってうまれる多様な彩りに歓喜し、また、あらゆる道具に初めて触れて手こずる日々でもありました。それでも毎日続けていくことで、夏休み前には、2つ目の課題の帯にとりかかるようになりました。 帯の制作はま