イノベーションを起こせる「グローバルPDCA」とは
先日、「PDCAは答えが決まった領域でしか使えない。日本企業はPDCAにこだわりすぎてイノベーションを起こせない」という記事が「PDCAを狭くとらえすぎでは?」「デザイン思考に夢見すぎww」など話題になっていました。
何事もこだわりすぎは良くないと思いますが、この記事の筆者さんは「PDCAを捨ててデザイン思考をすべき」という考えにこだわりすぎているようです。
そこで、今回さくらちゃんが人間のみなさんにご紹介するのが、答えがわからない領域で答えを見つけるために使えるグローバルPDCAです。
グローバルPDCAを駆使して、イノベェエエエエエエエエションを起こしましょう。
美食ヤギの話
さて、あなたは世界一おいしいご飯を探し求める美食ヤギだと仮定してください。
まずは近くに美味しそうなご飯がないか見渡してみます。
めぼしい物があったらそこに向かって走り出しましょう。
でも、そこでまた周りを見渡すと、もっとおいしそうなご飯が見つかりました。
今度はそちらに向かってみましょう。
これを繰り返すと、「このあたりで最もおいしそうなご飯」を見つけることができます。
しかし、これは「このあたりで」最も「おいしそうな」ご飯であって、真の美食ヤギであるあなたが求めている世界で最もおいしいご飯ではありません。
まわりを見渡しておいしそうなご飯がなければ、その向こうにもっとおいしそうなご飯があったとしてもたどり着くことができません。
また、あくまでも「おいしそうだ」と感じるご飯を見つけられるだけで、実際においしいかどうかは食べてみないとわかりません。
実はこの美食ヤギの例のように何か一番良いものを探す方法として、数学的なテクニックを使った「数理計画法」という学問があります。
その学問の言葉では、このように「このあたりで」最も良いもののことを「局所最適解」(ローカルな最適解)と呼びます。
一方で世界中で最も美味しいご飯のことを「大域的最適解」(グローバルな最適解)と呼びます。
局所最適解に陥るローカルPDCA
美食ヤギの例のように「こっちに目指すものがありそうだ」という根拠のない感覚にしたがって改善した気になるタイプのPDCAをローカルPDCAと呼びます。
もちろん、この手法で得られる結果は「このあたりで最も良さそうだ」という局所最適解です。
世の中の多くのPDCAは、実際にはこのローカルPDCAになっています。
グローバルPDCAとは
グローバルPDCAとは、その名の通り大域的最適解に到達することを目的にしたPDCAの手法のことを指してここでは呼んでいます。
ローカルPDCAが局所最適解にいたる理由は「こっちに目指すものがありそうだ」という根拠のない感覚を信じてしまうのが原因です。
グローバルPDCAにおいては、「これがよさそう」だと決めつけていることがPlanではありません。
PlanはAction、Check、Doの順に逆算して決めるものです。
たとえばローカルPDCAである美食ヤギの例では
> 目に入った範囲内で一番おいしそうなものがあるところに向かう
というPlanを立てていましたが、グローバルPDCAではまず A(Action) から考えます。
Action
Actionは「改善」です。
そもそも何を改善したいのかを先に考えなくてはなりません。
組織として利益をあげることが本当の目的であるにも関わらず、何を改善したいかをちゃんと考えないと、自分の売上をあげることが目的になってしまうことがあります。
それでは、他の人の売上を1.5倍にするという選択肢や、支出を抑えるという選択肢が見えなくなって局所最適解に陥ってしまいます。
これからどんな問題を解決したいか明確でない状態で問題を解こうとするのは、暗闇で探しものをするよりも困難です。
Check
Checkは「評価」です。
何を評価するのかを先に決めなくしてPlanを立てるのは、ただの行き当りばったりです。
評価は改善のために行うことです。
そのためには、まずActionで見つけた取り組むべき問題を分割することが重要です。
17世紀に生きたデカルトでさえ、「困難は分割せよ」と言っています。
もう市場からほとんど淘汰されてしまった20世紀梨よりもさらに3世紀も前の話です。
21世紀に生きる我々がそれをできないのはなんと恥ずかしいことでしょうか。
たとえば「組織として利益をあげるにはどうしたらいいか」という問題であれば
・ 部署Aが利益をあげる
・ 部署Bが利益をあげる
のように部署ごとに分割することもできますし
・ 事業aで利益をあげる
・ 事業bで利益をあげる
というように事業内容で分割することもできます。
さらに問題は細分化することができ、たとえば事業aで利益をあげるにも
・ 事業aのXXを改善して利益をあげる
・ 事業aのYYを改善して利益をあげる
のようにわけることができます。
こうして問題をどんどん細分化し続けて、十分に手に負える大きさの問題になったところで、複数の改善施策を考えます。
「これをやればよくなるだろう」と思いつきで試すのはローカルPDCAの良くない習慣です。
ありうるあらゆる施策を挙げてみて、さらにそれぞれの施策のメリットとデメリットを事前に考察します。
その上で、どの施策が現状では一番目的にかなっているのか、あるいはどの施策とどの施策をあわせるとうまくいくのかを明らかにするのです。
Do
Doは「実行」です。
Checkで決めた評価に必要な実験を行うことです。
グローバルPDCAにおける実行とは、「一番良さそう」と思うものをやることではなく、何が一番いいかを知るためにデータを収集する行為です。
そのため、グローバルPDCAにおいては、評価のために一番効果が低そうな施策をやってみることも当然ありえます。
グローバルPDCAにおいて「失敗」はなく、Doの結果何らかのデメリットが見つかった場合、それはデータ収集として大成功なのです。
Plan
以上を踏まえた計画がPlanです。
ローカルPDCAの場合は新しい取り組みに対しては「そもそも何が正解かわからないので計画の立てようがない」という状況になることもありますが、
グローバルPDCAは上記の分析をじっくりすることがPlanなので、新しい取り組みに対しても無類の力を振るいます。
誰もやったことがない世界を切り開き、イノベーションを起こすのにこそ、グローバルPDCAは有用です。
まとめ
ローカルPDCAが局所最適解に陥ってしまうのに対し、グローバルPDCAを駆使すれば大域最適解を得ることができ、まったく未知の領域においても頼りになることを示しました。
「PDCAはイノベーションに使えない」「デザイン思考こそが最善だ」という局所最適解に陥ることなく、世界で最もおいしい美食を探しましょう!
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