ブランド論 無形の差別化を作る20の基本原則
「ブランド論」 無形の差別化を作る20の基本原則
(デービッド・アーカー 著)
1部 資産としてのブランド
1.1 ブランドは戦略を左右する資産である
顧客は購入を決める際にブランド要因に基づいて判断しており、ときに価格や機能的特徴を上回る。ブランド構築が広報宣伝チームに任せる戦術的取り組みから事業戦略へと再認識された。
1.2 ブランド資産には真の価値がある
組織の3つの重要な資産として「人」「情報技術」「ブランド」がある。どれもバランスシートに現れず、価値の定量化が難しいが、概念モデルによって推定する。株の利益の影響など。また、上記の知名度、連想、ロイヤルティの尺度で測定。
2部 ブランド・ビジョン
2.1 ブランドビジョンを生み出す
ブランドにこうなって欲しいと願うイメージを言葉で説明すべき。
・出発点は、顧客セグメント、競合他社、市場トレンド、また現在の強みと弱み、今後の事業戦略(投資プランなど)。
・次にブランド連想の書き出し。属性、機能的便益、ユーザーイメージ、パーソナリティなど今後の事業戦略を反映したもの。
2.2 ブランド・パーソナリティでつながる
ブランドパーソナリティとは、そのブランドから連想される人間的特徴の組み合わせ。ブランドを擬人化して人間のように扱うようになると、認識と行動に影響を受けるようになる。それが差別化となり、ロイヤルティ獲得に有利となる。
例:昔ながらの母親(いつものあなたのそばにいてくれる。腹痛薬など)
どのようなパーソナリティが役立ちそうか具体的に決める。(顧客との関係性なのか、ブランドを活性化させる役割なのか)
・ブランドパーソナリティ調査による15の特質
堅実、正直、純粋、親しみやすい、刺激的、活発、楽しい、革新的、信頼、真面目、成功している、上流階級、チャーミング、頑丈、アウトドア
2.3 組織とその目標が差別化をもたらす
革新的なサービスを売り出すと競合ブランドが現れる。競合が真似できないものは組織である。組織の原動力は価値観。何が重要なのか、何を優先するのか。
・組織の価値観
知覚品質、イノベーション、顧客への配慮、成功実績・企業規模、地元回帰、環境保護活動、社会貢献活動。
2.4 機能的便益を超えて
機能に基づく戦略には限界がある。「情緒的便益」「自己表現便益」「社会的便益」を価値提案の基盤としてみなすべき。
2.5 競合を無効化するマストハブ
差別化がマストハブ(必須条件)になること。マストハブは、新しいサブカテゴリーを形成し、競合をイ-レレバント(無関係)にできる。
マストハブの要素
・特徴
・便益
・デザイン
・システム提供
・新技術
・特定顧客向け
・安価
・顧客関係(共通の利害、組織の価値観など)
競合が存在しない市場を生み出せば(新しいカテゴリやサブカテゴリ)、巨大な見返りが得られる。
2.6 イノベーションをブランド化する
究極の差別化は、イノベーションを起こしマストハブを生み出すこと。イノベーションをブランド化すれば、差別化要素が作り出せる。
ブランドの価値
自社所有のブランドであれば、他社は真似できない。またブランドは主張内容に信頼性と正当性を加えることができる。そして顧客とのコミュニケーションをより効果的に印象的なものとする。
2.7 サブカテゴリーをフレーミングする
ブランドのポジションは、自社のブランドについての説明であり、他のブランドと何が違うのか、どこが優れているのかを表す。フレーミング(枠組み)を決めることは特定のカテゴリーについて人々の受け止め方、感じ方を変えることである。サブカテゴリーをフレーミングすることで競合を減らすことになる。
3部 ブランド優位性
3.1 ブランド構築の着想をどこから得るか
・外部のロールモデル
・顧客接点(ブランドタッチポイント)
・顧客の動機と未対応のニーズ
・好機の見極め
・既存資産の活用
・顧客のスイートスポット
3.2 顧客のスイートスポットに注目する
企業を売り込む取り組みは顧客は興味を持たない。顧客が実際に熱中している活動や関心事に焦点を当てる。顧客から共通利害を持つパートナーだとみなされるプログラムを生み出すべき。
3.3 デジタル(ブランド構築の必須ツール)
デジタルメディアは人を巻き込み、豊富なコンテンツを可能し、狙いを定め、信頼を生み出す。コンテンツを充実させ、評価を行うことが必要。
3.4 一貫性が勝利をもたらす
ブランドポジション、構築プログラムなど定着するには時間がかかる。長期間にわたるブランドプログラムは特定のポジションをブランドにもたらす。顧客は変化に対応できない。
ただ、何が何でもビジョンを変えないという頑固さとは異なる。正当ではないブランド戦略変更を防ぐ必要がある。
ブランド変更を必要とさせる要因
1 現行ブランド戦略が遂行不可能な証拠があるとき
2 市場の雑音を突き抜けるほどの戦略遂行ができていないとき
3 市場に根本的な変化が生じたとき
4 新しい顧客層など事業戦略が進化したとき
5 ブランドが陳腐で古臭いと感じる場合
3.5 社内向けブランディングがカギとなる
社内向けブランディングは、社員と事業パートナーに方向性を与える。社員に刺激を与えることで創造的なブランド構築プログラムを発見、導入できる。そして、社員はブランドについて他人に語りたいと思うようになる。
4部 ブランド レレバンス
4.1 ブランド・レレバンスを脅かす3つの要因
・ブランドが所属するサブカテゴリーが縮小、または変化している
・何らかの買わない理由が急に広がった
・ブランドの活気と存在感が失われつつある
脅威に気付くのが早ければ早いほうが良い。必要なのは、市場調査能力とデータから知見を得る力、市場の変化、新たな弱点などに気付くセンス。
4.2 ブランドに活気を与える
・新たな製品、サービスで活力を与える
・マーケティングを活性化させる
・ブランドと結び付けられる要素を見つける
5部 ブランド・ポートフォリオ
5.1 ブランドにはポートフォリオ戦略が必要
企業は複数のブランドを所有している。最大の問題は、それぞれのブランドが孤立したサイロとして管理運営している点にある。
・シナジー効果
・レレバンス
・ブランド資産の拡張
5.2 ブランド拡張の方向性を見極める
アニメ映画だったディズニーが、参加型ファミリーエンターテインメントとしてディスニーランドを開業。
良い拡張と悪い拡張となる場合がある。
5.3 垂直ブランド拡張のリスクとメリット
既存ブランドを使って、ニッチ市場に手を出すとリスクが大きい。成熟市場に直面した高級ブランドにとって、お買い得なバリュー市場への参入など。
既存ブランド価値の低下や売上の共食いなど。サブブランドを使うことで回避するなど。
5.4 ブランド構築を妨害する組織内サイロ
・社内社外ともに混乱を招く
・ブランドの成功例を社内で活かせない
・会社規模のブランド構築プログラムが実施できない
・ブランド構築の経営資源が正しく配分されない
・正しく取り扱えない
対策
・橋渡しとなる組織的なしくみを利用する
・マーケテイング計画プロセスを全社共通にする