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『テンシンシエン!』第45話

◆「パートナーノリダツ?」

思いがけずもらった内定。

本命ではないが、これで気持ちにずいぶんと余裕ができた。

とりあえず働く場所を確保した。

 さて、就職支援センターの山泉さんに連絡しないといけないのだが・・・数日前に送った一次面接合格のメールに対して、山泉さんから何のアクションも無いことが気になる・・・

忙しいのかな・・・

いや・・・山泉さんに限ってそんな対応をするはずがない

電話してみよう・・・

”トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・”
 出ないな・・・山泉さん直の携帯番号だから、つながれば確実に山泉さんと話ができるのだが・・・

”トゥルルルルル・・・トゥルルルルル・・・”

”カチャ”
 おっ、つながった!

「はい、就職支援センター山泉の電話です。」
 聞きなれない声・・・誰だ?

「えっと、わたし沢村と申しますが、カウンセラーの山泉さんは・・・」
「沢村様・・・あぁ、山泉のクライアント様ですね・・・ちょうど良かったです。本日、ご連絡差し上げようと思っていたんです。実は、山泉ですが、少し前から体調を崩しておりまして、今週からしばらくお休みをいただくことになりまして・・」
「えっ?どういうことですか?」
「ご安心ください。本日より沢村様の担当は、わたくし瀬川となり、山泉以上の・・・」
「というか、山泉さんの容態はどんな感じなんですか?担当が変わるってことは、休みが長くなるってことじゃないですか!」
「山泉の個人的な話になりますので、詳しいことをお話しすることはできません。申し訳ございません・・・」
 確かに・・・私と山泉さんは、カウンセラーとクライアントと言った関係であって、個人的にそれほど親しい訳ではない・・・が・・・ここまで来れたのは彼のサポートがあってのもので・・・彼にはずいぶんと励まされたし・・・私の中では勝手に戦友のような・・・就活パートナーのような存在になっているのだ・・・このまま担当が変わって特に問題もなくことが進むなんて、なんだか納得がいかない。

「そこをなんとかなりませんか?」
「・・・そうですね・・・山泉、山泉本人に確認をして、了承が得られましたら、お話しさせていだくというのはどうでしょうか?」
「はい・・・」
 まぁ、これが先方にとって最良の回答であろう・・・致し方無いが了承するしかない・・・
「わかりました・・・そうしてください・・・」

「では、本日よりわたくし瀬川が担当となります。次回のカウンセリングは・・・6月4日、金曜日の13時30分からですね・・・あと・・・一次面接合格おめでとうございます。えっと、すでに二社の二次面接が終了しておられますね・・・フューチャーコンサルティングさんとNEKSTさん・・・面接の手ごたえはいかがでしたか?」
「えっとですね・・・おそらくフューチャーコンサルティングはダメです。次の面接に行くための宿題のようなものが出されませんでした。えっとそれとNEKSTさんはその場で内定をいただきました。追って間に入っているエリートコネクションさんから、関連書類が届くと聞いています。」
 なんだろ・・・私の対応がとても事務的だ。山泉さんの時とは何かが違う・・・瀬川さんが決して良くない訳ではないが、それ以上に山泉さんとの相性が良いのだろうか・・・ますます山泉さんの状況を知りたくなった。

「さようですか。それはおめでとうございます!面接もまだ、一次、二次合わせて三社残っていますので、最後まで気を引き締めて頑張りましょう。」
 そうか・・・明治電工、山崎重工の一次面接をすっかり忘れていた。メーカー系の二社は来週が一次面接だった。

「ところで沢村様。すでに就職支援センターで受理した、いくつかのスカウト案件を、いずれも辞退されておりますが、なにかお気に召さない点がございましたでしょうか?いずれも現在応募されております企業様よりも、採用条件がよろしいようですが・・・」
「えっ?どういうことですか?就職支援センターで受理したスカウト案件?」
「ええ・・・いずれも好条件で、辞退されるような要素が、見当たらない案件ばかりです・・・」

どういうこと?


■第46話へつづく


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