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コトラーのマーケティング5.0 デジタル・テクノロジー時代の革新戦略

「コトラーのマーケティング5.0」デジタル・テクノロジー時代の革新戦略
(フィリップ・コトラー, ヘルマワン・カルタジャヤ, イワン・セティアワン 著)

はじめに

・マーケティング1.0 製品中心
・マーケティング2.0 顧客中心
・マーケティング3.0 人間中心(機能だけでなく価値観が差別化に。)
・マーケティング4.0 デジタルへの転換 (デジタル時代のオムニチャネル)
・マーケティング5.0(3.0と4.0を基にAI、言語処理、IoT、VRへの拡張)
→カスタマージャーニーのうちマシンと人間がどの工程に適しているのか

■ マーケティング5.0の5つの構成要素

1 データドリブン(データに基づいた)マーケティング
2 予測マーケティング
3 コンテクスチュアル(文脈にあった)マーケティング
4 拡張(人間の能力を拡張する)マーケティング
5 アジャイル(俊敏な)マーケティング

(規律1)データドリブンマーケティング
企業内外からビッグデータを収集分析しマーケティング決定を促進し最適化するためのデータエコシステム

(規律2)アジャイルマーケティング
部署横断型、分散型のチームにより、設計開発検証を迅速に行う。

(アプリケーション1)予測マーケティング
機械学習機能を備えた予測分析ツールの構築、マーケティング活動の結果を予測するプロセス。

(アプリケーション2)コンテクスチュアルマーケティング
顧客を識別し、センサーなどを利用し顧客にパーソナライズされたインタラクションを行う

(アプリケーション3)拡張マーケティング
チャットボットやバーチャル店員などの人間を模倣した技術を利用する

■ 世代間ギャップ

どの世代も異なる文化的環境と生活経験によって形作られている。そのため世代によって、似通った価値観、行動を備えている可能性が高い。以下の5つの世代が共に暮らしている。

・ベビーブーム世代:1946-1964年に生まれた世代。戦後の好景気。両親が共働きで自立した暮らし方。現在の企業幹部で新技術に消極的

X世代:1965-1980年に生まれた世代。強い仲間意識はフレンズやビバリーヒルズ白書などの友情を描いた。CD、DVDレンタルなど。ネットの先駆けも経験

・Y世代:1981-1996年(ミレニアル世代)。第二次ベビーブーム。ソーシャルメディアに強く関連し若い時代からネットに触れている。SNSで自己表現し周りと比較する。所有よりも体験を好む

・Z世代:1997-2009年に生まれた世代。生まれた時からのデジタルネイティブ世代。金銭的苦悩を見てきたため貯蓄の意識が高い。Y世代よりも自分らしい自己ブランディングを好む

・アルファ世代:2010-2025年(ミレニアル世代の子供)。YouTubeアカウントを持っている人もおり、スマート機器やウェアラブル端末で遊んでいる

■ 二極化する社会

・雇用の二極化:高価値、高賃金の雇用と低価値、低賃金の雇用
・思想の二極化:政治など
・ライフスタイルの二極化:消費主義とミニマリズム
・市場の二極化:安価なものと高級なものの両極

市場が二極化しているとき、ブランドや企業のポジショニングを決める方法はSDGsに沿った持続的なマーケティングがこの問題を解決する。

■ デジタル・ディバイド

デジタル化の危険性

1 自動化と雇用の喪失:AI、ロボティクスなどの自動化技術。
2 未知のものに対する信頼の問題と不安:高度なAIは人間の理解を超える。
3 プライバシーとセキュリティ:国家安全保障にも脅威をもたらす。
4 フィルターバブルとポスト真実:パーソナライズされたネットアルゴリズムは既存の考え方を強化し二極化した意見を生み出す。
5 デジタルライフスタイルと行動面の副作用:SNSやゲームの中毒性、総合的な幸福度を下げる可能性。

デジタル化の可能性

1 デジタル経済と富の創出:顧客体験だけでなくビジネスもイノベートする力がある。
2 ビッグデータと生涯学習:無限のコミュニケーションを可能にし、AIのトレーニングプランは成長を強化する
3 スマート生活と人間の拡張:IoTのようなインターフェイスは多様化し、さらには体に埋め込むこともできる
4 ウェルネスの向上と寿命の延伸:AIは医療のビッグデータを使い新薬の発見やパーソナライズされた診断と治療を可能にする。
5 サステナビリティと社会的包摂:デジタル化は環境の持続性にも重要な役割を果たす。貧困の解決にもつながる。

