マンガで伝える(こんなに危ない!?消費増税)
こちらは、友人との読書会で読んだ名著や流行書を人に勧める形で紹介してみる記事です。
※あくまでも読書感想文であるので、消費増税の賛否ではなく図書としての質についてお話ししていきます。
今回ご紹介する本
消費増税反対botちゃん著(藤田聡解説)『マンガでわかる こんなに危ない!?消費増税』です。読書会メンバー1人が、消費増税について一旦考えてみたいといって選ばれた本がこちらでした。どうやら一時期ネットで話題になっていたそうです。
「マンガで消費税を学ぶなんて頭悪そう」と言われそうですが、まさにその通りです。身近であるはずの消費税について、恥ずかしながらこれまで考えてきたことがありませんでした。
堅苦しい内容のきっかけとしてマンガというフォーマットは向いていると考えています。読破性という点では本書も悪くないと思います。
一言でいうと何?
本書『こんなに危ない!?消費増税』は、消費増税について各界の専門家との議論を通じて理解を深めるマンガです。
各章に登場する専門家とは、教育委員会、マスコミ社長、経済学者、経団連会長、政治家、IMF理事長、国税庁次長です。(登場人物は架空であり、設定はフィクションです。)
全容はどんなもの?
各界の専門家が一人ずつ「〜〜だから、〇〇であるので、消費増税はすべきである」という主張を繰り広げます。それに対し主人公のあさみちゃんが過去・現在のデータを引用して論破するという流れになっています。
まず前提知識として抑えておきたいのは、日本の財政状況は世界的にも特異な点が多いということです。この本を読む前にも何となくそのような認識はありました。
その特殊なケースに対して、専門家たちは海外で起きた類似する事象を取り上げ、模倣していくような主張を繰り広げます。(定性的分析・主張)
一方主人公であるあさみちゃんは、理論とデータに基づき物事を解決しようという主張をします。(定量的分析・主張)
これはスタンスの違いであって、そのスタンスの特性でいえば、あさみちゃんの定量的分析・主張の方が説得力があります。
本書におけるあさみちゃん(著者)の主張の懸念点としては、2点あります。
1つ目は、定量的分析・主張に傾倒しすぎてしまうと、理論で処理できない問題が生じてしまうことです。理論はマジョリティ(大多数)の現象の下に一般化されていますから、日本のレアケースに対して100%適応できないこともあると思います。そういったときに定性的思考は求められるかと思います。
2つ目は、本書では消費増税によって解決しようとしていた諸問題に対して、代替案をあさみちゃんは一切提示しません。私は何か否定するのに必ずしも代替案が必要であるとは思いません。その代わり、次の議論のきっかけになるような切り口を共有することは求められると考えています。
他の本と何が違う?
どのような本を類似図書と考えるかによりますが、基本的にマンガ内のノリが安っぽいです。『ギャグマンガ日和』のような印象を受けました。こういった系統のマンガには向き不向きがありますので、立ち読み等で判断することを大いにお勧めします。
キモは何?
消費増税肯定派と反対派のこれまでの論理がまとめられている点です。どちらの主張にも明るくない私のような入門者にはうってつけの本です。
さて、この本の目的はなんでしょうか。
素直に読み解くのであれば、消費増税を撤廃させることです。しかし、著者のtwitterでは、以下のようにありました。
私にできることはキュレーターの役割、わかりやすく話をまとめ、マンガにし皆様に提供すること。
なるほど、(消費増税について)わかりやすく伝えることのようですね。あくまでも反対の主張を持っているので、客観性には疑問が残りますが、素晴らしい形で使命を全うされていると思います。
一つだけ心残りなのが、最後に主人公が権力に負けそうなとき、元気玉で解決します。文章中には以下のように記述されています。
私たちだけじゃ財務省の政治パワーに勝てない!!!助けてみんなああぁぁ!!!
笑...。きっと筆者は締めに相当悩んだと思います。お気持ちお察しします。
議論:データとイシュー
皆さんは、データを活用するときにどのような手順で行いますか?
データを見てからイシュー(主義主張)を唱えるか、イシューを唱えてそれに必要なデータを集めるか。
前者はデータ、つまり現象を観察して、気付いたことを元にイシューを展開します。このメリットは、イシューが必ず現象に基づいていることであり、デメリットは、ほかのデータ(現象)を提示されるとその論理が崩れる恐れがあることです。学生時代に行った実験などがこちらになりますね。
後者は、これまでの実体験や見聞に従ってイシューを立て、その後に補強されるようなデータ(根拠)を集めることになります。このメリットは、イシューを先に立てているので、客観的だけでなく主観的な思想が入り込み、共感性が高くなりやすいことです。デメリットは、イシューがある方向に偏ることです。マスコミなどはこちらに当たります。
どちらも重要であり、相互作用の末に素晴らしい発明や思想が成り立つものだと思います。
さて、本書はどうでしょう。これ以上はこの記事の主旨から外れてしまうのであえて触れないでおきます。正解はありません。
ともあれ消費税について考えるには大変良いきっかけになりました。著者は第2弾も計画しているようなので、その時は軽減税率などについても解説していただけると有難いです。
「消費増税の一体何がダメなの」「何だか良くないのはわかるけど、実際はどうなの」という方々にぜひおすすめです。書店でお手にとってみてください。
おわりに
この本、消費増税の2019年10月1日にも6刷目がかかっているので、かなり売れているようです。
ここから印税生活になって、消費税に対して著者がどう思うようになるのかは見ものですね。
消費増税ありきで食べて行くんですから。
いつもnoteを読んでくださってありがとうございます。気に入りましたらサポートよろしくお願いします!