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両利きの組織をつくる~大企業病を打破する攻めと守りの経営~


「両利きの組織をつくる」大企業病を打破する攻めと守りの経営

(加藤雅則、チャールズ・A・オライリー、ウリケ・シェーデ 著)


守る経営をしながら、攻める経営とは

両利きの経営は、既存事業を深堀りしながら、新規事業を探索する。この相反する能力を同時に追求することは対立が発生しバランスをとる難易度が高い。オライリーは両利きの経営を戦略論よりは組織進化論と捉えている。キーポイントは組織カルチャーにあり、それは社風や組織価値観のようなあいまいなものではなく、具体的な仕事のやり方や行動パターン。

組織経営論

戦略と組織を一体として考える必要がある。そして組織は、既存事業と新規事業に分ける必要がある。

両利きの経営を実現するには3つの組織能力が必要
1:既存事業を深堀りする組織能力
2:新しい事業機会を探索する組織能力
3:相矛盾する2つの組織能力を併存する組織能力

AGC(旭硝子)のケース

業績立て直しのミッション
1 どのようにポートフォリオを再構築するか
2 会社の目的はなにか
3 社員の内向きの目線を変えられるか

コストに削減に課題が向きがちであるが、素材を製造する企業から素材を開発しソリューションを提供する企業へ経営理念を変えていった。

・新規事業
モビリティ(自動運転による内装用ディスプレイなど)・ライフサイエンス(人口増加を背景にバイオテクノロジーの薬品など)・エレクトロニクス(カメラや液晶など)を将来的な成長領域としてそれぞれ独立した組織とした。新規事業は他社での経験がある中途社員で構成し、外部パートナー企業の買収や連携。迅速な判断が求められる。既存のアセットを活用する。

・既存事業
売上が横ばいのディスプレイに増収を期待せず、効率性を高めることを目指した。安定的なキャッシュフローを目的とし無理なプレッシャーを排除した。

両利きの経営とライフサイクル

企業が長期的に反映するには、商品のライフサイクルをつないでいく必要がある。同じ屋根の下で異なる成長フェーズの商品が存在する状態。成熟事業、成長事業、探索事業などが同居する状態。

精緻な管理体制で高品質な製品を作る組織能力と失敗を恐れず学習していく組織能力は大きく異なる。異なる組織能力を持った組織は互いにコンフリクトが生まれる。

・コングルエンスモデル(組織を構成する基本要素)
四要素がフィットしているとき組織は機能し成果を出すことができる
1 KSF(実行課題、鍵)
2 人材(スキル・経験)
3 組織カルチャー (仕事のやり方・行動指針)
4 公式の組織(評価・組織文化)

・組織
探索事業とコア事業は分離する必要があるが、探索事業がコア事業の資産を活用できるようにする。探索事業は経営層をレポートラインにし、評価基準もコア事業と異なる。

・既存事業と探索事業をつなぐ組織プロセス
着想(研究):知財部、パートナー企業、商品開発研究部など

育成(開発):事業開拓部、生産技術部など

量産化(事業化):探索組織から卒業し、各カンパニーへ

実際に探索事業を既存事業として受け入れるには、様々な配慮が必要。

「オライリーの両利き経営の4つの特徴」
1:組織構造が深堀りと探索を求めるユニットに分かれている
2:探索側が既存側の資産や能力を活用することができる
3:深堀りと探索をつなぐビジョンや戦略意図が存在している
4:既存側と探索側をつなぎ対立を解決するリーダーシップがある

両利きの経営をどう実現するか

鍵は組織カルチャーのマネジメント。組織開発の多くは適応課題。当事者が主体である必要がある。説得ではなく、対話による納得する方法。

・組織開発とは
組織の能力開発であり、個人の能力を目指す人材開発とは異なる。研修では組織の能力開発につながらないこともある。現場の困りごとから開始する。変わりたくても変われない事情がある。始めること、やめること、力を抜くものが必要。

組織カルチャーが競争力の源泉になり得る。(組織風土やDeNAというと、変えられないものというイメージになる)。組織カルチャーだけをいきなり変えることはできない。

・どのような企業になるべきかのビジョンや戦略
・その戦略を実行するのにどんな人材が必要なのか
・その人材をどのように評価するのか
・その人たちがどうすれば働きやすくなるのか
それらを検討した結果、組織カルチャーは変わる。トップの意思表示は重要となる。組織は進化するポテンシャルもあるが、退化する可能性もある。

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