小説・成熟までの呟き 29歳・1

題名:「29歳・1」
 2019年5月10日に、美穂は29歳になった。この頃、周辺では大きな出来事があった。親友である結衣が結婚したのだ。きっかけは1年前に、対岸の高梅市に行った際に洋菓子店に立ち寄り、店主が「首都圏出身」ということを店頭に記載していて会話が始まったことである。その店主は海や山といった豊かな自然に恵まれたこちらの地方で、それを活かした農産物を使ってパティシエだったその人が店を開いたという。結衣は幼い頃から洋菓子が身近な環境で育ったので、楽しかった。店主もおっとりとして割とおとなしい結衣に惹かれたのであった。そして、4月に2人は高梅市で結婚式を挙げた。しかし、5月になると驚かせる状況になった。結衣は胸まであるストレートまでの髪の長さだったのに、急に耳が隠れるぐらいのショートヘアにしたのだ。美穂は、「結衣、どうして急にそんなに髪を切ったの?」と聞いた。すると、結衣は「結婚式までは髪を伸ばしていたけど、急にバッサリ切りたくなったんだ。」と言った。その後、「でも、そんなだとだらしない男みたいに見える。前の方がスッキリして見えたのに・・。」「髪質の関係かな。でもなんで、髪に耳が隠れていると男はだらしなく見えるの?」「なんでだろう・・。未成年の頃は男子は髪が耳に出ていて女子の制服がスカートということを当然のように捉えていたな。でも、成人してから女性の服はスカートでもパンツでもどちらでもいいように捉えていたけど、考えてみれば男性の髪が耳が出るまで短いっていうのを無意識に捉えていたかもしれない。なんでだろう・・。確かに髪質の関係であまりよく見えないかもしれない。でも綺麗に髪が整っていれば、男性は髪が長くても別にいいよね・・。」「ありがとう。今、私と夫って同じぐらいの髪の長さなんだ。私はむしろそれを狙っていて・・。これからは2人で店を営むから少しでも互いに同じようになれればと思っていて・・。でも美穂が今の髪型だと似合わないって思うなら今後は考えてみるね。ありがとう。」という会話があった。結衣は、夫と店を営むために大尾島を出た。しかし、船で1時間ぐらいの距離なのでそれほど遠くはない。一方、美穂はオリーブの生産の地域をある程度身につけたこともあり、独立するための準備をしていくことになった。そのような中で、康太との交際も進んでいった。

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