小説・成熟までの呟き 33歳・2

題名:「33歳・2」
 2023年秋、美穂の息子の健は1歳になった。木の色が色づき始めた頃、康太は美穂に「美穂は何で子供を欲しいと思ったの?」という質問をしてみた。すると、美穂はやや悩んだうえで答えた。「何でだろう・・。母になりたいって強く意識したことはなかったかな。母ってとても大きな存在なのかもしれない。そんな中、康太と出会って交際を進めていくうちに「この人ならきっと、子供にとって優しさで裏切らない父になってくれるのかもしれない」って思ったんだ。康太は自分で言ってたけど、確かに見た目はそんなに格好よくないかもしれない。でも、それを覆うほどの温もりが康太にはあったから・・。だからきっとDVとは無縁のいい家庭環境ができるって思ったんだ。」美穂が、康太をそんな風に思っていたなんて知らなかった。そしてその言葉を聞いて、康太は一層、家族を大切にしなきゃいけないという気持ちが強まったのである。

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