■ デジタル化への準備

「企業のデジタル化への準備度」×「 顧客のデジタル化への準備度」の4象限

ネクストテクノロジーの導入:自然言語処理のチャットボット、音声アシスタント、VR・AR、IoTなど。

・考える:AI(人工知能)
・コミュニケーションをとる:NLP(自然言語処理)
・感知する:センサー技術
・動く:ロボティクス
・想像する:複合現実
・つながる:IoT、ブロックチェーン

・ナレッジマネジメントの階層
A 知恵:人間の領域
B 知見:人間の領域
C 知識:マシンの領域
D 情報:マシンの領域
E データ:マシンの領域
F ノイズ:人間の領域

顧客体験は競争の激しい市場を制するのに必要な方法。認知から推奨までの全てのタッチポイントで優れたCXを生み出すためには先進技術が不可欠

■ データドリブンマーケティング

市場は常に均一ではなくどの顧客も唯一無二なため、マーケティングは常にセグメンテーションとターゲティングから始まる。

・セグメンテーションの4つの方法

1 地理的セグメント(国、地域、都市など)
2 人口統計的セグメント(年齢、性別、職業、経済層など)
3 心理的セグメント(興味関心、価値観など)
4 行動的セグメント(購買の頻度、ファンなど)

→ これらから顧客セグメントをペルソナ化する

・ステップ

1 データドリブンマーケティングの目的を決定する
2 必要なデータを特定し入手可能か確認する
3 統合データエコシステムを構築する

データソース
・ソーシャルデータ:位置情報、人口統計的プロフィール、SNS情報
・メディアデータ:TVなど従来型メディアのオーディエンス測定
・WEBトラフィックデータ:検索、WEB行動ログ
・POSデータ:店舗、金額、クレジットカード、品目などの取引
・IoTデータ:位置情報、気温、湿度、センサーなど
・エンゲージメントデータ:コールセンター、メール、チャットデータなど

■ 予測マーケティング

予測分析により誰が買う可能性が高いか、どの製品が売れるかなどの将来の結果を予測できる。

・回帰モデル
回帰モデルは独立変数と従属変数の関係を評価する。そのために十分なサンプリングを行なってデータを集める必要がある。

・協調フィルタリング
人は自分が過去に買った製品と似通った製品を好み、自分と同じ選好を持つ人々が購入した製品を好むという想定。ネットフリックスは人が視聴する映画によって選考を長期にわたって測定している。

・ニューラルネットワーク(機械学習)
ニューラルネットワークはデータを結びつけて予測モデルを導き出す。データ間のパターンや相関関係、関連性、従属性、因果関係を見つけ出す。

■ コンテクスチュアルマーケティング

状況にあった体験をIoTやAIの助けを得て提供する。

・POSでセンサー(ビーコンなど)とデバイスが接続するエコシステムを構築(天候による割引クーポンなど)
・生体認証技術によってパーソナライズされたアクションを起こす。
・スマート家電
・トリガー(IoT)と応答(AI)

■ 拡張マーケティング

テクノロジーによって強化されたヒューマンインターフェースを提供する。拡張マーケティングは現場の従業員にデジタル技術で力を与えることを目的としている。個々の顧客に合わせて自分のアプローチを調整できる。顧客と従業員の双方向のインターフェイスは摩擦の低減にもつながり最終的に顧客体験を向上させる。

■アジャイルマーケティング

製品ライフサイクルの短さがハイテク産業の特徴。どこよりも早く新技術を市場に出し時代おくれになる前に最大限の価値を掴み取ろうとする。そのため開発サイクルは短くなりアジャイルマーケティングが必要となる。

・分散型チームの設立
・サブスクリプションという新しい収益モデルによって継続的にアップグレードされる製品を提供できる
・迅速なテストや社外の知見を借りるオープンイノベーション

マーケティング5.0はデジタル時代の新しい顧客体験CXが求められている。基盤はデータドリブンであり、市場の変化にリアルタイムに対応するためアジャイルが求めらる。

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