小説・成熟までの呟き 41歳・1

題名:「41歳・1」
 2031年5月10日に、美穂は41歳になった。その翌月、小学5年になっていた日奈子と、小学3年になっていた健は、どちらも家で暗い表情をしていた。心配した美穂は、話をしてみることにした。「日奈子、健、どうした?」と質問すると、日奈子は「私、男に生まれたかった。」、健は「僕は女に生まれたかった。」と答えた。美穂はどうしてそのように思ったのか聞いた。日奈子は「私、よく校庭でキックベースをやるんだけど、「女のくせに」っていつも同級生の男からばかにされるの・・。私だってできるって思ってるのに。」と言った。日奈子は校庭で遊ぶことが好きで、活発に動く。いつもハーフパンツを穿いている。健は、「僕、いっつも「男のくせに何で弱っちいの」って言われる。どうしたらいいかわからない。」と言った。健は同級生よりも体が小さい。めそめそする癖がある。母親の美穂は、日奈子と健を同時に抱きしめて、どの後次のように言った。「日奈子、健、男だからとか女だからとか、性別だけでその人自体を判断するのは間違っている。あなた達は自分が思う通りに自然にいることができて当然だよ。自分がこうなりたいっていう思いを信じて突き進んでほしい。誰かのせいで自分の心に蓋をしたり、自分の行動を悪く変えちゃ駄目。もし今後も同じようなことがあったら私達に言って。2人であなた達を守るから。だから普段は堂々と胸を張っていて。「男とか女とか関係ない。私は私だもん。」って言い返してみて。」と言った。その言葉を聞いて、日奈子も健も泣いた。康太は温かく見守っていた。少しすると、日奈子は康太に「お父さん、お願いがあるの」と言った。康太は「ん、どうした?」と反応した。日奈子は「髪の毛、耳が出るまで切って!」とお願いした。日奈子は、少しでも女っぽく見られたくて髪型をポニーテールにしていた。康太は念のため確認したが、もう自分らしくいたいと言った。そして、康太は日奈子のゴムをほどいて髪を切り始めた。肩に少しかかるぐらいの長さだった髪は、耳の上あたりまでの短さになった。康太が髪を切り終えた後、日奈子はすっきりとした表情を見せた。日奈子は美穂に、「男みたいな髪になったけど、お母さんにとっては可愛くなくなった?」と質問した。「そんなことないよ。日奈子の心が笑っているほうが可愛い。」と答えた。日奈子は、一層明るい表情になった。翌日以降、日奈子は何倍も元気になった。健は足取りが軽くなり、心に余裕が持てるようになった。「男のくせに」と言われても、「これが僕だからそんなこと関係ないもん。」と言い返した。そして次第に自然な態度で行動できるようになった。日奈子や健がどのような人間に育つのかが、楽しみである。

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