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ゲームのように仕事する(仕事の説明書)

こちらは、友人との読書会で読んだ名著や流行書を人に勧める形で紹介してみる記事です。

今回ご紹介する本

田宮直人、西山悠太朗『仕事の説明書〜あなたは今どんなゲームをしているのか〜』です。今年2019年の7月に出版されたかなり新しい書籍のようです。

読書会メンバーの1人が「本屋でよく見かけて気になっていた」「『仕事×ゲーム』ってありそうでなかったよね」と言って推薦してきた本です。私は新宿の紀伊国屋本店によく出没しているつもりですが、正直初めて見ました。

実は私たちにとって、「仕事のゲーム化」はとても馴染みやすいテーマでした。具体的な内容は次節から紹介します。

余談にはなりますが、3人の読書会メンバーはみんな同い年の大学生と社会人です。ポケモンの世代で言うと、ルビー・サファイアくらいでしょうか。そんな私たちは幼少期にゲームで育てられたと言っても過言ではなく、いまでもその片鱗が会話の中に垣間見えることがあるくらいです。

一言でいうと何?

本書『仕事の説明書』は、ビジネス名著(フレームワーク)を編纂して1冊にまとめた書籍になります。

ここで言うビジネス名著とは、フィリップ・コトラー『マーケティングマネジメント』やマイケル・ポーター『競争戦略論』などのアカデミックな経営学から、安宅和人『イシューから始めよ』などの比較的最近のビジネス書まで含みます。

全容はどんなもの?

『仕事の説明書』のタイトルの意味は、コントロールできなさそうな「仕事」をコントロールできる「ゲーム」のように捉えてみようとする、いわば「仕事の攻略法」という意味と読み取れました。

次に、より具体的な内容を見ていきましょう。(以下は本書の目次)

はじめに
1.仕事の説明書を作成する
2.仕事の目的は問題解決
3.ビジネスというゲームを紐解く
4.数値化・言語化によりビジネスの解像度を上げる
5.データからアクションを導出する
6.競合や顧客を意識して戦略を立てる
7.仕事を前に進める
8.仕事を楽しみながら、キャリアアップする

全体の流れとして、

・「ゲーム(遊び)」は楽しいが、「仕事」が楽しくないのなぜだろう
・「仕事」を「ゲーム化」するには可視化・単純化・取捨選択が必要である
・有名な戦略フレームワークは「ゲーム化」において非常に活躍する
・戦略フレームワークを叩き込んだ後で、あなたはどのように「仕事」と向き合うべきか

というようにまとめられそうです。

P&G→USJマーケティングの森岡毅氏も「ビジネスは数値化させて解け」とよく言っているように、ビジネスを数字で見ることで目的や変数が明確化され、制御のしやすさが大きく改善されますよね。

これはゲームのように、「モンスターを倒す」←「レベル上げる」←「強くなる」←「魔王を倒す」のような逆順による目標の細分化と明確化にかなり似ています。本書の著者はそのようなストーリーを通して仕事への向き合い方を読者に届けたかったのだと思います。

他の本と何が違う?

「ビジネスのゲーム化」の先についても言及している点です。

皆さんご存知の通り、3C分析、STP、4P、SWOT、5F、PPM、7Sなど、ビジネスにおける戦略フレームワークは星の数ほどあり、枚挙にいとまがありません。

これらのフレームワークはすべて、ビジネスの単純化や見るべきポイントとその対処法をまとめたものだと思っています。すなわち本書でいう「ビジネスのゲーム化」の目的とぴったり重なります。

今まで多くのビジネス書で有名戦略フレームワークが取り上げられ、解説されてきました。しかし、それらを何に対してどのような姿勢で取り組むべきかはあまり言及されてこなかったように感じます。

本書では、読者が何に心を動かされ、仲間を巻き込み、どのようにゲーム化された目標を達成するのかまでの一連の流れが述べられていました。このようなすべて詰まっている書籍というのは、かなり珍しいように思えました。

キモは何?

ゲームをビジネス(仕事)だけでなく、人生にも置き換えることができる点です。

本書は、小難しい諸問題を一部の人には親しみやすいゲームとして置き換えることで、「ほら、こういう風に考えてみたら単純でしょ?」と噛み砕くような内容です。

仕事の「ゲーム化」については「仕事」と「遊び」、さらに「遊び化した仕事」について序盤に説明されていたので、ここでピックアップしたいと思います。(一部編集)

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このように表にするとどうして「仕事」が嫌なもので「遊び」が楽しいのかわかる気がしますよね。生産的な遊び(=遊び化した仕事)があったら、止まらなくなってしまいそうですよね。

このように複雑で相入れないような概念でも、よく観察して定義することで、可視化・単純化させることができそうです。

高田貴久『ロジカルプレゼンテーション』でも、コンサルタントやプロフェッショナルの仕事は、フレームワークを100個覚える・使いこなすのではなく、それらを土台とした上で、状況に合わせて独自のフレームワークを作り出して行くことが最終的な目標だと述べられていました。

本書の内容は、ビジネスや仕事のみならず、もしかしたら人間関係や恋愛にさえも当てはまる「説明書」となると思います。一部の業界では恋愛工学という何やら怪しい言葉を耳にすることがありますが、それも一種のゲーム化にあたると思います。

議論:「ゲーム化」は正しいのか

本書の大きなテーマである「ゲーム化」は、「科学的に紐解くこと」だと思っています。

科学的というと、「サイエンス?理科のこと?」のような誤解を生みそうなので、もっと詳細に説明すると、合理化することであり、以下の3つの条件を満たします。(山口周『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』より)

・数値化
・言語化
・再現可能化

科学的に紐解くようになった大きな歴史として、工場の生産管理システムや取引の会計管理システムなどの登場があります。それらの登場以前までは「なんとなくで」生産や取引を行っていましたが、生産個数や取引数が大きくなるにつれて制御ができなくなり、「科学的に」紐解くことの重要性が高くなってきました。

「科学的に」解くことは、曖昧になったり、スケールが大きくなったりしたものに対して大きな力を発揮します。日本はこの「科学的に」生産・管理することを大きな強みとして、1を100にするスケーリング(大量生産)を得意としています。

さて、本書は「なんとなくで」仕事をするのではなく、「ゲーム化」つまり「科学的に」仕事と向き合おうというものでした。もちろん未だにその重要性は高く、仕事に対しても大きなパフォーマンスを発揮することもできると思います。

しかし、有名な話にはなりますが、いま私たちはVUCA(変動・不確実・複雑・曖昧)な世界に生きています。「科学的に」紐解いて合理的に仕事をしても、間もないうちに価値を失ってしまう時代です。これは誰もがインターネットで繋がり、単一化していることに起因すると言われています。

これからはただ単に「ゲーム化」して動くのではなく、意味や価値を踏まえて行動することが必要です。場合によってはあえて人と違う行動をした方が評価されるようなこともあると思います。

本書でも末尾にはこのVUCAについて触れています。個々人が「科学的に」のみならず、「情動的に」仕事に向き合える瞬間があるとなおいいと思います。

本書はこれらのような「仕事」「ビジネス」を起点として様々なことについて使えるフレームワークを網羅的に紹介している本です。内容はありきたりかもしれませんが、ここまでよくまとめられているものは見たことがありません。ぜひ書店にてお手にとって見てください。

おわりに

著者の田宮直人さんはtwitterなどで自身の写真を載せているようで、とにかく見た目がカタギではないです(笑)

やはり人は見た目によらないですね。

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