【書評】脳が認める勉強法
著者のベネディクト・キャリー氏は、ニューヨーク・タイムズ紙でサイエンスレポーターで、25年間にわたり、科学と健康の記事を書いている。
本書は、脳科学をもとに、効率よく学べる学習法・記憶法をまとめている
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記憶を定着させる方法
記憶には「保存の力」と「検索の力」がある
保存は、学んだことを覚えている尺度。
勉強すれば着実に身につき、減ることは無い。しかし、関心がないことの99%はすぐに消えるが、電話番号や九九のように"意識的に覚えたこと”は一生記憶できる。
検索は、情報の塊を楽に思い出せるかの尺度。
学習すれば検索の力を強化できるが、怠ると弱化してしまう。いわゆる点と点を結び、線を作るような関連付ける感性を育てる必要がある。
「覚えるために忘れる理論」によると、記憶を定着させるには、筋トレと同じようにすると良い。
トレーニングをし、筋肉の組織を1度壊してから、1日休息を取る。再びトレーニングすることで、筋肉が増強し、強くなる。
学習も覚えたことを、1日休息することで忘却し、再び深い学習すると、学習も同じように増強できる。
気をつけなければいけないのが、解った気になってしまう「流暢性の幻想」というのがある。
勉強した直後に復習するのではなく、少し間を空けてから2回目の勉強するほうが学習効果が高い。そうやって脳の記憶を保存→検索で掘り起こすのが困難になるほど、記憶に定着する。
もう1つ、幻想を払いのける方法として、学んだことを自己テストあるいは自分以外の誰かに説明すること。机にむかって教科書を読むより20~30%効果的という結果がある。
音楽による効率的な学習
学生を集め、40個の短い英単語を覚える実験を行った
グループA:静寂の中で
グループB:ジャズのBGMを聴きながら
グループC:モーツァルトのBGMを聴きながら
結果、ジャズやクラシックのBGM聴きながら学習し、テスト中もそのBGMを流したほうが2倍思い出すことができた。
たしかに懐メロを聴くと、その当時の思い出が甦る。
記憶した時のBGMと一緒に保存されていて、そのBGMが流れたキッカケで記憶の復元をしているように思える。
テスト時に音楽を流すことができないため、背景情報(音楽、照明、壁の色など)として記憶することで、シーンとして記憶の保持をする。
昔の体験を思い出そうとしたとき、そういった背景情報と一緒に保存し、そこから記憶を呼び起こしている。
学習環境に変化をつける
学生を集め、40個の短い英単語を覚える実験を2度行った。
グループA:同じ内容で、同じ部屋で学習。結果、平均16個回答。
グループB:同じ内容で、1回目と違う部屋で学習。結果、平均24個回答。
場所を変えただけで40%向上した。
同じ内容を覚えるにしても、場所を変えるということは、五感、特に視覚的に入ってくる情報は明らかに違うので、頭の中で結びつく情報が変わる。
有名な小説家は、執筆環境を変えながら、作品を作ると聞くが、同じ書斎に籠もって執筆するよりは発想力が高まるのだろう。
つまり、自宅でひたすら勉強するだけでなく、たまには外出して学習場所を変えながら、受験勉強するほうが成績が上がりやすくなると言える。
ひらめきと、解決力を高める
問題解決のプロセス
第1段階:準備
アイデアを出し尽くすこと。
第2段階:孵化(インキュベーション)
行き詰まり、その問題を一旦考えるのを止めた瞬間(休息状態)
第3段階:ひらめき
脳は休息中も働いており、ふとした瞬間にひらめく(アハ体験)
第4段階:検証
そのひらめきで問題解決できるか、検証して確かめる
考え続けるのではなく、孵化段階にして一旦休息させることが大事である。
ツァイガルニク効果は、物事を突然中断しても、完了までは記憶を定着させることができるもの。
作業中に、ジャマを入れることで、脳内リストの上位に押し上げることができる。
とにかく、行き詰まったら、休憩を入れたり、一晩寝て日を変えるのが、ひらめきへの近道ということだ。
1つに集中せずランダム学習する
小学4年生24人を集め、一人ずつ図形の解き方を教えた。
辺、面、角、角度の算出する方法だ。
グループA:辺×8問 → 休憩 → 面×8問 ・・・(ブロック学習)
グループB:面、角、辺、角度、面、角、辺、角度 → 休憩 → ランダムに8問(ランダム学習)
実験は算数の図形だが、漢字や英単語の学習でも同じことが言える。
「同じ漢字や英単語をひたすら書かせる」は、一見効率の良いように思えるが、違うようだ。この反復する学習を「ブロック学習法」という。
一方で、10個の漢字や英単語を1つずつ書いていき、その後にランダムで繰り返す学習を「ランダム学習法」と言う。
個人的にも、英単語50問を一通り覚えた後、50問をランダムで出題して覚えるほうがスコアが平均20%上がった。ランダムのほうが効果を実感した。
だからといって、ブロック学習が効果がないわけではない。あくまでも効率が良いかどうかの違いだ。
この「ランダム学習法」は認知心理学では「インターリーブ」と呼ぶ。
インターリーブは、スポーツや音楽で、古くから使われている手法である。
持久力を鍛えるトレーニングと、筋肉を鍛えるトレーニングを交互に行い、筋肉に負荷と回復させる時間を与え、強化をしていく。
たしかに、持久力のランニング10分し、技術のドリブル練習5分、パス練習5分。関連した練習を短く繰り返し、最後に練習試合をする。というように次々と練習内容が変わっていく印象がある。持久力を高めたいからと言って、その日はひたすらランニングだけするということは無いだろう。
スポーツも勉強も効率よく身につけるには、1つのことに集中せずに間に挟む、すなわちランダムで学ぶことが効果的だ。
まとめると。
脳が学習しやすい環境づくりをすることが、効率的に学べる方法である。
大きなサイクル:記憶→忘却→記憶→俯瞰
小さなサイクル:1,2,3,4→<休憩/場所変え>→2,4,1,3(ランダム)→自己テスト/誰かに説明
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