小説・成熟までの呟き 43歳・1

題名:「43歳・1」
 2033年春、美穂の娘の日奈子は中学校に入学した。真新しいセーラー服に身を包んだ。髪型は小学生の頃とあまり変わらない、ベリーショートだった。小麦色の肌になっていた。日奈子はどのような部活動に入るか考えていた。そのような中、武道場で独特な装いで大きな声を出して動いている姿に迫力を認識した。興味を持って深く見ていくと、未知のことができて面白そうに思った。結果的に日奈子は、剣道部に入部した。入部した当初、摺り足などの基本的な動きの反復練習を何度も行った。しばらくすると防具を付けることになったが、装着すると気持ちが入れ替わった。その変化が当時の日奈子にとってはたまらなく好きになった。剣道には、面・小手・胴の3つの技があるのだが、それぞれで一本が取れるための腕磨きを進めるようになった。この剣道との出会いが、日奈子の人間としての魅力の開花に後につながることになる。尚、防具を付ける前、日奈子達は体育着で練習したが、同時入部の女子5名は大半は髪を後ろの低い位置で結んでいた。日奈子の髪は短さで目立っていたが、次第に声の大きさでも目立つようになっていった。日奈子が生まれながらに持つ、取り柄なのかもしれない。そして、5月に母親の美穂は43歳になったが、その頃は既に日奈子の剣道への思いは熱くなっていた。

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